Quantcast
Channel: ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ
Viewing all 664 articles
Browse latest View live

韓国内の映画 NAVER映画の人気順位 と 週末の興行成績 [8月26日(金)~8月28日(日)]

$
0
0
 29日夜は台風接近が報じられ、桜木町あたりでも風が強まってきて不安が増す中、ブルク13では「シン・ゴジラ」を観に来た人が約30人。いくら話題の映画だと言ってもなんでこんな時に・・・。みんな何を考えてるんだろ?・・・って何も考えてません、と私ヌルボもその1人なもんで・・・。
 これは観終わった後、ゴジラに襲われた辺りの皆さんの間ではとくに話が盛り上がるでしょう。蒲田とか、それから鎌倉とか。あ、「御成町2」という住居表示が目に入ったゾ! 鎌倉の西口の方でないの!(たらば書房さんダイジョブ?)
 まあどんなすごい怪獣でも、世界どころか日本どころか、東京も滅ぼさないのは<お約束>のようなもの? だから安心して(!)観ていられるのが逆に興奮度を損なってしまいます。その点東京大空襲とか広島・長崎の方が想像を絶するほど怖い。そういえば「ゴジラより怖いのは私たち人間ね」というセリフがあったな。もう1つそういえば「釜山行き」にも「ゾンビより人間がもっと怖い」というセリフが出てくるそうです。(なんのかんの言っても「シン・ゴジラ」はオススメなんですけどね。)

 1週間前の記事で現在韓国で上映中の「徳恵翁主」の‘歴史歪曲’について書きました。そもそもこの映画の原作は2009年韓国で刊行されて100万部を超えるベストセラーになった権丕暎(クォン・ビヨン)の小説「徳恵翁主」(日本語訳あり)で、その種本は1998年刊行の本馬 恭子「徳恵姫」(葦書房)。この本(右画像)は現在amazonで¥9,500という高値がついていますが、さいわい市立図書館にあったので借りて読んでいます。数少ない資料を精査し、たがいに矛盾する内容(とても多い)を突き合わせて史実の解明に取り組んだ先駆的な本です。(いろんな興味深い記述がありますが一切省略。) これが韓国で小説になり映画化され、という2段階を経て相当以上にフィクションが盛り込まれてしまったということのようです。しかし、よく言われる韓国の「ファンタジー史観」にも批判的な意見が出てきたのは画期的かもしれません。
     「朝鮮日報」8月26日掲載の「封切映画 ぴったり10字評」 (ハングル文も訳文も10字です。)  「ナショナル・ギャラリー 英国の至宝」
  視覚満足。3時間もOK ★★★★
 「ゴーストバスターズ」
  賢く「強い」エリンが素敵 ★★★☆
 「犯罪の女王」
  こんな力、しばしば必要 ★★★
 「最悪の1日」
  この女、よく見た顔だぞ ★★★
 「ヒッチコック/トリュフォー」
  映画通なら目がキラリ ★★★★
 「マダム・フローレンス! 夢見るふたり」
  夢見る馬鹿たちに贈る ★★★☆
 「ニュースの真相」
  特種と誤報の間の真実 ★★★
 「オルレ」
  オジン向けオジン映画 ★★☆
 「ニュースの真相」は日本ではすでに8月5日公開され現在も上映中。他の7作品はすべて下の記事中で紹介しています。
         ★★★ NAVERの人気順位(8月30日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
             ※評点の後の( )は採点者数
①(-)影たちの島(韓国)  9.50(10)
②(1) KING OF PRISM by PrettyRhythm(日本)  9.39(373)
③(-) ヒッチコック/トリュフォー  9.33(18)
④(2) 私たち(韓国)  9.24(862)
⑤(-) 河童のクゥと夏休み(日本)  9.22(2,604)
⑥(3) 一死覚悟(韓国)  9.16(238)
⑦(4) オーヴェという男  9.14(1,197)
⑧(6) 名探偵コナン 純黒の悪夢(ナイトメア)(日本)  9.05(2,539)
⑨(-) 喊山(山が泣く)  9.02(203)
⑩(-) ガールズ&パンツァー これが本当のアンツィオ戦です!(日本)  9.00(18)

 ①③⑤⑩の4作品が新登場です。
 ①「影たちの島」は、2014年の第40回ソウル独立映画祭大賞を受賞した韓国のドキュメンタリー。「影たちの島(그림자들의 섬)」というタイトルは影島(ヨンド.영도)という島の名を固有語に置き換えたものです。その影島という島は釜山港と橋で繋がるよく知られた島。そこに韓国の代表的な造船会社・韓進重工業があります。この作品は、キム・ジョングン監督が2010年から足かけ5年にわたってそこの労働者たちから話を聞き、撮影して完成した記録です。30年間働いてきた労働者の就職当初の期待や誇り、労働環境の劣悪さ、死んで行った仲間の思い出等が語られます。とくに注目すべきは「仲間が死んで行っても何も言えず、酒を飲めば世界をひっくり返すように騒いでも、翌日出勤するとおとなしい羊のようになっってしまう」という彼らが変わっていく過程をじっくり追っていること。ソウル独立映画祭でも「ふつうの労働者をどのよう変わるか(or挫折するか等)を過不足なく構成した秀作」という評価を得ています。
 ③「ヒッチコック/トリュフォー」は、映画術について語るヒッチコックの話を中心にしたドキュメンタリー。1962年、トリュフォーはヒッチコックにインタビューを熱望したことから2人の長時間のインタビューが実現しました。そして「定本 映画術 ヒッチコック/トリュフォー」(山田宏一・蓮實重彦訳)が刊行され、映画関係者はじめとして広く読み継がれています。
この作品は当時の両監督の貴重なインタビューの音声テープと、ヒッチコックを慕うマーティン・スコセッシ、黒沢清、デビッド・フィンチャー等々10人の監督たちへのインタビューで構成したドキュメンタリーで、昨2015年のカンヌ国際映画祭クラシック部門で上映され、注目されました。韓国題は「히치콕 트뤼포」。日本公開は12月10日です。
 ⑤「河童のクゥと夏休み」は、日本でも好評だったアニメ、といっても例によってヌルボは未見です。しかしこの採点者数はオドロキ。韓国題は「갓파 쿠와 여름방학을」。河童はそのまま音読です。
 ⑩「ガールズ&パンツァー これが本当のアンツィオ戦です!」も日本アニメですが、これまたヌルボに語る資格ナシ。「戦車を使った武芸“戦車道“の第63回戦車道全国高校生大会の優勝を目指す女子高生たちの活躍と奮闘」とはなんと奇抜な発想! 今度DVD借りて観てみるかな? 韓国題は「걸즈 앤 판처 이것이 진정한 안치오전입니다!」です。
 なお、⑨「喊山(山が泣く)」については、6月1日の記事(→コチラ)で紹介しました。昨年の第20回釜山国際映画祭でクロージングで上映された中国映画で英題は「Mountain Cry」です。1984年の中国の山奥の村を舞台にした「息詰まる緊張感の中に描かれる愛の物語」( ?)で、日本公開は未定と書きましたが→コチラの記事(英語)によると「2016年 第3四半期に日本で公開」とあります。が、ホント?? 他に情報はないんだけど・・・。

     【記者・評論家による順位】
             ※評点の後の( )は採点者数
①(2) アガシ(韓国)  7.68(18)
②(3) 私たち(韓国)  7.66(14)
③(-) ナショナル・ギャラリー 英国の至宝  7.50(4)
④(5) BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント  7.45(5)
⑤(6) トンネル(韓国)  7.21(14)
⑥(-) 河童のクゥと夏休み(日本)  7.17(7)
⑦(-) ヒッチコック/トリュフォー  7.17(6)
⑧(-) 影たちの島(韓国)  7.14(7)
⑨(7) ボーン・トゥ・ビー・ブルー  7.13(6)
⑩(8) 釜山行き(韓国)  7.10(17)

 新登場は③⑥⑦⑧の4作品です。
 ③「ナショナル・ギャラリー 英国の至宝」は、日本では2014年に公開されているので内容等は省略します。韓国題は「내셔널 갤러리」です。
 ⑥「河童のクゥと夏休み」、⑦「ヒッチコック/トリュフォー」、⑧「影たちの島」については上述しました。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績8月26日(金)~8月28日(日)] ★★★

         「トンネル」が3週連続トップ
【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・週末観客動員数・・・累計観客動員数・・・累積収入・・・上映館数
1(1)・・トンネル(韓国)・・・・・・・・・・・8/10・・・・・・・・・・・665,348・・・・・・・・・6,280,573 ・・・・・・・・51,033・・・・・・・・818
2(12)・・ライト/オフ・・・・・・・・・・・・8/24・・・・・・・・・・・397,458 ・・・・・・・・・・534,423・・・・・・・・・・4,361・・・・・・・・659
3(2)・・徳恵翁主(韓国)・・・・・・・・・8/03 ・・・・・・・・・・・230,525・・・・・・・・・5,306,506・・・・・・・・・42,222・・・・・・・・551
4(48)・・ゴーストバスターズ・・・・・8/25 ・・・・・・・・・・・215,511 ・・・・・・・・・・248,876・・・・・・・・・・2,052・・・・・・・・511
5(3)・・-スター・トレック BEYOND・・8/17 ・・・・・・・・・167,946・・・・・・・・・1,013,612・・・・・・・・・・9,041・・・・・・・・489
6(4)・・ペット・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8/03・・・・・・・・・・・107,949・・・・・・・・・2,437,346・・・・・・・・・18,763・・・・・・・・473
7(6)・・釜山行き(韓国) ・・・・・・・・・・7/20・・・・・・・・・・・102,903・・・・・・・・11,423,237・・・・・・・・・92,062・・・・・・・・397
8(5)・・仁川上陸作戦(韓国) ・・・・・7/27・・・・・・・・・・・・87,415 ・・・・・・・・・6,953,995・・・・・・・・・54,403・・・・・・・・396
9(142)・・マダム・フローレンス!・・8/24 ・・・・・・・・・・・54,887・・・・・・・・・・・・89,967 ・・・・・・・・・・・710・・・・・・・・378
       夢見るふたり
10(新)・・オルレ(韓国) ・・・・・・・・・・8/25・・・・・・・・・・・・35,287・・・・・・・・・・・・50,358 ・・・・・・・・・・・405・・・・・・・・337
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。
 「トンネル」が600万人を超えトップを維持。勢いは鈍ってきましたが700万人は超えそう。韓国映画の歴代12位まで来ている「釜山行き」は、これまでの10位「ブラザーフッド」(1174万人)はなんとか超えそう。その上の「王の男」(1230万人)を抜くのはむずかしいかな ?
 今回の新登場は2・4・9・10位の4作品です。
 2位「ライト/オフ」は、日本では3日遅れの8月27日にスタート。説明等は略します。原題は「Lights Out」なのに、この邦題はなんで? 韓国題は「라이트 아웃(ライトゥ・アウッ)」なんですけどね。
 4位「ゴーストバスターズ」は、日本の方がめずらしく早くて8月19日から始まっています。韓国題は「고스트버스터즈」です。
 9位「マダム・フローレンス! 夢見るふたり」は、
実在したソプラノ歌手フローレンス・フォスター・ジェンキンス(1868~1944)の物語。歌手といっても音程もリズムも合っていなくて、ウイキペディアには「歌唱能力が完全に欠落していたことで有名」とまで書かれています。しかし夫をはじめ周囲の人たちがとても善い人ばかりで「アンタは実は音痴だ!」などとは言わないので彼女は自分の音楽的才能を疑わずカーネギーホールの舞台を目指して奮闘します・・・。メリル・ストリープがフローレンスを、そしてヒュー・グラントが夫を演じています。韓国題は「플로렌스」。日本公開は12月1日。あれ、そんな先? もう予告編観ましたよ。
 10位「オルレ」は、済州島を舞台にした39歳の男性3人のコメディ。大企業の課長(?)のジュンピル(シン・ハギュン)、売れっ子弁護士(?)を夢見るスタク(パク・ヒスン)、放送局の看板アナウンサー(?)のウンドン(オ・マンソク)はそれぞれに問題を抱えていて、何もかもぶっ叩きたくなった折も折、済州島から連絡が入ります。 赤いスポーツカーに天然のアラ1皿に、そして高級ホテル、・・・ではなくてアレレのゲストハウス? しかし、ここらで仕事に健康に恋愛等、すべてに休止符が必要な39歳の3人。済州島に行って青春を取り戻すためのプロジェクトを繰り広げる、のかな? 「オルレ」というタイトルは、済州島の周遊コースのオルレと、かけ声の「オーレ」をかけているようです。原題は「올레」です。

【多様性映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(62)・・マダム・フローレンス! ・・・・・・・・8/24・・・・・・・・・・・・・・54,887 ・・・・・・・・・・・89,967・・・・・・・・・・・・・710 ・・・・・・・・378
       夢見るふたり
2(6)・・最悪の1日(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・8/25 ・・・・・・・・・・・・・・20,991 ・・・・・・・・・・・29,949・・・・・・・・・・・・・252 ・・・・・・・・198
3(62)・・犯罪の女王(韓国) ・・・・・・・・・・・・8/25 ・・・・・・・・・・・・・・20,329 ・・・・・・・・・・・28,892・・・・・・・・・・・・・233 ・・・・・・・・270
4(1)・・ソウル駅(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・・・8/17 ・・・・・・・・・・・・・・・5,591 ・・・・・・・・・・144,563・・・・・・・・・・・1,144・・・・・・・・・・72
5(15)・・愛人/ラマン ・・・・・・・・・・・1992/6/20 ・・・・・・・・・・・・・・・3,456・・・・・・・・・・・・・8,108・・・・・・・・・・・・・・63・・・・・・・・・・46

 4位以外はすべて新登場です。
 1位「マダム・フローレンス! 夢見るふたり」については上述しました。
 2位「最悪の1日」は、韓国のロマンス、かな? 夏の終わりのある日、俳優志望のウニ(ハン・イェリ)は、演技の授業を終えて外に出ると、道を探している日本人の小説家・良平(岩瀬亮)に会います。 言葉はよく通じなくてもなぜか会話が続く良平と別れた後、彼女はドラマに出演しているボーイフレンドのヒョノ(クォン・ユル)と会って撮影地の南山に向かいます。 そして同じ時間、以前ウニとちょっとつき合ったことがある男性ウンチョル(イ・ヒジュン)は、ウニが南山でアップしたツイートを見て、彼女を探して南山に来ます。今日初めて会った人、今会っている人、そして前に会った人まで、1日に3人の男に会うことになったウニ。はたしてこの1日はハッピーエンドで終わるのでしょうか? 原題は「최악의 하루」です。
 3位「犯罪の女王」は、韓国のスリラー、かな? ヤミで不法なヤミ施術をやっている美容院のアジュマ・ミギョン(パク・ジヨン)は、ソウルの考試院(受験生用の安宿)で受験生生活をしている息子のイクス(キム・デヒョン)から水道料金が120万ウォンになってるとの知らせを受け、ソウルにかけつけます。おせっかい屋の彼女は持前のずうずうしさを発揮して事実の解明に乗り出します。この考試院というのがなんとも個性的なキャラの巣窟といった所。そこの職員でB101号室居住者のゲーテ(개태)(チョ・ポンネ)は野獣のような姿で「犬(개)」のような「態(태)」だからゲーテと自称してますが、実は繊細な感受性と正義感を持った人物で、事件解決のためミギョンをアシストします。403号に居住するハジュン(ホ・チョンド)は15年間司法試験に挑戦し、その2次試験に10回も落ちている長期受験生で、十匙(シプシ)と呼ばれるキャラクター。301号に居住するオタク受験生トック(ペク・スジャン)は1日中考試院の建物の前に座って、人々を観察する通称「人間ビンゴ」。考試について知らないことない専門家です。イクスの部屋の隣室402号に居住するジンスクは24時間部屋の中でゲームに没頭している人物。閉鎖的な性格で、いつも服で顔を隠しています。404号の住人がミギョンの息子イクスは、なぜかミギョンに対してだけは冷たくふるまう受験生。ミギョンに助けを求めたものの、あちこち引っ掻き回して他人に口出しするママのおせっかいにストレスを受けます。・・・そんなこんなで水道料金事件解決に乗り出したミギョンですが、その中でさらに大きい事件が関与していることに気づきます・・・。原題は「범죄의 여왕」です。
 5位「愛人/ラマン」は、1992年のジャン・ジャック・アノー監督作品の再上映。韓国題は「연인」です。

韓国内の映画 NAVER映画の人気順位 と 週末の興行成績 [9月2日(金)~9月4日(日)]

$
0
0
 コリアキネマ倶楽部で観た北朝鮮映画「後日の私の姿(먼 후날의 내 모습)」(1997)はいろんな意味で興味深い内容でした。いわゆる<苦難の行軍>の厳しい状況下で作られた作品で、トラクターの代用燃料として木炭ガスが用いられるとか現場の労働者がその改良に努めるとか・・・。また平壌の豪奢なアパートで暮らす革命世代3世のグータラお坊ちゃん(←日本の基準ではマジメな部類)の暮らしぶりを批判してたり、というのも現実の反映か? 1998年の平壌国際映画祭での最優秀賞(「たいまつ金賞」)受賞作だそうですが、この映画祭というのがユニークで・・・というのはまた別の話。

 北朝鮮関係では、9月24日からユーロスペースで「将軍様、あなたのために映画を撮ります」が始まります。(後日横浜のシネマ・ジャック&ベティ等でも上映。) 1978年北朝鮮に拉致され、86年ウィーンのアメリカ大使館に亡命するまで北朝鮮であの「帰らざる密使」や「プルガサリ」等の製作に携わった申相玉(シン・サンオク)監督と女優崔銀姫(チェ・ウニ)についてのドキュメンタリーで、「ふたりが密かに録音していた金正日の肉声も収められる」とのことです。公式サイトは→コチラ。多少なりとも関心がある方は「闇からの谺―北朝鮮の内幕(上・下)」(文春文庫)をぜひ読んでみて下さい。(アマゾンの値段は1円です。) 読み物としておもしろいです!
   「朝鮮日報」9月2日掲載の「封切映画 ぴったり10字評」 (ハングル文も訳文も10字です。)。)  「マネーモンスター」
   「マネー・ショート」が上手 ★★★☆

 「愛と暗闇の物語」
   ナタリー、ホント欲張り ★★★


 「イコールズ」
   当代の青春俳優を確認! ★★★

 「ズーランダー NO.2」
   第1作の再上映を待つ ★★★


 「メカニック:ワールドミッション」
   「96時間」の南侵版だね ★★☆


 「SKIPTRACE/絶地逃亡」
   秋夕間近。ジャッキーだ! ★★☆

 「マネーモンスター」は日本では6月に公開済。「愛と暗闇の物語」(仮)はナタリー・ポートマンの初監督作品で昨年のカンヌ国際映画祭では特別招待作品として上映されました。イスラエルの著名な作家アモス・オズの自伝が原作で、1940年代末パレスチナに移り住んだ少年アモスとその両親の物語。詳細は→コチラ参照。日本公開は未定。「ズーランダー NO.2」はアメリカのコメディ「ズーランダー」(2001)の続編。男性スーパーモデルに殺人がからんで・・・という設定は前作同様か? 日本公開未定。「SKIPTRACE/絶地逃亡」(仮)はジャッキー・チェン主演の最新アクション。詳細は→コチラ。日本公開は年内のようです。他の作品は以下の記事の中で紹介しています。
         ★★★ NAVERの人気順位(9月6日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
             ※評点の後の( )は採点者数
①(-) Bringing Tibet Home ~故郷を引き寄せて~(韓国等)  9.6(55)
②(2) KING OF PRISM by PrettyRhythm(日本)  9.38(613)
③(-) ズートピア  9.35(17,620)
④(-) ドロップ・ボックス(韓国)  9.31(89)
⑤(4) 私たち(韓国)  9.24( 888)
⑥(1) 影たちの島(韓国)  9.20(49)
⑦(7) オーヴェという男  9.14(1,230)
⑧(8) 名探偵コナン 純黒の悪夢(ナイトメア)(日本)  9.06(2,596)
⑨(-) 内部者たち:ジ・オリジナル(韓国) 9.02(7,075)
⑩(-) シング・ストリート 未来へのうた  8.99( 3,962)

 ①と④の2作品が本ブログ初登場です。
 ①「Bringing Tibet Home ~故郷を引き寄せて~」は、アメリカ・韓国・ネパール・インド合作のドキュメンタリー。テンジン・リグドルはチベット難民2世のアーティスト。「死ぬまでに一度、故郷チベットの土を踏みたい」という父親の遺言に突き動かされ、彼は父親同様故郷チベットの土を踏むことのできない人々のために17ヵ月間のプロジェクトを敢行します。それは20トンもの土をチベットからインドへ運ぶというもの。2000kmもの距離と50ヵ所の関門という困難を乗り越えて、土はチベット難民が暮らすインドのダラムサラに到着します・・・。この作品は9月11日(日)に長野市(→コチラ参照)で日本初上映。また9月13日(火)に東京外国語大学(→コチラ参照)で上映&劇中歌の演奏、監督のトーク等があります。韓国題は「브링 홈:아버지의 땅」です。
 ④「ドロップ・ボックス」は、韓国のドキュメンタリー。日本では2007年熊本市の慈恵病院というカトリック系の病院に「こうのとりのゆりかご」という名称で赤ちゃんポストが開設されました。諸事情のため育てることのできない新生児を親が匿名で特別養子縁組をするための施設です。韓国でも2009年ドロップ・ボックスという赤ちゃんポストが設けられました。そこは病院ではなく、ソウル市冠岳区の蘭谷洞にある主サラン共同体教会という教会。この作品はそこのイ・ジョンナク牧師の話です。といっても彼の日常よりも主に子どもたちについて。薬を服用していた女子中学生が産んだ子供とか、障碍を持った子供とか・・・。この映画を観た方のブログ記事は→コチラ。「2009年の開設以来約800人の命を助けた」とのことですが、この数字には驚きました。(以下、少し長くなりそうなので別記事にします。) 原題は「드롭박스」です

     【記者・評論家による順位】
             ※評点の後の( )は採点者数
①(-) キャロル  8.96(13)
②(1) アガシ(韓国)  7.68(18)
③(2) 私たち(韓国)  7.66(14)
④(-) ドロップ・ボックス(韓国)  7.66(1)
⑤(3) ナショナル・ギャラリー 英国の至宝  7.50(4)
⑥(4) BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント  7.45(5)
⑦(5) トンネル(韓国)  7.21(14)
⑧(-) ズートピア  7.20(5)
⑨(7) ヒッチコック/トリュフォー  7.17(6)
⑩(8) 影たちの島(韓国)  7.14(7)

 本ブログの新登場は④「ドロップ・ボックス」だけですが、これについては上述しました。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績9月2日(金)~9月4日(日) ★★★

         「トンネル」が4週連続トップ
【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・週末観客動員数・・・累計観客動員数・・・累積収入・・・上映館数
1(1)・・トンネル(韓国)・・・・・・・・・・・8/10・・・・・・・・・・・344,724・・・・・・・・・6,942,955 ・・・・・・・・56,147・・・・・・・・739
2(55)・・メカニック:ワールドミッション・・8/31・・・・・・273,896 ・・・・・・・・・・415,456・・・・・・・・・・3,342・・・・・・・・320
3(2)・・ライト/オフ・・・・・・・・・・・・・8/24 ・・・・・・・・・・・241,314・・・・・・・・・・998,656・・・・・・・・・・7,904・・・・・・・・558
4(4)・・ゴーストバスターズ ・・・・・・8/25・・・・・・・・・・・127,963 ・・・・・・・・・・479,470・・・・・・・・・・3,827・・・・・・・・459
5(3)・・徳恵翁主(韓国) ・・・・・・・・・8/03・・・・・・・・・・・100,708・・・・・・・・・5,528,972・・・・・・・・・43,863・・・・・・・・480
6(7)・・釜山行き(韓国)・・・・・・・・・・7/20・・・・・・・・・・・・57,080・・・・・・・・11,531,424・・・・・・・・・92,912・・・・・・・・328
7(5)・・-スター・トレック BEYOND・・8/17 ・・・・・・・・・・53,529・・・・・・・・・1,127,337・・・・・・・・・・9,951・・・・・・・・362
8(6)・・ペット・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8/03・・・・・・・・・・・・53,059・・・・・・・・・2,514,118・・・・・・・・・19,359・・・・・・・・368
9(8)・・仁川上陸作戦(韓国) ・・・・・7/27・・・・・・・・・・・・36,944・・・・・・・・・7,033,158・・・・・・・・・54,992・・・・・・・・283
10(新)・・イコールズ ・・・・・・・・・・・・8/31・・・・・・・・・・・・54,887・・・・・・・・・・・・56,266 ・・・・・・・・・・・425・・・・・・・・357
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 夏休みも終わり、韓国映画の盛況で注目された観客動員数もここにきてかなり落ちてきました。3週連続1位だった「トンネル」も勢いは鈍ってきたものの、「仁川上陸作戦」にづいて9月6日に700万人の大台に到達し、これで4週連続トップです。
 今回の新登場は2・10位の2作品です。
 2位「メカニック:ワールドミッション」は、米・仏合作のアクションで「メカニック」(2011)の続編。殺し屋稼業から足を洗い平穏に暮らしていたビショップ(ジェイソン・ステイサム)のもとに、かつて彼を裏切って逃走した兄弟子のクレイン(サム・ヘイゼルダイン)から殺しの依頼が入ります。相手にしないつもりでしたが、何の罪もない女を人質にとられたビショップは、やむなく依頼を受けることに。ターゲットとして提示されたのは、フィクサーとして世界を裏で操る3人の武器商人。ところが計画を進めるうちにビショップはクレインの企みを知ります・・・。韓国題は「메카닉: 리크루트」。日本公開は9月24日です。
 4位「ゴーストバスターズ」は、日本の方がめずらしく早くて8月19日から始まっています。韓国題は「고스트버스터즈」です。
 10位「イコールズ」は、アメリカのSF&ロマンス。
舞台はすべての感情が統制され、愛だけが唯一の犯罪とされた感情統制区域。ある日、同僚の死を目撃したサイラス(ニコラス・ホルト)は、その現場でニア(クリステン・スチュワート)の微妙な表情の変化を見て 彼女が<感情保菌者 >であることを知ります。その後ニアを観察していたサイラスは、生まれて初めて不慣れな感情を感じて 感情抑制治療を受けますが、ニアに向かう気持ちはますます大きくなっていきます。そして 初めて愛という感情を感じるようになった2人はお互いの心を確認し愛を共有しますが思わぬ危機に直面し、結局2人は脱出を決心します・・・。韓国題は「이퀄스」。日本公開はあるようですが時期は未定。

【多様性映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(1)・・マダム・フローレンス! ・・・・・・・・・8/24・・・・・・・・・・・・・・13,520 ・・・・・・・・・・130,733・・・・・・・・・・・1,011 ・・・・・・・・137
       夢見るふたり
2(新)・・グランドファーザー(韓国)・・・・・・8/31 ・・・・・・・・・・・・・・13,054 ・・・・・・・・・・・26,141・・・・・・・・・・・・・195 ・・・・・・・・274
3(2)・・最悪の1日(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・8/25 ・・・・・・・・・・・・・・11,078 ・・・・・・・・・・・56,857・・・・・・・・・・・・・460 ・・・・・・・・・71
4(3)・・犯罪の女王(韓国) ・・・・・・・・・・・・・8/25 ・・・・・・・・・・・・・・・2,935 ・・・・・・・・・・・40,447・・・・・・・・・・・・・318 ・・・・・・・・・45
5(5)・・愛人/ラマン ・・・・・・・・・・・・1992/6/20 ・・・・・・・・・・・・・・・2,734 ・・・・・・・・・・・14,094・・・・・・・・・・・・・108・・・・・・・・・・38

 今回の新登場は2位「グランドファーザーだけ。韓国のドラマ&アクションです。かつてベトナム戦争に参戦した軍人だったキグァン(パク・グニョン)は、工場の通勤バスの運転手をして生計を立てています。ある夜彼は長い間消息が絶えていた息子が自殺したとの知らせを聞きます。葬儀場に出向いたキグァンは、そこで息子が残した孫娘のポラム(コ・ポギョル)に会います。息子の突然の死が釈然としないないギグァンは、氷のように冷たい孫娘に対し「お父さんは自殺ではない」ことを明らかにするために全力を尽くします。その後決定的な手がかりを得たギグァンは、真実に近づくほど悲しみは怒りに変わり、そして守るべきただ1人のために命をかけて死闘に臨みます。原題は「그랜드파더」です。

おもしろくてためになる<歴史共和国 韓国史法廷>シリーズ 6月抗争・禁乱廛権等(その2)

$
0
0
      
 →3つ前の記事の続きです。今回は上画像右の「なぜ禁乱廛権が廃止されたか?(왜 금난전권이 폐지되었을까?)」を紹介します。

 表紙の絵を見ると近現代でないことはわかります。日本史で言えば江戸時代半ば頃。18世紀あたりが今回の法廷で取り扱われている時代です。
 では、そもそも<禁乱廛権>とは何ぞや?
 読みは<クムナンジョンクォン>、日本の音読では<きんらんてんけん>です。廛は一見塵と間違えそうですが、<てん>と読み、屋敷や店を意味する漢字。ここでは店の方です。
この4文字は<禁乱・廛権>ではなく、<禁・乱廛・権>と区切って理解するとわかりやいです。つまり「乱廛を禁止する権利」のことです。

 では乱廛とは何か?
 ・・・という前に、まず順を追って市廛(시전.シジョン.してん)という用語から説明しておきます。これは政府の統制下にある店舗のことです。政府は店舗を立てて商人に貸与し、政府が必要とする物品を調達・供給させるとともに、店舗税と商税を徴収しました。市廛商人は官庁に物品を納める見返りとして、特定商品の独占販売権を与えられました。このように政府と「持ちつ持たれつ」といった関係にあったのが市廛商人でした。
 また、これら市廛の中でもっとも規模が大きく繁盛したものが絹、紙、魚等を売る店で、後にこれらは六矣廛(욱의전.ユギジョン.ろくいてん)と総称されました。

 そこで乱廛(난전.ナンジョン.らんてん)について。
 これは政府の統制下にある市廛とは逆に、政府の許可を得ないで商売をしている露店(の商人)のことで私商(사상.ササン)ともいいます。つまり、朝鮮後期の商業発展とともに成長してきた新興商人層で、とくに18世紀以降漢城(ソウル)を始め各地で活発な商業活動を行うようになりました。

 この乱廛の台頭によって自らの商権を侵害された市廛が政府に要請して1706年(粛宗32年)獲得した権利が禁乱廛権でした。漢城(ソウル)の都城内と城外十里(約4㎞)以内の地域で乱廛の活動を規制して市廛商人に専売特権を与えるとともに、それを守らせる権利を付与したものです。

 しかし、このような権力と結びついた商業の独占権といったものは物価高の要因ともなるし、商業の自由な発展を阻害することになります。当然私商や都市窮民の反発は高まり、結局は撤廃されるのが時代の流れ。
 その結果が1791年の辛亥通共(シネトンゴン.しんがいつうきょう)とよばれる禁乱廛権を禁止する措置で、当時の左議政蔡済恭(チェ・ジェゴン)の建議を容れて正祖(右画像)により実施されました。「六矣廛以外の」というただし書き付きですが、全ての市廛の禁乱廛権を否定し、設立30年未満の市廛を廃止するという内容で、この措置は以後の商業発展のひとつの契機となったとのことです。

 ・・・と、ここまで読んで「なんだ、日本史の<楽市・楽座>と同じようなものじゃん!」と思った人は多いのでは? 織田信長が1577年安土城下で実施した、という施策。→ウィキペディアによると1549年近江の大名・六角定頼によるものが最初だそうですが、いずれにしろ正祖の時代より200以上も前。それだけ朝鮮は日本よりも商業の発展が遅れていたってことか!?と思いますが、これだけで結論付けるのは早計でしょう。今後の課題ですね。

 やっと本書の中身に立ち返って、まず登場人物の紹介から。
 この裁判の原告はキム・シジョン(左画像)、そして被告はパク・ササン(右画像)です。あ、両者とも架空の人物です。
 シジョンとササンという名の綴りは市廛、私商と同じ。わかりやすいです。(笑) つまりキム・シジョンは親から受け継いだ市廛、それも規模が大きい六矣廛で中国産の絹織物を取り扱っている商人です。
 一方パク・ササンは漢江を根拠地にしている京江(경강)商人とよばれていた商人集団の代表的存在。
 私ヌルボが「ここらへんが本書の構成の妙だな」と思ったのは、旧時代の代表を原告に、新時代の担い手を被告に設定にしている点。前の記事で旧軍人を原告、民主派学生を被告にしたように、「負けそうな側」を原告にしているのです。つまり「歴史的に敗者や正義に反する側にも言い分はある」という意図なのだろう、とヌルボとしては肯定的に理解しました。
 で、原告キム・シジョンが「役人の無理な要求にも応え、国のために代々商売をしてきたのに、乱廛がはびこって自分たちの権利を侵害しているのに、政府が禁乱廛権まで廃止するとは到底容認できない」という理由で私商の代表パク・ササンを相手取って賠償を求めたのかこの裁判というわけです。
 これに対して被告パク・ササンは、朝鮮の商業発展に寄与しているのは自分たちの方だ。市廛の方こそ権力をかさに横暴を働いてわれわれの財産権を侵害してきた」と反論します。

 双方とも仲間の商人等が証人として出廷します。原告側証人で、乱廛の取締りに当たった役人の名前がカン・タンソク(강단속)というのはちょっと笑ってしまいます。漢字だと強団束。団束は取締りの意です。
 実在の人物で登場しているのは上記の蔡済恭(チェ・ジェゴン)(右画像)=被告側証人と、1799年領議政となった老論派の李秉模(イ・ビョンモ)(左画像)=原告側証人です。※蔡済恭が手に掲げているのは死後(1824)刊行された彼の詩文集「樊巖集(번엄집)」です。

 そのやりとりを読むと、禁乱廛権廃止という施策は社会経済上の観点からだけでなく、市廛との結びつきによって利益を得ていた老論派に打撃を与えるといった意図も見えてきます。(戦国大名が楽市・楽座によって大寺社等の旧勢力に経済的打撃を加えたのと同じパターンか?) 蔡済恭は南人派の領袖。つまり反老論派で、正祖の信任を得て政治に携わった人物です
 あ、蔡済恭はドラマ「トキメキ☆成均館スキャンダル」に登場しているのですね。もちろん「イ・サン」にも・・・。とくに前者では、禁乱廛権のことがドラマの展開にも関わって出てきたようですよ。(→コチラ参照。)

 さて、いよいよ判決です。主文は・・・・
 歴史共和国韓国史法廷は原告キム・シジョンが被告パク・ササンを相手に提起した物質的・精神的損害賠償請求を棄却する。
 ・・・と、予測通りの結果。判決理由を簡略に記すと、
 禁乱廛権は人間の生活に必要な需要と供給の原則を阻害するもので、普遍的な真理に則ったものではない。したがって、資本主義と自由市場経済体制が芽生え始めた朝鮮後期には禁乱廛権を廃止することは、その時代の流れに合ったものとみられ、今回の訴訟は原告の主張は棄却するものとする。
 この「資本主義と自由市場経済体制が芽生え始めた朝鮮後期」という部分には<内在的発展論>、<資本主義萌芽論>といった民族史観の匂いがほのかに感じられますね。(参考→<朝鮮の歴史観>)

 以上が本書の主な内容で、結末は上記のように予想通りでしたが、ベンキョーになったのは17世紀最初のあたりからの社会の変化がいろいろ記されていること。
 とくに16世紀末の壬辰倭乱・丁酉再乱(文禄慶長の役)が朝鮮の経済や土地制度、身分制度に及ぼした影響は非常に大きく、朝鮮史の分水嶺ともいわれているとのことですが、その中で「田植えが普及して農業生産が高まり、耕作地も拡大した」と記されています。
 田植えは韓国語では移秧法(이앙법.イアンポプ.いおうほう)、あるいはモネギ(모내기)といいます。※「모」は「苗」の固有語で、모내기は「苗を移すこと」。
 この田植えの普及についての判事と被告側弁護士のやり取りは次の通りです。
 判事「移秧法が壬辰倭乱以後に普及したということは、もしかして日本から入ってきたものですか?」
 弁護士「いいえ。ふつうモネギといっている移秧法は高麗時代に普及していましたが、当時は水利施設が貧弱だったので国でも勧めませんでした。灌漑施設がないとモネギの時期に日照りが続くと苗が全滅するからです。しかし壬辰倭乱後には技術が発達して移秧法は全国に拡大していきました。」 ふーむ、このあたりにも何かありそうな気配がないでもない? ま、それは今後の課題。

[付記①] 本書中にあった「朝鮮後期の商業と貿易活動」を示す図は、1996年発行の高校国史教科書(の翻訳書)に同じものがありましたので並べて貼っておきます。
     
[付記②] 私ヌルボが上述の六矣廛(ユギジョン)という言葉を知ったのは、2012年12月ソウル市歴史博物館の展示物を見たのが最初です。その写真を貼っておきます。
  朝鮮第1の繁華街とされる漢城の雲従街(운종가.ウンジョンガ)。その中心部の現在の鐘閣あたりに六矣廛があったそうです。
 ※近年の発掘による遺物が2012年にオープンした六矣廛博物館で展示されているそうです。(→ソウルナビ。→innolife。) 場所はタプコル公園のすぐ東の六矣廛ビル地下。(←知らんかったな。)
 上の展示物を見ると、ずいぶん道幅が広いですね。ホンマかいな?と思っていろいろ検索すると、→コチラの<カイカイ反応通信>の記事が見つかりました。1900年当時の写真が掲載されていたので1枚拝借して貼っております。他にも店舗の写真等数枚あります。なるほど、道路はたしかに広いですね。ただ、街のフンイキは大分違うような・・・。

 生徒・児童向きとはいえ、1冊読むといろんな知識が得られるものです。教科書よりもおもしろいし・・・。しかし、また新たな疑問もいろいろ。当然とはいえ、キリがありません。ふー。

韓国内の映画 NAVER映画の人気順位 と 週末の興行成績 [9月9日(金)~9月11日(日)]

$
0
0
 9月3日(土)品川に行った時に、例の「君の名は。」を観ようとT・ジョイPRINCE品川に入ったものの、昼頃から午後6時過ぎあたりまですべて満席! 「オーバーではなく、すさまじい大ヒットである」と前日「毎日新聞(夕)」の<シネマの休日>が書いていた通り。
 そこで9月12日(月)昼前に出直して川崎TOHOへ。それでも500席以上キャパがあるスクリーン5に100人以上入ってからなー。すごいすごい。

 ちょくちょく書いているように、およそアニメには疎い私ヌルボですが、新海誠監督作品は2013年の「言の葉の庭」を公開直後に観てます。角川シネマ新宿の小さい方のスクリーン。新宿御苑に降る雨の描写がとくに印象に残りました。で、その翌年ソウルに行った時、たまたま韓国映像資料院の建物内のシネマテークKOFAでアニメ特集をやってて、そこで「雲のむこう、約束の場所」「ほしのこえ」「秒速5センチメートル」の3作品をまとめて観てきました。右画像はその時のポスターです。
 で「君の名は。」の感想ですが、なかなか良かった。(・・・て、それだけ?) 私ヌルボ、あと数十年若かったらもっと感動してただろうな。いろんな点でスケールが大きくなって、新海監督は「カベを1つ越えた」というのはわかります。しかし、最初に観た頃の(ファン層も含めて)小ぢんまりとしたオタクっぽいフンイキの方がヌルボの性に合ってるかも。まあ今もそんな要素はあいかわらず残ってますね。そういえば<NAVER映画>のサイトで「言の葉の庭」に対する例外的な低評価のネチズンのレビューに「病的なラブフォビア(恋愛恐怖症)」と書かれてたのがあったな。たしかにオタク的妄想恋愛(笑)の気味はあるかもなー。ま、そこらへんも魅力のうちなのかもしれませんが・・・。
 この「君の名は。」は今年の釜山国際映画祭で「シン・ゴジラ」とともに上映されるとのこと。しかし、韓国での上映が待ちきれず飛行機で日本に来て観た人もいるんですよねー。→コチラ(自動翻訳)参照。

 「君の名は。」を観終って蒲田に移動。JR蒲田駅近辺に来たのはたしか石原慎太郎が衆院選に出てた時だから・・・え、1993年てか !? 石原候補が握手を求めてきたのを拒んだ記憶があるなー。(笑)
 来たついでにゴジラが上陸・遡上してきた呑川を確認。(右画像) この程度の川幅のローカルな川だと巨大化する以前のゴジラを撮るにはたしかに好都合。
 で、初めて入った蒲田宝塚で見逃がしていた「海よりもなお深く」を鑑賞。コチラは観客5人だったかな? 蒲田で観て正解の映画でした。(・・・って、どこが ?(笑))
   「朝鮮日報」9月9日掲載の「封切映画 ぴったり10字評」 (ハングル文も訳文も10字です。)。)  「マイケル・ムーアの世界侵略のススメ」
   こんな痛快な侵攻なら ★★★★


 「密偵」
   ‘ガンホの顔’という分類 ★★★☆

 「アリス・イン・ワンダーランド ~時間の旅~」
   ハリウッド、続編の強迫? ★★★


 「古山子、大東輿地図」
   朝鮮の‘オタク’のために ★★★


 「月光宮殿」
   韓国アニメ、跳躍はいつ? ★★☆


 上掲の作品はすべて以下の記事の中で紹介しています。
         ★★★ NAVERの人気順位(9月13日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
             ※評点の後の( )は採点者数
①(1) Bringing Tibet Home ~故郷を引き寄せて~(韓国等)  9.51(61)
②(3) ズートピア  9.35(17,659)
③(6) 影たちの島(韓国)  9.34(77)
④(4) ドロップ・ボックス(韓国)  9.31(89)
⑤(2) KING OF PRISM by PrettyRhythm(日本)  9.29(765)
⑥(5) 私たち(韓国)  9.24(896)
⑦(7) オーヴェという男  9.13(1,246)
⑧(-) 劇場版 響け!ユーフォニアム~北宇治高校吹奏楽部へようこそ~(日本)  9.02(91)
⑨(9) 内部者たち:ジ・オリジナル(韓国) 9.02(7,092)
⑩(10) シング・ストリート 未来へのうた  8.99( 3,981)

 ⑧「劇場版 響け!ユーフォニアム~北宇治高校吹奏楽部へようこそ~」だけが今回の新登場です。私ヌルボ、原作本も読んでないしなー・・・。それにしても、映研、書道、百人一首等々の高校の文化系部活への注目、あと何が残ってる? 生物とか天文とか化学といった理科関係か、弁論部・新聞部とか、あ、農業高校なんかいいかも・・・と思ったら「銀の匙 Silver Spoon」というのがあったか。韓国題は「극장판 울려라! 유포니엄」です

     【記者・評論家による順位】
             ※評点の後の( )は採点者数
①(1) キャロル  8.96(13)
②(2) アガシ(韓国)  7.68(18)
③(3) 私たち(韓国)  7.66(14)
④(4) ドロップ・ボックス(韓国)  7.66(1)
⑤(-) 密偵(韓国)  7.50(1)
⑥(5) ナショナル・ギャラリー 英国の至宝  7.50(4)
⑦(6) BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント  7.45(5)
⑧(-) ディーブ  7.35(5)
⑨(7) トンネル(韓国)  7.21(14)
⑩(8) ズートピア  7.20(5)

 ⑤と⑧の2作品が初登場です。
 ⑤「密偵」については後述します。
 ⑧「ティーブ」は20014年のヨルダン・アラブ首長国連邦・カタール・イギリスの合作作品で、日本では同年東京フィルメックスで上映されましたが、一般劇場公開はなく現在に至っています。物語の舞台は第1次大戦中のアラビア半島西部ヒジャーズ地方(当時はオスマン帝国の支配下)。遊牧民の少年ディーブはある日、イギリス人の将校に道案内を頼まれ、兄とともに彼を連れて出発します。将校は極秘の任務があるというでしたが、目的地に向かう途中で何者かに襲撃され、彼ばかりか兄も殺されてしまいます・・・。韓国題は「디브」です。これは一般公開してほしいな・・・。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績9月9日(金)~9月11日(日) ★★★

         ソン・ガンホ、コン・ユの「密偵」が1人勝ちのトップ
【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・週末観客動員数・・・累計観客動員数・・・累積収入・・・上映館数
1(65)・・密偵(韓国)・・・・・・・・・・・・・9/07・・・・・・・・・1,607,742・・・・・・・・・・2,174,148 ・・・・・・・・17,716・・・・・・1,444
2(19)・・古山子、大東輿地図(韓国)・・9/07・・・・・・・219,297 ・・・・・・・・・・・300,550 ・・・・・・・・・2,386・・・・・・・・756
3(新)・・アリス・イン・ワンダーランド・・9/07・・・・・・・156,040・・・・・・・・・・・192,844・・・・・・・・・・1,581・・・・・・・・515
       ~時間の旅~
4(37)・・月光宮殿(韓国) ・・・・・・・・9/07・・・・・・・・・・・・55,004・・・・・・・・・・・・63,353 ・・・・・・・・・・・490・・・・・・・・425
5(新)・・おもちゃが生きている・・・9/07・・・・・・・・・・・・49,492・・・・・・・・・・・・59,311 ・・・・・・・・・・・458・・・・・・・・294
6(1)・・トンネル(韓国)・・・・・・・・・・・8/10・・・・・・・・・・・・46,305・・・・・・・・・7,076,076・・・・・・・・・57,179・・・・・・・・420
7(3)・・ライト/オフ・・・・・・・・・・・・・8/24・・・・・・・・・・・・41,760 ・・・・・・・・・1,081,040・・・・・・・・・・8,652・・・・・・・・329
8(新)・・ロビンソン・クルーソー・・9/07 ・・・・・・・・・・・・41,470・・・・・・・・・・・・50,214 ・・・・・・・・・・・386・・・・・・・・329
9(2)・・メカニック:ワールドミッション・・8/31 ・・・・・・・・39,190 ・・・・・・・・・・516,531・・・・・・・・・・4,169・・・・・・・・210
10(5)・・徳恵翁主(韓国) ・・・・・・・・8/03・・・・・・・・・・・・10,554・・・・・・・・・5,568,733・・・・・・・・・44,155 ・・・・・・・・272
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 4週連続1位だった「トンネル」は6位に後退し、代わってソン・ガンホとコンユ主演の「密偵」が予測通りトップに。それにしても、韓国映画の好調が続きます。
 今回の新登場は1~5位と8位の計6作品です。
 1位「密偵」は、このところ続いている日本統治期を背景にした作品。1920年代の朝鮮です。朝鮮人の警察官イ・ジョンチュル(ソン・ガンホ)は、武装独立運動組織・義烈団の後をイヌという匿名で 義烈団リーダーのキム・ウジン(コン・ユ)に接近します。2人はお互いの正体と意図を知りながらも本音を隠したまま近づきます。出処不明の情報が双方の間に漏れ出て、誰が密偵なのかわからない中で、 義烈団は日本の主要施設を破壊できる爆弾を京城に持ち込もうと企てます。そして日本の警察は彼らを追い、皆が上海に集まります。追う者たちと捕まるわけにはいかない者たちとの間に緊張感が深まる中、 爆弾を積んだ列車は国境を越えて京城に向かいます・・・。原題は「밀정」です。
 2位「古山子、大東輿地図」は、朝鮮後期に朝鮮半島全土を歩いて「大東輿地図」を完成させた金正浩(キム・ジョンホ)の物語。古山子(コサンジャ)はその号です。もしかして朴範信(パク・ボムシン)の小説「古山子」(→コチラ)の映画化かなと思ったらその通り。朝鮮の本当の地図を作成するために2本の足で全国八道を踏破した金正浩(チャ・スンウォン)は、娘のスンシル(ナム・ジヒョン)がいつの間にか16歳になるかも忘れたまま「地図に狂った人」という非難にもかかわらず、国が独占した地図を人々と分かち合いたいという思いでひたすら地図完成と木版制作に没頭します。しかし安東金氏一族と対立する興宣大院君は、権力を掌握するため彼の地図を手に入れようとします。「 歴史に記録されていない金正浩の秘められた物語」云々というから、フィクションの部分がけっこうあって、そこがキモ? しかし、韓国の人たちのほとんども彼の生涯等について誤解しているようで・・・というのは本ブログのかなり詳しい過去記事(→コチラ)と、そして→コチラの記事のコメント欄も・・・。この作品の原題は「고산자, 대동여지도」です。
 3位「アリス・イン・ワンダーランド ~時間の旅~」は、日本ではすでに7月1日から公開されています。韓国題は「거울나라의 앨리스」。
 4位「月光宮殿」は、韓国のアニメ。人間と神との間で繰り広げられる宮殿ファンタジー・アドベンチャーです。偶然昌徳宮の中の幻想の世界・月光宮殿に入ってしまった13歳の少女ヒョン・ジュリ。そこで<問題児>のリスのタラミとイケメン武士のワンに出会ったジュリは 家に帰る道を探しますが、 時間を動かす自擊漏(水時計)の鍵を持って月光宮殿を支配しようとする梅花夫人の計略で危機に直面することに・・・。原題は「달빛궁궐」です。
 5位「おもちゃが生きている」(仮)は、アルゼンチン・スペインの合作で、「瞳の奥の秘密」のフアン・ホセ・カンパネラ監督が初めて手がけた3Dアニメで、2013年アルゼンチンで大ヒットしたそうです。原題の「Metegol」とはテーブル・ゲームのサッカーのこと。主人公の少年アマデオは、サッカーが得意ないじめっ子のゴロッソとそのゲームで対決して勝ちましたが、ゴロッソはそれをずっと根に持ってしまいます。それから10年後、ゴロッソは世界的なサッカー選手となっています。しかし彼は少年時代の恨みから(!)故郷を破壊しにやって来る(!!)のです。町長は怖がって逃げ、町のすべては壊され、アマデオの(片想いの ?)彼女はヘリで連れていかれ・・・。ところが悲しむアマデオの涙がゲームの人形に落ちた瞬間、力強い逆転劇が始まります・・・。韓国題は「장난감이 살아있다」。日本公開はなさそう、かな?
 8位「ロビンソン・クルーソー」(仮)は、ベルギーの3Dアニメ。激しい嵐が吹き荒れた後、<人間>という新しい生命体を発見した島の動物たち。彼らは自分の足で歩く<人間>の到来に驚くばかり。しかし意外に親切で優しそうなロビンソン・クルーソーの魅力にはまり始めますが、ある日ロビンソン・クルーソーと同じような見知らぬ生命体が現れてロビンソン・クルーソーを脅かす・・・って一体何なんだ? 「誰も知らなかった彼の無人島生存の秘密が明かされる!」?? 韓国題は「로빈슨 크루소」。日本では劇場未公開で、レンタルDVDが出てます。

【多様性映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(3)・・最悪の1日(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・8/25・・・・・・・・・・・・・・・4,580 ・・・・・・・・・・・67,606・・・・・・・・・・・・・540 ・・・・・・・・・42
2(49)・・マイケル・ムーアの世界侵略のススメ・・9/08・・・・・・・・2,493 ・・・・・・・・・・・・4,343・・・・・・・・・・・・・・35 ・・・・・・・・・32
3(26)・・カフェ・ソサエティ・・・・・・・・・・・・・・9/14・・・・・・・・・・・・・・・1,227・・・・・・・・・・・・・2,134・・・・・・・・・・・・・・21 ・・・・・・・・・11
4(1)・・マダム・フローレンス! ・・・・・・・・・8/24・・・・・・・・・・・・・・・1,094 ・・・・・・・・・・137,011・・・・・・・・・・・1,058 ・・・・・・・・・10
       夢見るふたり
5(10)・・海よりもまだ深く(日本) ・・・・・・・・・7/27・・・・・・・・・・・・・・・・904・・・・・・・・・・・・88,805・・・・・・・・・・・・・737・・・・・・・・・12

 2・3位の2作品が新登場です。
 2位「マイケル・ムーアの世界侵略のススメ」は、日本ではすでに5月公開されています。韓国題は「다음 침공은 어디?(次の侵攻はどこ?)」です。
 3位「カフェ・ソサエティ」は、今年のカンヌ国際映画祭のオープニング作品として上映されたウディ・アレン監督の新作ロマンチック・コメディ。舞台は芸能人から政治家、ギャングまでありとあらゆる人間が出入りしていた1930年代のハリウッド。そこにが飛び込んでいったのがボビー・ドーフマン(ジェシー・アイゼンバーグ)という野心ある青年。業界の有力者でもある叔父の下で働き始めたばかり彼の恋愛を通して、ハリウッドの虚実が浮き彫りになっていきます・・・。韓国題は「카페 소사이어티」。日本公開はありそうですが詳細は未定のようです。

[韓国語] ~것 같아요(~みたい)というアイマイ表現が韓国でも増えてるみたい

$
0
0
 図書館で9月13日の「朝鮮日報」をパラパラと眺めていたら、A29面の一番下に「「~같아요」という言葉、慢性病になっているのでは?」と題した投稿記事があるのが目に入りました。

 「~같아요(カッタヨ)」とは、「~みたいです」「~のようです」といった意味の文末表現です。またGoogle翻訳等では「~と思います」と訳出されたりもしています。

 ※記事本文(原文)は下の画像または→コチラ参照。

 記事の内容は、およそ次のようなものです。

○最近TVなどで男女を問わず「~같아요」という語尾表現が多く、耳に障る。
○たとえば、風景を見て「멋진 것 같아요」(ステキみたい)、「아름다운 것 같아요」(美しいみたい)と言ったり、感想や意見を訊くと「좋은 것 같아요」(良いみたい)、「행복한 것 같아요」(幸せみたい)、「슬픈 것 같아요」(悲しいみたい)と言ったりしている。はなはだしくは「아픈 것 같아요」(痛いみたい)と言う場合もある。食べ物の味についても「맛있는 것 같아요」(美味しいみたい)、「매운 것 같아요」(辛いみたい)と言うのをよく聞く。
○なぜ自分が直接経験したことまで他人の話のように言ってしまうのか? 「풍경이 멋집니다」(風景がステキです)、「아름답습니다」(美しいです)、「행복합니다」(幸せです)、「맛이 좋습니다」(美味しいです)、このように断定的になぜ言えないのだろうか?
○いつからか、青少年と若年層でこのような曖昧な表現が増え始め、以後減少するどころか、社会全体に拡大していく感じだ。私たちのほとんどが何か確信できず、自信が欠如したまま生きているためではないか。このように何気なく話す言葉が普遍化され、社会を無気力にしてはいないだろうか。もっと積極的な言葉を使って、活気に満ち堂々とした大韓民国を作ろう。

 ・・・いやあ、私ヌルボもたしかにちょっと気にはなってたこの表現。「朝鮮日報」がこの投稿を掲載したということは、やっぱり同様の認識があるということですねー。よく聞くからそれがフツーなんだろうなと思って自分でも意識的に使うようになってたみたいな・・・。(笑)
 今「것 같아요 韓国語」でググる(→結果)と、多くの韓国語関係サイトでもごく当たり前のようにこの「~것 같아요」の表現を紹介・説明しています。

 で、私ヌルボがこの記事を読んで「もしかして・・・」と思ったのは「韓国でも日本の後を追ってこうしたアイマイ・婉曲表現が増えてきているのかな?」ということ。
 日本で、やはり若者を中心として「~かな」「~みたいな」「~感じ」「~とか」「~かも」等のように文末をアイマイにぼかす表現が目立つようになってメディア等でも取り上げられたのはいつ頃だったのかな? その時にもやはり「なんではっきり言わないんだ!?」と批判する人もいましたね・・・。

 個人的にはヌルボ、本ブログの書き方にも如実に表われていますが、「~と思います(思われます)」「~ではないでしょうか?」等々のボンヤリとした表現を多用していて、断定形を用いることはまれです。それは断定できます。(笑)
 何十年も前のことですが、あるベテランの先生が「私は内心では疑問に思っていることや個人的な考えであっても、授業では「○○は△△だ」と断定的な言い方をします」と言ったことを今も覚えています。そちらの方が生徒としては明確に理解できるからとのことでした。
 ところがヌルボとしては「「坊つちやん」の作者は夏目漱石です」のような事実を述べる場合は別として「○○は△△だと思います」という言い方を意識的にしてきました。「自分はそう思うが、人によってはそう思わないだろう。では君はどう思う?」という意図を込めた表現として。

 こうしたアイマイ表現・ぼかし表現が増えた背景としては、多様な価値観を認めるという風潮があるのかもしれません。心理的には、我を通さず他者を尊重し、対立を回避する<やさしさ>の表われという面とともに、<責任逃れ>といった否定的側面もありそうに思われます。(←この表現がまさにソレ。)

 こんな<時代的気分>が逆行することは考えられず、この投稿についての賛否は別として、「~같아요」という表現は今後も増えることはあっても減ることはまずないでしょう。

 ※本ブログで何度か書いた<日本と韓国の24年という年差>という持論に、この事例も含まれるかどうか?

 ※見出し中の고질병は漢字では痼疾病。持病・慢性病といった意味。

「貧困のため」よりも大きな理由は? 韓国の海外養子、赤ちゃんポストをめぐる事情①

$
0
0
 今年3月、韓国で「Twinsters ~双子物語~(트윈스터즈)」というドキュメンタリー映画が公開されました。
 英・仏・米・韓国合作のキュメンタリーで、内容は次の通りです。

 昨年あたりからいろいろ報じられているのでご存知の方も多いと思います。
 フランス国籍でロンドン在住のデザイナーの勉強をしているアナイス・ボルディエさん(画像右、だっけな?)が「あなたとそっくりのアジア系女優が動画に出てる」と教えられたのがそもそもの始まり。相手のサマンサ・フッターマンさんも1987年11月9日と自分と同じ誕生日でした。アナイスさんはロサンゼルス在住の俳優というサマンサさんとFacebookで連絡を取ります。すると2人は釜山生まれで、すぐ養子の斡旋業者によって別々に引き取られていった双子だったことが判明しました。
 2013年5月、ロンドンで26年ぶりの再会した2人は遺伝子検査を受け、100%一卵性双生児であることが明らかになります 。その後この物語の映画化のためクラウドファンディングで資金を調達し、サマンサさん自身が監督となって完成したのがこの作品です。
 ※上記の経緯は→コチラに詳述されています。

 このドキュメンタリーの韓国版予告編を貼っておきます。

 ※日本での劇場公開はありませんが、Netflixで「双子物語」のタイトルで配信されています。(→コチラ

 ・・・と、いろいろ書くとさも自分も観たように思われるかもしれませんが、実は観てません。しかし梗概を読むだけでも感動する話ではありませんか!
 私ヌルボ、それにケチをつける気持ちは全然ありません。ただ、いろいろと考えざるをえない要素があるのも事実です。

 たとえば先週9月8日、「朝鮮日報」に「子犬まで海外養子に出す韓国」と題した記事が掲載されていました。ソチラの方が本記事のキッカケです。(原文は下画像または→コチラ。)
 ニューヨーク在住の歯科医師の女性による寄稿です。
 記事の要点は、近年韓国から外国に送られる犬たちに関すること。ひどい環境に置かれていた補身湯(犬鍋)用の犬を韓国や外国の動物保護活動団体が救い、主にアメリカやカナダの家庭に送っているのだそうです。筆者は「気になるのはなぜ韓国人はこんなことも責任を負わないのかという点だ」と問題提起し、韓国内で養子先を見つけるキャンペーンをすべきだと主張しています。
 私ヌルボがその記事で注目したのは、犬ではなく韓国人の海外養子について記されている以下の部分です。

 私は13歳の時家族と一緒にアメリカに来てミネソタ州で育った。当時ミネソタ州にはアメリカ人家庭の養子となった韓国の子供たちがとても多くいて、私も時々養子と思われたりした。・・・・
 1998年、金大中大統領は、海外養子に対して公式謝罪したことがある。・・・・
 6•25戦争の後は、深刻な経済的困難のため、海外養子がやむを得ない選択だっただろう。以後70〜80年代には未婚のカップルの赤ちゃんを他国に送ったりして海外養子の流れは続いた。このように海外に養子に行った子供たちが総計17万人を越えるが、世界1位だという。しかし、今経済的困難は理由にならない。韓国はすでに世界10位圏の経済大国ではないか。

 先のドキュメントの事例を考えると、たしかにほとんど奇跡に近い幸運であることは間違いないとしても、上記のように韓国人入養児(←韓国での用語)の数が「総計17万人を越えて世界1位」という点に着目すれば、そんな偶然の海外養子の双子同士の出会いが韓国人だったということは確率的には高いということになります。

 韓国では、ソウル五輪の頃から国内外で「児童輸出国」という批判に直面してきて、その後(とくに21世紀に入ってから)諸施策がとられるようになってきました。たとえば国内に4団体あるという海外養子斡旋団体が、最初から外国にではなくまず国内での養子斡旋を優先するとか、シングルマザーへの支援を強化するとか・・・。その成果(?)か、2009年の「ハンギョレ」の記事(→コチラ.韓国語)によると、1998年には年間2443人だった海外養子の数は2008年には1250人に減り、グアテマラ・中国・ロシア・エチオピアに続いて5位に後退しています。
 その後2011年に養子縁組特例法が制定され(翌年施行)、それまで養子縁組機関の判断でマッチングし委託していたのが、赤ちゃんを養子に出す場合には出生届を義務化し、裁判所が養子縁組を最終決定するようにしました。そして2013年韓国はようやく児童の基本権を最重視するハーグ国際養子縁組条約に加盟しました。(91番目の加盟国) しかし「中央日報(日本語版)」の記事(→コチラ)が指摘するように課題は依然多く、また新たな問題も生じているようです。

 そこで、もう1つのドキュメンタリー映画を紹介・・・となるのですが、とりあえずここで一区切り。

 <嫌韓>に直結しやすいネタですが、そういうつもりはありませんのでご承知おきを。(蛇足ではありますが・・・。)

 ★韓国の海外養子(入養児)については、本ブログでも2度映画関連でけっこう詳しく書いたことがありました。「冬の小鳥」の記事(→コチラ)と、「はちみつ色のユン」の記事(→コチラ)です。

 ★参考:<日刊サイゾー>の記事「実は“児童輸出大国”だった!? 韓国で「海外養子」が多いワケ」 →コチラ



 ★昨年10月の「中央日報(日本語版)」(→コチラ)では、中央日報系のTV局JTBCのトークバラエティ番組「非頂上会談」出演者のイタリア人モンディさんが、イタリアから母国訪問に来韓した海外養子の通訳&案内をしたこととともに、「特に先進国の政府は養子縁組の成功談を広報することよりも、子供たちを養子縁組させる必要性そのものをできるだけなくす努力をしなければならないと思う。困難な状況のために養子縁組させる必要ができれば、海外よりも同じ国で養子縁組をさせるのが理想的な解決策であろう」と正論を記しています。
 そうそう。フランスで大臣になった女性とか、スポーツで注目されている人とか「成功事例」はしばしば韓国で報道されたりしていますが、その反対の事例もかなりあるのでは? 韓国をはじめとするメディアはそれをむしろ探るべきでしょう。

「貧困のため」よりも大きな理由は? 韓国の海外養子、赤ちゃんポストをめぐる事情②

$
0
0
 1つ前の記事では「Twinsters ~双子物語~(트윈스터즈)」というドキュメンタリー映画と、それに関連して韓国の海外養子について「近年減ってきてはいるが課題は依然多く、また新たな問題も生じている」といったことを書きました。

 今回は、それと関連して「ドロップ・ボックス(드롭박스)」というもう1つのドキュメンタリー映画を紹介します。今年5月から韓国で上映され、観客・映画評論家から非常に高い評価を受けているアメリカ・韓国合作の作品で、監督はアメリカのブライアン・アイヴィー監督です。
 タイトルの「ドロップ・ボックス」とは、2009年ソウル市冠岳区蘭谷洞にある主サラン共同体教会に設けられた韓国最初の赤ちゃんポストのこと。日本で熊本市の慈恵病院というカトリック系の病院に「こうのとりのゆりかご」という名称で赤ちゃんポストが開設されたのが2007年ですからその2年後です。つまり諸事情のため育てることのできない新生児を親が匿名で特別養子縁組をするため韓国では最初に設置されたものです。(※一般的には<ドロップ・ボックス>ではなく<ベイビー・ボックス(베이비박스)>という。)
 この作品はそこのイ・ジョンナク牧師の話です。といっても、内容は彼の日常よりも子どもたちに重点が置かれています。薬を服用していた女子中学生が産んだ子供とか、障碍を持った子供とか・・・。
 (※ベイビー・ボックスはその後もう1ヵ所京畿道軍浦市のセ(新)カナアン教会に設置され、現在はその2ヵ所とのこと。)

 実はこの映画も私ヌルボは観ていません。しかしいろいろ関連情報を探して読んでみると、国際養子の問題とも関連する諸問題があることが見えてきました。
 まず驚いたのは「2009年の開設以来約800人の命を助けた」というその数の多さです。日本では2007年の運用開始から8年間で合計112人とのこと。ということは、なんと日本の約10倍にもなるではありませんか!
 (ここで「なんだ、海外養子の多さといい赤ちゃんポストといい、韓国人はずいぶん無責任だな」と<嫌韓>方面に直行するのは早計に過ぎます。)

 右の表を見ればわかるように、この韓国のベイビー・ボックスに託された赤ちゃんの数は最近とくに急増しています。以下その背景を探ってみました。

 上述のように、この「ドロップ・ボックス」という映画に対する評価は高く、<NAVER映画>でネチズン90人の平均評点が9.32、観客の評点は9.91に上り、コメントも好意的なものばかりです。しかし世論は必ずしもベイビー・ボックスに肯定的なものが大多数とはいえないようです。つまり「赤ちゃんを捨てることを助長するような環境を作ってはいけない」というのがその理由です。

 政府もまたベイビー・ボックスに否定的です。というのは、子どもの権利条約やハーグ国際養子縁組条約に示された「子どもが自分の親について知りたいと思うのは当然の権利」という理念を重視して前の記事でも記したように養子縁組特例法(2012年)を制定し、養子縁組に際しては出生届等の手続きを義務づけたわけですから、そうした必須の手続きを経ないベイビー・ボックスは認められないというものです。ただ法的な問題等のため強制的な閉鎖には乗り出していませんが・・・。

 ところが、依然として未婚の母に対する差別が深刻な社会で養子縁組の手続きのハードルを高くすると、当の未婚の母はベイビー・ボックスの他にどんな選択肢があるのでしょうか?
 なんらかの形で赤ちゃんを「遺棄」するか、自分あるいは子どもの命を絶つといったはるかに悲惨なことになってしまいそうです。
 ※ここで私ヌルボ、업둥이(オプトゥンイ)という言葉があることを初めて知りました。(主として子どものいない老夫婦等の)家の前に捨てられた赤子のこと。「ふつうその家で育てられることになる」そうです。しかし、この頃は人間の赤ちゃんよりももっぱらイヌやネコについて用いられている言葉のようです。

 さて、「依然として未婚の母に対する差別が深刻な社会」と書きましたが、具体的にはどのようなものでしょうか? 
 たとえば2013年4月の「ハンギョレ」の記事(→コチラ.韓国語)。
 (たぶん役場の窓口で、担当職員が)「子供のお父さんは? え、未婚の母ですって?」と声を高めると、人々の視線が突き刺さった。
・・・とか、
 1人で出産の準備のために役場と保健所を行き来していると、行く先々で「なぜシングルマザーになったのですか?」という質問が続いた。
・・・等々。
 統計庁の調査資料によれば2000年に11万7千人だったシングルマザーは2010年に16万6千人余りと5万人近く増えましたが、2009年に430人の未婚の母を対象に行った調査では、彼女たちに対する偏見・差別は「非常に深刻=30.7%、深刻=58.3%、ほとんどない=9.0%、全然ない=2.0%」と全体の9割は「深刻だ」と答えています。
 この「ハンギョレ」の記事では、4月の臨時国会で包括的差別禁止法が可決されれば、シングルマザーも差別と偏見から保護を得るようになり、ある組織の代表は「法が成立すると、教育課程の中でも未婚父・母の家を多様な家庭の1つの形として提示したり、企業は未婚の母をむやみに解雇できなくなり、10代の未婚の母は学校から追い出されず学習権を保証される等、制度が改善されるだろう」と予想しています。
 ところが2016年1月の「女性新聞」の記事(→コチラ.韓国語)を読むとあいかわらず厳しい状況は続いているようで、仕事に就いている人は51%に留まっています。シングルマザーであることを理由に就職できなかったり、あるいは保育施設の問題で仕事と育児の両立が困難だったり・・・。そのうえ公的な支援が不十分なこともあって経済的に追いつめられている人が大半のようです。
 日本でも幼い子どもを抱えて働く女性の問題がクローズアップされましたが、韓国の場合は差別・偏見、公的支援のレベルの問題等もあってさらに過酷な状況のように思われます。

 先に<嫌韓>方面の人に「海外養子」に出されたり赤ちゃんポストに託される子どもの数だけで韓国を非難するのは早計と書きました。ヌルボ思うに、批判するとしたらその数ではなく、シングルマザーに対する偏見・差別ですね。

 前の記事と続けて韓国の海外養子と赤ちゃんポスト関係の記事をいろいろ読み、考えたことを書きました。その中でもう1つ見逃してはならない事実を知りました。それはどちらのケースもその子どもたちの2割以上が障碍児ということです。「なんなんだ、この数字は!?」という驚き+憤りが・・・という反応は当然でしょうが、この件についてもいずれ何らかの形で背景を探ってみたいと思います。

★[付記①]
 日本財団が行っているプロジェクトの1つに<ハッピーゆりかごプロジェクト>があります。特別養子縁組や里親制度の普及をめざすというものですが、そこのサイト内に「韓国の未婚母支援、養子縁組を学ぶ旅」と題した2回続きの記事が掲載されています。その①(→コチラ)は「未婚母支援の団体でインタビュー」、その②(→コチラ)は「ベビーボックスと養子縁組機関でインタビュー」という内容で、その②では「ドロップ・ボックス」がある主サラン共同体教会を訪ねて取材した内容をいろいろ具体的に記しています。
 その①ではエランウォン(園? 院?)というシングルマザー支援施設を取材しています。民間団体による支援等は韓国の方が進んでいる面もあるようですね。調べてみるとエランウォンは1960年エリノア・ヴァン・リロップ(韓国名パン・エラン. 1921~2015)というアメリカ人女性宣教師が韓国で初めて開設した未婚母子支援施設とのことです。

★[付記②]
 日本の赤ちゃんポストをめぐっては、NHK<クローズアップ現代>の2015年5月の記事(→コチラ)参照。

※養子問題とか出生の秘密というと韓国ドラマではおなじみのネタですが、それも上記のような歴史的社会的状況とと関係がありそうですね。

※もしかしたら、未婚男女(とくに10代)の性意識・性行動」といったことも関係ありそうですが、そこまで知ら減るとなると収拾がつかなくなりそうなのであえて踏み込みませんでした。

韓国内の映画 NAVER映画の人気順位 と 週末の興行成績 [9月16日(金)~9月18日(日)]

$
0
0
 この夏、韓国映画業界は期待の大作が次々にヒットしてずいぶん盛り上がりました。8月末から今月にかけてその総括記事が各紙に載っています。
 9月19日の「朝鮮日報」の記事(→コチラ.韓国語)は見出しからして「今夏だけで観客3600万人・・・韓国映画が完勝した理由は」ですからねー。7~8月の総観客数5568人中、韓国映画は3611万人で65%を占めたとのこと。自国映画占有率が20~40%くらいで推移している仏・伊・英の各国と比較したグラフも載っています。まあ以前から全世界で自国映画のシェアが50%を越える国は米国、インド、中国、日本、韓国の5ヵ国だけなんですけどね。で「完勝の理由」というのは大企業(ロッテとCJ)が映画業界に参入し、後発のショーボックス、NEWも含め4大配給会社の競争が好結果を生んでいる(製作方式・運営の透明化等)とのこと。ただ、近ごろは観客動員1千万人を超える<大当たり(テバク)>映画は増えているが、300~500万人程度の<中当たり(チュンバク)>が減っているのが残念とか。

 その今夏の<大当たり>映画ですが、これまで本ブログでも紹介してきた次の画像の4作品です。
 上段左が「釜山行き」、右が「仁川上陸作戦」、下段左が「徳恵翁主」、右が「トンネル」と、7月20日の「釜山行き」を皮切りに以後この順で4週続けて順次公開されました。
 これらについて9月7日の「朝鮮日報」に「今夏の韓国映画ビッグ4、最終勝者は?」という見出しの記事がありました。(→コチラ.韓国語)。右の表はその記事の中にあったものの一部。<最終勝者>は、観客動員数で唯一1千万人超えた「釜山行き」が「おもしろさ」でも他を圧倒して文句なしといったところ。「韓国初のゾンビ映画」ということですが、韓国社会の実相とある意味相性がいいのかも。あのセウォル号事件で船が沈みつつあるのに「だいじょぶだからそのまま部屋にいなさい」と放送されたのと似たようなことは昨年のMERSコロナウイルス蔓延や、今回の地震騒ぎの中でもある高校でもあったそうだし・・・。以前→コチラで紹介したチョン・ユジョンの「28」という伝染病蔓延パニックを描いたホラー小説とも関連性がありそうです。
 他の3作について。「仁川上陸作戦」は<クッポン(국뽕)>(=過度の愛国主義)映画といわれてました。たまにこの手の作品は登場し、それなりに集客力はあるようです。「徳恵翁主」は、対馬の元領主・宗家の当主と政略結婚し、生涯の大半を心の病とともに送った悲劇のお姫様(高宗の娘)を独立運動の支援者のように描いた<歴史歪曲>が一部で取り沙汰されました。突然の崩落事故でトンネル内に閉じ込められた男の話「トンネル」も、救出劇だけでなくやはり政治やメディアの対応も含めたパニック映画。事実に基づく「チリ33人 希望の軌跡」とは雰囲気は違う感じ。・・・って、私ヌルボ、以上4作品全然観てないんですけど。(無責任!)
 あ、一番印象に残った俳優は「トンネル」のハ・ジョンウを抑えて「釜山行き」のマ・ドンソクというのは「!」 たぶんどちらも日本公開ありそうな感じ。早く観てみたいものです。「仁川~」は日本公開どうかな? 「徳恵翁主」はなさそう?

 「朝鮮日報」の「封切映画 ぴったり10字評」は先週掲載されませんでした。

         ★★★ NAVERの人気順位(9月20日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
             ※評点の後の( )は採点者数
①(1) Bringing Tibet Home ~故郷を引き寄せて~(韓国等)  9.42(72)
②(3) 影たちの島(韓国)  9.38(84)
③(4) ドロップ・ボックス(韓国)  9.32(90)
④(5) KING OF PRISM by PrettyRhythm(日本)  9.30(920)
⑤(6) 私たち(韓国)  9.24(911)
⑥(-) 一死覚悟(韓国)  9.16(240)
⑦(7) オーヴェという男  9.12(1,264)
⑧(-) マイケル・ムーアの世界侵略のススメ  9.03(115)
⑨(-) サフラジェット  8.96(425)
⑩(8) 劇場版 響け!ユーフォニアム~北宇治高校吹奏楽部へようこそ~(日本)  8.92(106)

 入れ替わりや順位変動はありましたが、本ブログ新登場の作品はありません。

     【記者・評論家による順位】
             ※評点の後の( )は採点者数
①(2) アガシ(韓国)  7.68(18)
②(3) 私たち(韓国)  7.66(14)
③(4) ドロップ・ボックス(韓国)  7.66(1)
④(5) 密偵(韓国)  7.50(10)
⑤(6) ナショナル・ギャラリー 英国の至宝  7.50(4)
⑥(8) ディーブ  7.35(5)
⑦(9) トンネル(韓国)  7.21(14)
⑧(-) ヒッチコック/トリュフォー  7.17(6)
⑨(-) 影たちの島(韓国)  7.14(7)
⑩(-) 釜山行き(韓国)  7.10(17)

 コチラのランキングも入れ替わりや順位変動はありましたが、新登場の作品はありません。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績9月16日(金)~9月18日(日) ★★★

         「密偵」の独走が続く
【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・週末観客動員数・・・累計観客動員数・・・累積収入・・・上映館数
1(1)・・密偵(韓国)・・・・・・・・・・・・・・9/07 ・・・・・・・・・2,061,343 ・・・・・・・・・6,048,476 ・・・・・・・・49,974・・・・・・1,368
2(44)・・ベン・ハー・・・・・・・・・・・・・・9/14・・・・・・・・・・・594,486・・・・・・・・・・・897,235 ・・・・・・・・・7,564・・・・・・・・717
3(新)・・マグニフィセント・セブン・・9/14 ・・・・・・・・・・391,115・・・・・・・・・・・679,524 ・・・・・・・・・5,752・・・・・・・・579
4(2)・・古山子、大東輿地図(韓国)・・9/07 ・・・・・・・・297,608・・・・・・・・・・・852,257 ・・・・・・・・・6,896・・・・・・・・536
5(3)・・アリス・イン・ワンダーランド・・9/07 ・・・・・・・・134,291・・・・・・・・・・・447,619 ・・・・・・・・・3,639・・・・・・・・392
       ~時間の旅~
6(46)・・ロック・ドッグ ・・・・・・・・・・・9/14・・・・・・・・・・・119,044・・・・・・・・・・・168,601 ・・・・・・・・・1,337・・・・・・・・399
7(4)・・月光宮殿(韓国) ・・・・・・・・・9/07・・・・・・・・・・・・48,067・・・・・・・・・・・138,018 ・・・・・・・・・1,047・・・・・・・・275
8(8)・・ロビンソン・クルーソー ・・・9/07・・・・・・・・・・・・42,447 ・・・・・・・・・・114,860 ・・・・・・・・・・・885・・・・・・・・181
9(5)・・おもちゃが生きている・・・・9/07・・・・・・・・・・・・42,281・・・・・・・・・・・131,232 ・・・・・・・・・1,026・・・・・・・・216
10(34)・・アイカツ!ミュージックアワード・・9/14・・・37,470・・・・・・・・・・・・61,382 ・・・・・・・・・・・417・・・・・・・・344
       みんなで賞をもらっちゃいまSHOW !(日本)
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 9月14~18日は秋夕で5連休とあって映画館に足を運んだ人が多く、全体的に数字が増えていますが、とくに「密偵」は週末だけで200万人を超えて独走状態。累計でも600万人突破。この勢いがどこまで続くか注目。
 今回の新登場は2・3・6・10位の4作品です。
 2位「ベン・ハー」は、もちろんアカデミー賞11部門を受賞したあの1959年のウィリアム・ワイラー監督作品のリメイク。あれを観た感動を知る人は、どんなに巧く作っても超えられないと思うのでは? 私ヌルボもその1人。「ベン・ハー」と聞いただけであのミクロス・ローザ作曲の美しいテーマ曲が甦ってきますぞよ。韓国題は「벤허」。日本公開は来年です。
 3位「マグニフィセント・セブン」は、「七人の侍」のリメイクというか、いや「荒野の七人」のリメイクか。西部劇だし・・・。やっぱりハリウッドは作品の素材が払底してるのかな? 志村喬→ユル・ブリンナー、そして半世紀以上経って今度はデンゼル・ワシントンか。彼ももう60代か、ふうん。最初に観た「遠い夜明け」は本当に感動的だったな・・・。と、これまた感懐に耽ってしまいます。韓国題は「매그니피센트 7」。日本公開は来年1月27日です。
 6位「ロック・ドッグ」は、アメリカ・中国合作のアニメ。主役はワンちゃんのボディ。臆病な羊が集まって暮らす雪の村の警備犬ボディは 歌っている時が一番幸せ。 お父さんのカンパと狼から村を守っていたある日、たまたま空から落ちラジオを拾うと世界的トップスターのアンガスの声。それに勇気を得て町に行き、紆余曲折の末に偶像アンガスに会ったものの喜びも束の間、みすぼらしい姿の彼は門前払い。さらに雪の村を狙うオオカミの群れの標的にされて追われして踏んだり蹴ったり。まあそこからの逆転はお約束ですから、たぶん。
韓国題は「드림 쏭(ドリーム・ソング)」。日本公開はない、かな?
 10位「アイカツ!ミュージックアワード みんなで賞をもらっちゃいまSHOW !」は、「2012年にデジタルカードゲームとしてリリースされ、テレビアニメ版も子どもたちから人気を集めている」というもので、女子小学生を中心に人気なのだそうですけど、私ヌルボ今初めて知りましたがな。遠い世界だなー。<アイカツ>は何かと思ったら<アイドル活動>のことなのか、はあ~・・・。韓国題は「아이엠스타 뮤직어워드」です。

【多様性映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(2)・・ロビンソン・クルーソー・・・・・・・・・・9/07・・・・・・・・・・・・・・42,447 ・・・・・・・・・・114,860・・・・・・・・・・・・・885 ・・・・・・・・181
2(1)・・おもちゃが生きている ・・・・・・・・・・9/07・・・・・・・・・・・・・・42,281 ・・・・・・・・・・131,232・・・・・・・・・・・1,026 ・・・・・・・・216
3(8)・・カフェ・ソサエティ・・・・・・・・・・・・・・・9/14・・・・・・・・・・・・・・33,641 ・・・・・・・・・・・56,796・・・・・・・・・・・・・493 ・・・・・・・・188
4(3)・・最悪の1日(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・8/25・・・・・・・・・・・・・・・4,050・・・・・・・・・・・・75,797・・・・・・・・・・・・・600 ・・・・・・・・・36
5(6)・・アイアムアヒーロー(日本)・・・・・・・9/21・・・・・・・・・・・・・・・3,689 ・・・・・・・・・・・10,332・・・・・・・・・・・・・・72 ・・・・・・・・・22

 また先週のデータと矛盾が・・・。いまだに理由がわからず。
 5位「アイアムアヒーロー」だけが初登場ですが、日本映画でもこれは未見なのでなんとも・・・。ゾンビ映画というと「釜山行き」の方に意識が向かってしまうもので・・・。韓国題は「아이 엠 어 히어로」です。

多角的に見る韓国映画「暗殺」(ネタバレほとんどナシ) ④判別がむずかしい<史実>と<虚構>の間

$
0
0
 → 多角的に見る韓国映画「暗殺」(ネタバレほとんどナシ) ①<進歩系>映画と<保守系>映画
 → 多角的に見る韓国映画「暗殺」(ネタバレほとんどナシ) ②昨年来日本統治期を背景とした作品が増えている
 → 多角的に見る韓国映画「暗殺」(ネタバレほとんどナシ) ③韓国では、日本統治期の見方が変わりつつある(?)

 前回の記事から3ヵ月以上も経ってしまいました。なんと言うか、・・・なんとも言えません。じつは、このシリーズの本論というべき部分はここからなんですけどね。つまり今までは序論。(←なんてこった!) まあその、今回のテーマ自体がむずかしくて・・・(汗)

 で、今回のテーマの<史実>と<虚構>の間なんですが、映画では巧く「接ぎ木」されているわけだから、ふつうの韓国人でも見分けがつかない点が多々あります。いや、それよりも映像化されると、なんとなくフィクション部分も事実と思われそうなので、それが心配。
 
 てなわけで、一応わかりやすいところで、主な登場人物が実在する人物か否かについて。

 まず、チョン・ジヒョン、ハ・ジョンウ、イ・ジョンジェ等の人気俳優が演じた登場人物は皆架空の人物。あ、イ・ジョンジェが扮したヨム・ソクチンという人物は廉東振(ヨム・ドンジン.1902〜50)(→ウィキペディア)がモデルという話が・・・。名前も似てるし、そういうことでしょう。経歴等は重なる点もある程度かな?
 
 1911年の冒頭シーンで登場する寺内正毅はもちろん初代朝鮮総督。そして李完用は朝鮮を日本に売った親日派、というよりも第1の売国奴!として有名。またこのシーンの舞台のソンタクホテル(Sontag Hotel.손탁호텔)(右画像)も徳寿宮の裏手(西)に実在したホテル。
 ※このホテルの名は支配人のドイツ人女性アントニット・ゾンタクの名前から命名。彼女は閔妃(明成皇后)・高宗と密接な関係があり、露館播遷を仕切ったりもした人物で、このホテルも高宗の力添えで1902年建てられたが1923年に撤去し新築。しかし朝鮮戦争で焼失した。
 ・・・というわけで、人物と建築物は実在。でも冒頭シーンで展開される<活劇>はフィクションです。
 またこのシーンで「この映画では李完用が流暢に日本語を話すが、実際の李完用は日本語があまりできなくて、常に通訳に依存しなければならなかった。ただし英語は非常に流暢で、日本の官僚とはだいたい英語で会話したという」と指摘しているのは<ナムウィキ>の「暗殺」の項目(→コチラ)。

 登場する歴史上の人物で、一番知られている人物が金九。李承晩が批判されてアメリカに戻った後の大韓民国臨時政府のリーダー。(1940~47年は主席。)
 私ヌルボ、今年6月に龍山からわりと近い孝昌(ヒョチャン)公園に行ってきました。
 公園の入口付近の横断幕を見ると・・・。
 「孝昌公園に誰がいらっしゃるかご存知ですか? 大韓民国国民なら知っていなければなりません!」と記されています。
 公園内には金九だけでなく、李奉昌(イ・ポンチャン)等、他の独立義士たちの墓もあります。
 そしてこの建物は・・・。
 金九についての資料・事蹟等を展示している白凡記念館。おりしも校外学習で見学に訪れた女子高の生徒たちが10時の開館を待っていました。(「白凡(ペクボム)」は金九の号。)

 映画の最初の方で、その金九の登場シーンがあります。1933年、場所は中国の杭州。なぜ杭州なのかというと、1919年上海で結成された臨時政府は、満州事変以降の日本の侵略によって32年以降は光復(終戦)時の重慶まで各地を転々としていて、32~35年は杭州にあったから。
        白凡記念館の階段。これによると1933年に嘉興に移っていますが・・・。
 そして、この杭州のシーンで金九と話をしている人物が金元鳳(キム・ウォンボン.김원봉)。(特別出演のチョ・スンウが儲け役!)
 おー、彼こそがこの記事のメイン!・・・のはずだったのに、もう字数が・・・。

 ということで、金元鳳については次の記事に回すことにします。ふー。
 その代わりに、上述の<ナムウィキ>の「暗殺」の項目(→コチラ)と、→コチラ)の韓国記事に書かれていたこの映画と史実をめぐるトリビアの主なものを列挙しておきます。

○チョン・ジヒョン等の話す言葉が現代口語で、植民地時代に合っていない。
○上記の冒頭の<活劇>シーンと一応ダブるのは、1910年12月27日、安重根のいとこの安明根(アン・ミョングン)が寺内正毅総督暗殺を計画したが事前に発覚し逮捕された事件。つまりあんな<活劇>はなかった。
○満州韓国独立軍の駐屯地でのアン・オギュン(チョン・ジヒョン)の服が新品のようにキレイすぎ、飢えていた痕跡もない。また独立軍は1921年6月の自由市惨変(→ウィキペディア)で壊滅し、東北抗日聯軍(→ウィキペディア)も1936年中国共産党の指導の下に結成されたことを勘案すれば、中隊レベル(140人程度)が満州に駐屯することも難しい。とても日本軍と交戦をする状況ではなかった。
○アンオギュンたち3人が記念写真を撮った場面で壁にかかっていた太極旗は光復以降の太極旗で、当時のものではない。
○アン・オギュンたち3人が京城駅に到着した時。午後6時の時報とともに国旗(日章旗)下降式を行うといったことはなかった。(「国際市場で逢いましょう」の1場面を想起させる。) 駅構内の放送が不自然、というか、当時はそのような放送設備はなかったはず。また京城駅駅名の英字表記がKEIZYOとなっているが、日本の駅名表示方式(ヘボン式)ではKEIJÔが正しい。
○三一独立運動の時はわからないが、1930年代に日本の軍人が京城の街中で民間人を即決銃殺する場面は論外。いくら日本軍人でも殺人罪で処罰されるだろう。
○関東軍の旭日旗が陸軍ではなく海軍の旭日旗になっている。
○いくら輸入車が多かったにしても、すべての車両が左ハンドルというのは問題。日本軍のトラックまで左ハンドルということはないだろう。

 ・・・いやー、細かなところまでチェックを入れる人は日韓ともにけっこういるものです。旭日旗の陸軍と海軍の違いなんて、日本人のどれくらいが知っているのだろう? あ、ヌルボのサークル仲間諸氏は知ってそうだな。

韓国内の映画 NAVER映画の人気順位 と 週末の興行成績 [9月23日(金)~9月25日(日)]

$
0
0
 公開初日or2日目に映画を観るのは最近あまりないことですが、いくらなんでも「君の名は。」のようなことはなかろうと25日観に行ったのが<ハドソン川の奇跡>。やっぱりイーストウッド監督にハズレなしです。主人公、そしてイーストウッド監督からも思い起こされるのは<矜持(きょうじ)>という言葉。あえて欠点( ?)をあげるとすれば、きちんとしすぎていることかな?

 今日(27日)は久しぶりの青空。家を出ると今シーズン初めてのキンモクセイの香りが漂ってきました。
 例年この時期になると、ぼちぼち<コリアン・シネマ・ウィーク>の情報が出てくるのでは? 10月後半の催しだからまだ早いのかな?
  [9月28日午後3時の追記] 韓国文化院のサイトで<コリアン・シネマ・ウィーク 2016>の記事が今載りました。→コチラです。上映スケジュールや作品紹介等々。私ヌルボのコメントはまた来週。

 昨年は8月に開催された<新大久保映画祭>。今年は11月3~7日なのか。しかし、→公式サイトを見ると8作品中6作品はもう観てるし、ちょっと以上に期待感が沸いてこないなー・・・。
 そして<東京フィルメックス>は11月19日~27日とちょっと先で、上映作等はまだよくわかりませんが、→コチラの「中央日報(日本語版)」の記事によると韓国映画「私たち」は招待されているとのことで、これは期待大!
 あ、<東京国際映画祭>というのもあったか。ここらへんは→シネマコリアをご参照くださいということで。そのtwitterの方(→コチラ)。韓国映画ファンの方々はちゃんとフォローしましょう。

 昨年特別上映会で観たセウォル号関係のドキュメンタリー「ダイビング・ベル」が10月1日から横浜のシネマ・ジャック&ベティ(→コチラ)で公開。例の釜山国際映画祭の紛糾のモトとなった作品です。昨年見逃した方はどうぞ。
   「朝鮮日報」9月23日掲載の「封切映画 ぴったり10字評」 (ハングル文も訳文も10字です。)。)  「ウルフパック」
   映画で育った子供たち ★★★☆


 「僕一人で休暇」
   かくも切ない執着とは・・・ ★★★

 「僕一人で休暇」は韓国のロマンス。カンジェ(パク・ヒョックォン)の趣味は写真を撮ることですが、独りで楽しむ趣味なので妻(キム・スジン)は不満を募らせています。済州島に独り写真を撮りに行ったカンジェは、そこで仲良く見える家族にカメラを向けると、そこにいたのは初恋の相手シヨン(ユンジュ)。シヨンを忘れられなかったカンジェは、10年間彼女を追い、ひそかに見守り続けていたのでした。その後会社にも家にもシヨンの姿が見えなくなり、不安になったカンジェはシヨンの家のベルを押してしまいます・・・。「ウルフパック」は以下の記事の中で紹介しています。
         ★★★ NAVERの人気順位(9月27日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
             ※評点の後の( )は採点者数
①(1) Bringing Tibet Home ~故郷を引き寄せて~(韓国等)  9.39(75)
②(2) 影たちの島(韓国)  9.38(87)
③(4) KING OF PRISM by PrettyRhythm(日本)  9.30(1,042)
④(5) 私たち(韓国)  9.23(926)
⑤(7) オーヴェという男  9.12(1,274)
⑦(-) 映画 ビリギャル(日本)  9.12(245)
⑧(8) マイケル・ムーアの世界侵略のススメ  9.03(145)
⑨(-) 国家代表2(韓国)  8.79(4,587)
⑩(-) ニュースの真相  8.76(174)

 今回の初登場は⑦と⑩の2作品です。
 ⑦「映画 ビリギャル」は、私ヌルボ観てないのでなんとも・・・。設定自体にほとんど興味がわかなかったので・・・。<ぴあ映画生活>に「頭の悪い女子高生が頑張って慶大に合格する話。へー、だから何?」というクチコミがありましたが、そこまではけなしませんが・・・。(慶大合格よりも、達成感・自信感が得られるのはいいと思います。) 韓国題「불량소녀, 너를 응원해!(不良少女、おまえを応援する)」です。原題の語感までは翻訳不能か?
 ⑩「ニュースの真相」は、日本でも8月に公開され、現在も上映中。韓国題は「트루스」です。

     【記者・評論家による順位】
             ※評点の後の( )は採点者数
①(-) キャロル  8.96(13)
②(1) アガシ(韓国)  7.68(18)
③(2) 私たち(韓国)  7.66(14)
④(4) 密偵(韓国)  7.50(12)
⑤(5) ナショナル・ギャラリー 英国の至宝  7.50(4)
⑥(6) ディーブ  7.35(5)
⑦(7) トンネル(韓国)  7.21(14)
⑧(-) ウルフパック  7.20(5)
⑨(8) ヒッチコック/トリュフォー  7.17(6)
⑩(9) 影たちの島(韓国)  7.14(7)

 ⑧「ウルフパック」だけが今回の新登場です。サンダンス映画祭ドキュメンタリー部門を受賞したアメリカの作品です。ある日ニューヨーク・マンハッタンに、腰までの伸びた髪、顔に仮面をかぶったまま不安そうに見回しながら怪しい行動を見せる少年が現れました。驚くべきことに、その15歳の少年ムクンダ・アングロは、家の外に初めて出てきたと言い、また自分を含め7人兄妹が家族以外の人と話をしたこともないと告白します。低所得者用アパートに住む彼らは両親の教育方針により彼らは14年間アパートから出ることを許されず、その間5千本以上の映画を見てお気に入りの作品の真似などをして遊んだりしていたとか・・・。たまたまこのドキュメンタリーの撮影が入ったことで、兄弟たちは外へ出る機会を増やしていくのですが・・・。今年5月観た「ルーム」もそうでしたが、いまもどこかで長く監禁されている人が何人もいそうな気がしますね。オフィシャル・トレーラーは→コチラ。韓国題は「더 울프팩」。日本公開は未定のようです。あ、Netflixで見られるとのことです。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績9月23日(金)~9月25日(日) ★★★

         「密偵」が3週連続トップ
【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・週末観客動員数・・・・・累計観客動員数・・・・・・累積収入・・・・上映館数
1(1)・・密偵(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9/07・・・・・・・・・・・458,767 ・・・・・・・・・・・6,895,161 ・・・・・・・・56,657・・・・・・・・・1,105
2(2)・・ベン・ハー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9/14・・・・・・・・・・・191,514 ・・・・・・・・・・・1,226,406 ・・・・・・・・10,118 ・・・・・・・・・・653
3(3)・・マグニフィセント・セブン ・・・・・・・9/14・・・・・・・・・・・104,731・・・・・・・・・・・・・880,101 ・・・・・・・・・7,331・・・・・・・・・・・543
4(19)・・アイアムアヒーロー(日本)・・・・9/21・・・・・・・・・・・100,632・・・・・・・・・・・・・147,120 ・・・・・・・・・1,272・・・・・・・・・・・263
5(4)・・古山子、大東輿地図(韓国)・・・・9/07・・・・・・・・・・・・49,613 ・・・・・・・・・・・・・948,879 ・・・・・・・・・7,631・・・・・・・・・・・394
6(28)・・ブリジット・ジョーンズの日記・・9/28 ・・・・・・・・・・・41,226 ・・・・・・・・・・・・・・47,411・・・・・・・・・・・416・・・・・・・・・・・349
       ダメな私の最後のモテ期
7(新)・・ハドソン川の奇跡 ・・・・・・・・・・・9/28・・・・・・・・・・・・41,118・・・・・・・・・・・・・・43,135・・・・・・・・・・・400 ・・・・・・・・・・・343
8(5)・・アリス・イン・ワンダーランド・・・・9/07・・・・・・・・・・・・30,897・・・・・・・・・・・・・502,167 ・・・・・・・・・4,066・・・・・・・・・・・267
       ~時間の旅~
9(6)・・ロック・ドッグ ・・・・・・・・・・・・・・・・・9/14・・・・・・・・・・・・29,861・・・・・・・・・・・・・204,326 ・・・・・・・・・1,610・・・・・・・・・・・314
10(新)・・対決(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・・・9/22・・・・・・・・・・・・15,981・・・・・・・・・・・・・・23,089 ・・・・・・・・・・・180・・・・・・・・・・・366
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 秋夕の連休が終わって客足激減は致し方のないところか。「密偵」もかなり勢いが鈍りましたが、3週連続トップで累計700万人は目前に。
 今回の新登場は6・7・10位の4作品です。
 6位「ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期」は、人気シリーズの第3作。テレビ局の敏腕プロデューサーになったブリジット(レニー・ゼルウィガー)ですが、独身のままでいつしかアラフォー。ある日彼女はハンサムで性格もいいIT企業の社長ジャック(パトリック・デンプシー)と出会い、以後急接近。その一方でかつて愛した男マーク(コリン・ファース)とも再会し、結局2人の男性の間で揺れ動く彼女・・・。韓国題は「브리짓 존스의 베이비」。日本公開は10月29日です。
 7位「ハドソン川の奇跡」は、日本では少なくとも公式日程では韓国より先に9月24日に公開れてます。韓国題は「설리:허드슨강의 기적」と、「ハドソン川の奇跡」」の前に主人公の名前サリーが入っています。原題はその「SULLY」だけなんですけどね。
 10位「対決」は、韓国のアクション。就活中といっても就職はとうにあきらめたと達観力している(?)のプンホ(イ・ジュスン)は、タイマンゲームで小遣いを稼ぐのが楽しいという若者。しかし兄のガンホ(イ・ジョンジン)はそんな弟がナサケなくてしかたないという刑事。そのガンホが、ゲームで出会った同士がタイマンゲームで起きた殺人事件を捜査していて現場に出動しますが、残忍な手口で相手にやられてしまいます。プンホは兄の復讐のために犯人を追いかけ、ゲーム会社のCEOハン・ジェヒ(オ・ジホ)にたどり着きますが・・・。原題は「대결」です。

【多様性映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(5)・・アイアムアヒーロー(日本)・・・・・・・9/21・・・・・・・・・・・・・100,632・・・・・・・・・・147,120 ・・・・・・・・・・・1,272 ・・・・・・・・263
2(3)・・カフェ・ソサエティ・・・・・・・・・・・・・・・9/14・・・・・・・・・・・・・・15,415 ・・・・・・・・・・・94,022・・・・・・・・・・・・・788 ・・・・・・・・120
3(新)・・ボーン・トゥ・ダンス ・・・・・・・・・・・・9/22・・・・・・・・・・・・・・12,631 ・・・・・・・・・・・16,515・・・・・・・・・・・・・113 ・・・・・・・・176
4(1)・・ロビンソン・クルーソー・・・・・・・・・・9/07・・・・・・・・・・・・・・10,371 ・・・・・・・・・・127,690・・・・・・・・・・・・・981 ・・・・・・・・128
5(18)・・映画 ビリギャル(日本)・・・・・・・・・9/21・・・・・・・・・・・・・・・7,617 ・・・・・・・・・・・11,030・・・・・・・・・・・・・・89 ・・・・・・・・128

 今回の新登場は3位と5位の2作品です。
 3位「ボーン・トゥ・ダンス」は、プロのヒップホップダンサーを目指す若者の熱き戦いを描いたニュージーランド映画。地元のダンスチームに所属している青年トゥはプロのヒップホップダンサーを夢見ていました。ある日彼は全国的なダンスチームであるK-Crewのオーディションを受けるのですが、それを裏切りと思って地元チームや親友からは反発を受けてしまいます。複雑な状況の中、トゥはK-Crewのリーダーの彼女に思いを寄せてしまって・・・。この複雑な状況で動く心。トゥが下した決断とは・・・。韓国題は「뉴 스텝업: 어반댄스」。日本では10月1日にDVDが発売されます。
 5位「映画 ビリギャル」については上述しました。

田月仙「禁じられた歌」 = さまざまな理由で禁止された韓国・朝鮮(+日本)の歌を、思いを込めて紹介した好著

$
0
0

 <カリプソの女王>浜村美智子が「黄色いシャツ」 (日本語版)のレコードを出していた(1972年)とは知らなかったなー。他にも知らなかったことが一杯。
 一応知っていたことはザ・フォーク・クルセダーズの「イムジン河」のレコードが発売中止になったおおよそのイキサツ(参照→ウィキペディア)及びその歌詞が「豊かな北から川の向こうの荒れ果てた南の故郷を眺めて嘆く」(2番)という内容ということ。(最近「当事者が「本当の舞台裏」を明らかにする」というキャッチコピーの喜多由浩「『イムジン河』物語 “封印された歌”の真実」(アルファベータブックス)が刊行されましたが未読。) 他には日本文化開放以前の韓国で五輪真弓の「恋人よ」が人気だったということ。しかし、それ以前にいしだあゆみの「ブルー・ライト・ヨコハマ」が韓国でも不法コピーのカセットテープ等で広まり、韓国人がもっともよく知る日本の歌になったとは知りませんでした。

 この「禁じられた歌」(中公新書ラクレ.2008)という本は、在日コリアン2世のソプラノ歌手・田月仙(チョン・ウォルソン)さんが「いろんな事情」で歌うことやレコードの発売等を禁止された歌について多角的な観点から書いた好著です。

 「多角的な観点」というのは次のようなことです。
 まず「朝鮮半島 音楽百年史」と副題にあるように、1910年(韓国併合)から現代までの1世紀の韓国・朝鮮と日本の間の鳥瞰図的な歴史がおのずと見えてくる記述になっていること。
 また、田月仙さん自身がいろんな人に話を聞いたりして積極的に取材をしていること。公演等で訪れた所でたまたま会った人の話だけでなく、自らの興味・関心に沿って目的の場所や人を訪ねたり、本やレコード等の資料を求めたりもしているのです。
 たとえば「アリラン」にしても、映画「アリラン」(羅雲奎監督.1926)について2005年団成社(初めて上映した映画館)に行って映画研究家のチョン・ジョンファさんから説明を聞いたり、中国・延辺では朝鮮族の人の話を聞くだけでなく、北朝鮮レストランで歌を聴いたり、ロシア・ハバロフスクに招かれた時にはその地のカレイスキー(高麗人=韓国人)からロシア語の「アリラン」を聴いたり、ロサンゼルスのコリアタウンにある韓国人の雑貨店主からも話を聞いたり等々・・・。
 もう1つ、この本ならではの視点というのは、田月仙さん自身の歌手としての歩みが記されているるということ。この点については、小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞した前著の「海峡のアリア」(2006年)の方がまさに自伝なのですが、この「禁じられた歌」でもさまざまな思い出が記されています。中でも<歴史的体験>といえるのは、1985年に平壌の音楽祭に招かれて金日成主席の前で独唱したことや長く収容所生活を強いられていた兄たちと再会したこと、あるいは1998年の韓国・金大中政権の時、日本文化の段階的開放が進められている頃に東京都の親善大使としてソウルで公演をするになった彼女は「赤とんぼ」「浜千鳥」「夜明けのうた」の3曲を歌う予定だったのが「夜明けのうた」だけは(歌曲ではなく)大衆歌謡とみなされて許可が下りず、結局「♪あーあー」という声だけで歌ったこと等々。

 このように多彩な内容が、とても読みやすい文章で書かれていることも私ヌルボが良書という大きな理由で、高校生にもぜひ読んでほしいと思います。(「海峡のアリア」の方が<感動本>ですが、コチラは新書で入手しやすいので・・・。)

 私ヌルボ、これらの「禁じられた歌」を「禁じた」のは誰かということで分類・整理してみました。次の通りです。

[Ⅰ] 日本の統治期
 ・民族の独立・抵抗を内包した歌・・・「鳳仙花」
[Ⅱ] 戦後の韓国
 ・「倭色」歌謡=日本的歌謡は放送禁止に・・・「椿娘(トンベクアガシ)」等
 ・日本の歌
 ・北朝鮮の歌、南から北朝鮮に渡った「越北作家」の歌
 ・「運動圏」の歌=軍事政権に反対する民主化運動の側の闘争の歌・・・「朝露(アチミスル)」等
 ・「親日派」の作詞家・作曲家・歌手による歌・・・上記の「鳳仙花」や「故郷の春」の作曲者・洪蘭坡(ホン・ナンパ)、「哀愁の小夜曲」で知られる歌手南仁樹(ナム・インス)等
[Ⅲ] 戦後の北朝鮮
 ・体制の<理念>に合わない歌等、多数
[Ⅳ] 戦後の日本
 ・本書では上記の「イムジン河」だけですが、森達也「放送禁止歌」(知恵の森文庫)(←オモシロイ!)には実にいろんな事例が集められています。多くは差別用語やワイセツな表現等による問題を避けたいメディア側の自主規制のようですね。

 これらの政治権力による歌への禁圧や「親日派狩り」等に対して、いうまでもなく田月仙さんは批判的に書いています。彼女が国境を越えて活動を通して国際的な視野を身につけているからということもあるでしょうし、もしかしたら日本で生まれ育った在日だからこその「ふつうの見方」なのかもしれません。

 ところで、この2008年刊行の新書を私ヌルボがなぜ今再読してこのブログ記事を書いたのかというと、実は北朝鮮での2つの「禁じられた歌」について韓国のニュース記事を読んだからです。その2つの歌については(またもや)次回に続くということにします。

韓国ではだれでも知っている、北朝鮮で禁じられた2つの歌♪♪  ①「朝露(アチミスル)」

$
0
0
 1つ前の記事で過去100年の日本・韓国・北朝鮮で主に時の政治権力によって禁止された歌について書かれた田月仙(チョン・ウォルソン)さんの著書「放送禁止歌」を紹介しました。

 その本の中に「朝露(アチミスル.아침이슬)」のことが書かれています。ご存知の方も多いと思いますが、1970年に当時大学生だった金敏基(キム・ミンギ)が作詞・作曲し、翌年レコード化された歌。1973年政府から健全歌謡に選定されますが翌74年には禁止されます。朴正熙大統領の軍事政権に抗する民主化闘争の中で学生たちの間に広がり、愛唱される歌になっていたから。「長い夜を明かし・・・」や「太陽は墓地の上に、赤く昇り・・・」といった歌詞中の長い夜や墓地は軍事政権下の韓国のことで赤く昇る太陽とは金日成を意味しているのだろうというのがその禁止理由でした。しかし、この歌はその後80年代の全斗煥政権下でも民主化闘争を象徴する歌として歌われ続け、そして1987年の盧泰愚の民主化宣言後ようやく解禁されました。

 この「朝露」について、本ブログでは2011年にけっこうくわしい3回連続の記事を書いたことがありました。その<その1>(→コチラ)で楊姫銀(ヤン・ヒウン)のファースト・アルバムの動画(といっても静止画像と歌だけ)を貼ったので、今回は金敏基の歌を貼っておきます。背景の動画は1987年7月9日李韓烈(催涙弾の直撃を受け死亡した延世大の学生)の<民主国民葬の時のようすです。

 ところで、上記過去記事の<その3>(→コチラ)の最後の方に、私ヌルボが1991年8月北朝鮮に行った時のエピソードを少し書きました。北朝鮮の対文協(対外文化連絡協会)(?)との交歓を兼ねたディナーの際の出し物で、当方の団体から1人の男性が持参したギターを弾きながら歌った歌がこの「朝露」でした。が、反応はゼロ。いや、マイナスと言った方がいいくらいかも。当時北朝鮮ではこの歌を知っていた人は、いたとしても職務で韓国を「注視」しているごく限られた人だけだったのではないでしょうか? また韓国の歌自体歌うことは厳禁だし・・・。そして日本からのこの旅行団の参加者100人中でも何人くらいの人が知っていたか?(10人くらい??) とにかく(たぶん)朝鮮総聯の人が歌って会場がすごく盛り上がった「朝鮮八景(조선팔경)」(1936年.→YouTube)とは対照的な雰囲気でした。
 ところが「禁じられた歌」には、この「朝露」が「北朝鮮版カラオケに登場する」と書かれています。田月仙さん自身の経験として次のように記されています。
 その映像は驚くべきものだった。数えきれないほどの北朝鮮の出演者たちが、韓国の学生や労働者に扮し、韓国で反体制デモを行っている様子を演出しているのだ。
 そして彼女は、このビデオを制作したディレクターにも直接話を聞いているのです。その彼の言。
 「当時、北朝鮮の金策(キムチェク)工業大学の学生を集めて撮影されたものです。北朝鮮で『朝露』はとても人気があるのですよ。」
 田月仙さんは、この映像をビデオに録画し、金敏基に手渡したとのことです。(金敏基と田月仙さんとのやりとり等々については省略。)
 「禁じられた歌」でこのような「朝露」にまつわる話を読み進んで、実は私ヌルボ、最後に肩すかしをくらった感じでした。なぜかというと、上述の北朝鮮でのエピソード(1995、6年?)の少し後の1998年にこの歌が北朝鮮で禁止曲になったことが書かれていないからです。ヌルボさえも先の過去記事(その3)で書いていたのに・・・。
 しかし、考えてみれば過去記事のネタ元の<DailyNK>の記事(→コチラ)の配信2008年4月ということは、禁止されたのが1998年でもそれが韓国に知られたのはその10年後ということなのでしょう。「禁じられた歌」刊行は2008年2月なので、わずかの差で田月仙さんはその情報を知りえなかったということになります

 上記の<DailyNK>の記事を読むと、北朝鮮でこの歌が1996年に初めて歌われた理由と、98年に禁止された理由をおよそ次のように次のように記しています。

 当時の北朝鮮は300万人(?)が飢え死にしたという<苦難の行軍>の時代。北朝鮮の宣伝当局はそれを政権の過ちではなくアメリカ帝国主義をはじめとする反動の反共和国策動のためとし、宣伝・教育活動を展開した。その一環として韓国国内の反米運動と関連づけて北朝鮮の歌手イ・キボクが歌うこの「朝露」のテープを作成した。
 ところが、この歌が広まるにつれ住民たちはこの歌の中に、社会に対する抵抗意識があることを感じるようになり、ますます歌われるようになった。北朝鮮政府はそれに気づき、1998年に「朝露」を歌うことを禁止し、テープもすべて回収した。「朝露」を歌って捕まった者は政治犯扱いされて労働鍛錬隊に送られた。ただ、その一方で政府は韓国の人と接触する海外の北朝鮮食堂や金剛山観光、開城観光の案内員にはこの歌を歌うように奨励した。そこには「わが民族同士力を合わせて米帝と戦おう」という意図があった。

 いやー、北朝鮮当局の「苦慮」や「狡知」がうかがわれます。かなり「善意」に解釈すれば、取り締まる側も人々の心情がわかるからこそ取り締まることができるということでしょうか。韓国で「朝露」の含意を<邪推>した人たちと相通ずるものがあるかも・・・。

 私ヌルボ、今回の記事を書くにあたってまた韓国の記事をいろいろ漁ってみたところ、おー、その北朝鮮のビデオ動画と思しきものがYouTubeにあるではないですか! 歌手はたしかにリ・キボクです。(北朝鮮では李は「リ」と表記・発音する。)

 フォークよりも歌曲のような感じでずいぶん端正な雰囲気で歌ってますね。実際の韓国の街並みや人々のようすを用いていないのは、それを見て北朝鮮の住民が「ずいぶん車も多いしにぎやかじゃないか」とか「いい服を着ているな」等々と思う<危険性>があるためですね。
 2010年2月にアップロードされた動画ですが、この「朝露」が北朝鮮で禁止されたということはまだ韓国では周知のこととはなっていなかったのか、最近でもメディアで取り上げられたりしています。
 たとえば昨2015年8月の<TV朝鮮>。→コチラ(韓国語)によると、「耳慣れない発音、白いチョゴリに黒いチマを着た女性の行動も何となくぎこちないです」等々と語りつつこの動画を流し、禁止されるまでの経緯とともに、2011年に脱北した人の次のようなコメントも入れています。
 「南朝鮮で主体思想を信奉する人々が闘争しながら歌った歌だとのことで、その歌を歌えば南朝鮮の青年学徒のような感じなのでカッコよく見えて・・・」

 そして今月(2016年9月)5日、「東亜日報(日本語版)」にも「北朝鮮の禁止曲「朝露」と題したコラム(→コチラ)が載っていました。やはり「南北当局がいずれも住民が相手に染まることを恐れて禁止したとは、実に数奇な歌だ」といったことが書かれています。そして北朝鮮で友人と「朝露」を歌ったという「金日成大学出身の本紙のチュ・ソンハ記者」の「歌の中に隠れている抵抗の精神が私たちの胸の中に眠っていた内在的な反抗意識を呼び起こしたのではないか」というこの歌に魅了された理由も紹介しています。記事末尾の「北朝鮮で「朝露」を密かに歌って新しい世の中を夢見る人々が最近増えたという」という一文は、どこまでが事実で、どこまでが「期待」なのか・・・。
 ※このコラム中のチュ・ソンハ記者による「我々は「朝露」を歌って平壌を守った」と題した記事(韓国語)は→コチラ

 以上、「禁じられた歌」をキッカケに私ヌルボが「朝露」について知っているor新たに知ったことをあれやこれや書きました。決して政治的主張が具体的に盛り込まれていないこの歌が、このように長い間人々に愛唱されるばかりでなく社会を変える大きな力を持ったのも、多くの人たちの言葉同様ヌルボも歌自体の力として納得できます。
 そしてこれまでさまざまな物語を生んだこの歌の物語はまだ終わっていないのだというのが今の実感です。

 この記事の続きは、もう1つヌルボにとっては思い出の、最近北朝鮮で禁止された歌についてのことです。(※これだけで何という歌かわかる人もいらっしゃるでしょう。)

韓国内の映画 NAVER映画の人気順位 と 週末の興行成績 [9月30日(金)~10月2日(日)]

$
0
0
 3日ヒューマントラストシネマ渋谷で「隻眼の虎」(原題「대호(大虎)」)鑑賞。やっぱり、今ひとつ焦点が絞り切れていなかったような・・・。なお、前にも書きましたが、「韓国の虎はなぜ消えたか」の著者遠藤公男さんによると、「1922年に慶尚北道・慶州の大徳山で捕まったのを最後に、韓国からトラが消えた」とのこと。日本人巡査が数百人を指揮してトラを追いつめて射殺、毛皮は日本の皇族に献上されたとか・・・。(→<聯合ニュース>の記事(日本語)参照。)

 <コリアン・シネマ・ウィーク 2016>の情報は韓国文化院のサイトで見られます。(→コチラ)。全5作品、先行上映の「キム・ソンダル 大河を売った詐欺師たち」(→コチラ参照)も入れて6作品ですが、今回は率直に言ってあまり期待感がわかない感じ。たぶん一番評価が高い「王の運命-歴史を変えた八日間-」はすでに一般公開で観たし、国策映画っぽい「ノーザン・リミット・ライン 南北海戦」も観たし、それ以外はどうも韓国でもさほど話題にならなかった作品のようで、なんだかなー、といったところ。まあ(抽選に当たれば)無料なので行くかもしれませんが・・・。

 11月3~7日の<新大久保映画祭>。先週→公式サイトのトップページを見て「8作品中6作品はもう観てるし、云々」と書きましたが、そのスケジュールのページ(→コチラ)を見ると「7ヶ国15作品が見られる!!」とあります。で、目に留まったのが「危路工団」。女性労働者問題をテーマにしたドキュメンタリーで、韓国の映画サイトで高評価を得た作品です。おっ、これも含め韓国文化院で上映の5作品は無料か!(チケットは必要) 他には、うーむ、なんとも見づらくわかりにくいページじゃのう・・・。

 10月6~15日釜山国際映画祭。釜山市側と映画関係者とが対立して一時は開催が危ぶまれましたが、なんとか実施にこぎ着けましたね。しかし問題が解消されたわけではありません。日本語記事では→コチラの「西日本新聞」の記事を参照されたし。上映作品等内容についてはまたいずれ。
   「朝鮮日報」9月30日掲載の「封切映画 ぴったり10字評」 (ハングル文も訳文も10字です。)。)  「ラヴニール」
   喪失・亀裂に対する姿勢 ★★★★


 「ミス・ペレグリンと奇妙な子どもたち」
   まさにティム・バートン ★★★☆


 「ハドソン川の奇跡」
   正直で温かで羨ましい ★★★


 「リップヴァンウィンクルの花嫁」
   誰もがさびしいと叫ぶ ★★★


 「ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期」
   ゴールドミスの全願望 ★★★


 「阿修羅」
   強さばかりなので単調 ★★☆


 上掲の作品はすべて以下の記事の中で紹介しています。
         ★★★ NAVERの人気順位(10月4日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
             ※評点の後の( )は採点者数
①(-) おばあちゃんの遠い家(韓国)  9.69(61)
②(-) 水の息(韓国)  9.67(42)
③(1) Bringing Tibet Home ~故郷を引き寄せて~(韓国等)  9.39(76)
④(2) 影たちの島(韓国)  9.36(90)
⑤(3) KING OF PRISM by PrettyRhythm(日本)  9.30(1,098)
⑥(-) ミッドワイフ  9.25(4)
⑦(-) ハドソン川の奇跡  9.23(1,2447)
⑧(-) ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期  9.22(1,596)
⑨(4) 私たち(韓国)  9.21(946)
⑩(-) 一死覚悟(韓国)  9.16(240)

 めずらしく半数以上が入れ替わりましたが、本ブログの初登場は①②⑥の3作品です。
 ①「おばあちゃんの遠い家」は、2015年の第41回ソウル独立映画祭で観客賞を受賞した作品。イ・ソヒョン監督が自身の祖母を撮ったドキュメンタリーです。就活中だったある日、「私」は93歳の祖母が自殺をしようとしたという話を聞きます。自分が集めたお金30万ウォンを化粧台の上に置き、病院でもらった睡眠薬を集めて飲んで・・・。子供の頃両親の代わりに自分を育ててくれた祖母の自殺の知らせは孫娘の「私」には青天の霹靂でした。「私」は祖母のそばにいて世話をすることにしました。そして祖母を記憶するための準備を開始します。「おばあちゃん、私、映画をがんばって撮るから全部見る前に逝かないでね」・・・。祖母と孫娘の心温まる日常を通して、生と死、家族の大切さなど、誰でも共感できるテーマについて話題を提示し、深い感動を伝える作品とのことです。原題は「할머니의 먼 집」です。
 ②「水の息」も韓国のドキュメンタリー。昔から有名な済州島の海女を、済州島出身のコ・ヒヨン監督が7年間も長期にわたり50人にのぼる海女たちに密着取材して撮った作品です。厳密にいえば済州島ではなく、その東の牛島(ウド)という小島。風の島と呼ばれるほど風が強く、土地がやせていて作物が育ちにくい所で、それが海女の発祥地となった背景のようです。多くの人が知らないことは、海女社会に上軍(サングン)・中軍(チュングン)・下軍(ハグン)という3つの<階級>が存在するということ。それを分けるのは海中で息を止められる長さです。それにより潜ることができる海の深さが変わり、獲れる魚介類が変わって収入が違ってくるのです。その海女たちの息の長さは生まれつきのものなので、下軍の海女がいくら努力しても上軍にはなれないそうです。しかし、自分の息の限界ギリギリまで潜りたい欲望は誰しもあり、あるいはそれを超えたいとさえも・・・。その限界を超えて最初に吸うのがタイトルの「水の息」です。欲望の象徴であり、海女たちが最も恐れているものだそうです。原題は「물숨」です。
 ⑥「ミッドワイフ」(仮)は、フィンランド・リトアニア合作のドラマ。1944~45年のラップランド戦争の頃のフィンランドを舞台にした恋愛物語です。フィンランドは第2次世界大戦ではソ連と対抗するため枢軸国側について戦い、ソ連相手に善戦するものの結局は1944年ソ連と休戦し、その条件として国内に駐留するドイツ軍を駆逐するために戦います。これがラップランド戦争です。フィンランド人女性のヘレナはドイツ軍兵士のヨハネスに会って恋に落ち、看護師に偽装してヨハネスがいる陣地で働き始めます。その後爆撃に巻き込まれて陣地を出た2人は、もし離れ離れになってもそこで再び会おうとを固く約束します。・・・で彼女、もしかして待ち続けるの? ミッドワイフ(midwife)とは助産師のことなんだけど・・・。ネチズンのコメントを見ると、「枢軸国の人間同士の恋愛」という理由だけで最低評価(1点)を付けてた人がいたな。韓国題は「미드와이프」。日本公開はなさそう、かな?

     【記者・評論家による順位】
             ※評点の後の( )は採点者数
①(1) キャロル  8.96(13)
②(-) ラヴニール  8.0(6)
③(-) ハドソン川の奇跡  7.86(7)
④(2) アガシ(韓国)  7.68(18)
⑤(3) 私たち(韓国)  7.66(14)
⑥(4) 密偵(韓国)  7.50(12)
⑦(5) ナショナル・ギャラリー 英国の至宝  7.50(4)
⑧(6) ディーブ  7.35(5)
⑨(7) トンネル(韓国)  7.21(14)
⑩(8) ウルフパック  7.20(5)

 ②「ラヴニール」(仮)だけが今回の新登場です。女優出身のミア ハンセン・ラヴ監督によるフランス映画。パリの高校で哲学を教える50代の女性ナタリー(イザベル・ユペール)は2人の子供の母親として、1人の男の妻として、そして母親の娘として忙しくとも幸せな日々を過ごしています。そんなある日、思いもよらぬ夫の告白により彼女の平和な生活が揺れ始めます・・・。突然の喪失感と向き合い、その後新たに自分だけの幸せを探していく旅を盛り込んだ、フランス映画らしい繊細な作品、なのかな? 原題「L’avenir」は<未来>の意。韓国題は「다가오는 것들」です。日本公開は未定のようです。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績9月30日(金)~10月4日(日) ★★★

         「密偵」の後は「阿修羅」 韓国映画のトップが続く
【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・・累積収入・・・・上映館数
1(16)・・阿修羅(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・9/28・・・・・・・・・1,068,582 ・・・・・・・・・・・1,803,090 ・・・・・・・・14,080 ・・・・・・・・1,278
2(新)・・ミス・ペレグリンと奇妙な子どもたち・・9/28・・・595,717 ・・・・・・・・・・・・・742,526 ・・・・・・・・・5,904・・・・・・・・・・810
3(7)・・ブリジット・ジョーンズの日記・・9/28 ・・・・・・・・・・208,129 ・・・・・・・・・・・・・333,917 ・・・・・・・・・2,701・・・・・・・・・・509
       ダメな私の最後のモテ期
4(6)・・ハドソン川の奇跡 ・・・・・・・・・・・9/28・・・・・・・・・・・185,761 ・・・・・・・・・・・・・293,265・・・・・・・・・2,499 ・・・・・・・・・・573
5(1)・・密偵(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・・・9/07・・・・・・・・・・・181,320 ・・・・・・・・・・・7,292,550 ・・・・・・・・59,647・・・・・・・・・・522
6(2)・・ベン・ハー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9/14・・・・・・・・・・・・41,432 ・・・・・・・・・・・1,343,018 ・・・・・・・・10,975・・・・・・・・・・276
7(36)・・ピートと秘密の友達・・・・・・・・・9/28・・・・・・・・・・・・34,847・・・・・・・・・・・・・・39,792 ・・・・・・・・・・・322・・・・・・・・・・163
8(新)・・ドント・ブリーズ ・・・・・・・・・・・・10/05・・・・・・・・・・・・29,448・・・・・・・・・・・・・・33,807 ・・・・・・・・・・・289・・・・・・・・・・304
9(78)・・すすめ! オクトノーツ シーズン4・・9/28 ・・・・・・・・22,958・・・・・・・・・・・・・・25,455 ・・・・・・・・・・・152・・・・・・・・・・158
10(新)・・白雪姫:消えたお父さんを探して・・9/29 ・・・・・22,364 ・・・・・・・・・・・・・・23,703・・・・・・・・・・・・186 ・・・・・・・・・209
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 7月22~24日の「釜山行き」以来韓国映画のトップが続いています。700万人を超えた「密偵」が後退した後、今度は「阿修羅」が他を引き離して1位の座につきました。
 今回の新登場は1・2・7・8・9・10位の6作品です。
 1位「阿修羅」は、韓国の犯罪・アクション。殺人・強盗・レイプ・拉致・放火・麻薬等の凶悪犯罪を扱う<強力系刑事>のハン・ドギョン(チョン・ウソン)は、悪徳市長のパク・ソンベ(ファン・ジョンミン)から金を受け取ってソンベが利権のために犯す犯罪の後始末をしています。ドギョンが悪の道に入ったのは末期癌の妻の病院費を得るため。そんなドギョンの弱点をつかんだ検事のキム・チャイン(クァク・ドウォン)と検察捜査官のト・チャンハク(チョン・マンシク)はドギョンを脅迫・利用し、ソンベの悪事を明らかにしようとします。ソンベと検察との間に挟まれたドギョンは、自分を兄のように慕っているムン・ソンモ(チュ・ジフン)をソンベの手下として送り込みますが・・・。原題は「아수라 」です。
 2位「ミス・ペレグリンと奇妙な子どもたち」は、ランサム・リグズの同名小説を奇妙な(?)作風のティム・バートン監督が映画化したアドベンチャー・ファンタジー。(原作小説は「ハヤブサの家」の邦題で東京創元社から刊行。) 大好きだった祖父の凄惨な死。少年ジェイコブはその祖父の最期のことばを果たすべくウェールズの孤島を訪れます。そこで彼が見つけたのは廃墟となった屋敷と、そこで暮らす不思議な能力を持った住人。やがて屋敷に恐ろしい危機が迫り、ジェイコブは住人たちととともに怪物と戦うことに・・・。→トレーラー見たらたしかに奇妙。韓国題は「미스 페레그린과 이상한 아이들의 집」。日本公開は2017年です。なんでそんなに遅い?
 7位「ピートと秘密の友達」は、日本では劇場未公開に終わったディズニーの実写映画「ピートとドラゴン」1(977)のリメイク。6年間森で暮らしてきた少年ピートが発見されるところから物語が始まります。ピートの唯一の友だちがエリオットなのですが、「彼」はドラゴンで透明になる能力があり、ピートが困った時にいつも助けてくれます。そんな2人(?)の友情を描いた作品のようです。前作では、エリオットはいかにもアニメっぽい2Dだったのが、今作では最新の映像テクノロジーで比較にならないほどリアルになってます。韓国題は「피터와 드래곤」。日本公開は12月23日です。
 8位「ドント・ブリーズ」(仮)は、アメリカのスリラー。10代の空き巣ねらい3人組は最底辺の生活を清算するために 盲目の老人を狙った最後の犯行を結構します。老人が寝ている間に巨額の現金を手に入れたと思った瞬間、老人は目を覚まします。暗闇の中、右往左往する彼らを盲目の老人は即座に見つけ出し、老人とは思えないほどの動きで返り討ちにとりかかります。360度、どこから攻撃されるかわからない暗がりの中の恐怖を観客も実感 !というのがミソか。韓国題は「맨 인 더 다크」。日本公開は未定のようです。
 9位「すすめ! オクトノーツ シーズン4」は、英BBC制作の子供向き人気アニメシリーズ第4作。韓国でも放映されておなじみ。オクトノーツはいろんな動物のメンバーで構成されるエージェント集団で、タコ状の乗り物に乗って海中の生き物たちのピンチを救うべく出動します。今回はフロリダの湿地公園に行って外来種の生物を見つけて救出。あれ、湿地からくっついてきた赤ちゃんワニを連れて海に行っちゃう? 韓国題は「바다 탐험대 옥토넛 시즌4: 늪지탐험선K」。日本公開はなさそうな・・・。
 8位「白雪姫:消えた父さんを探して」は、中国の3Dアニメ。お父さんと2人きりで幸せに暮らしていたハンナ。しかしある日突然お父さんが何も言わずいなくなってしまいます。ハンナは子犬のローバーと一緒にお父さんを探しに家を出ます。その途中ハンナは白雪姫と7人の小人たちに出会い、彼らの助けを借りますが、森の中で兵士たちの攻撃を受けたりして・・・。あまり中国らしくなさそうというか、絵柄を見るとあのアナ雪等々どこかで見たようなキャラクターだぞ。(そこが中国らしい?) 韓国題は「백설공주 : 사라진 아빠를 찾아서」。日本公開はないでしょう。

【多様性映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(1)・・アイアムアヒーロー(日本)・・・・・・・9/21・・・・・・・・・・・・・・17,828・・・・・・・・・・・201,147 ・・・・・・・・・・1,712 ・・・・・・・・129
2(2)・・カフェ・ソサエティ・・・・・・・・・・・・・・・9/14 ・・・・・・・・・・・・・・・7,042 ・・・・・・・・・・111,798 ・・・・・・・・・・・・927 ・・・・・・・・・47
3(18)・・リップヴァンウィンクルの花嫁(日本)・・9/28 ・・・・・・・・・5,815 ・・・・・・・・・・・・9,674・・・・・・・・・・・・・・78 ・・・・・・・・・85
4(11)・・Bringing Tibet Home・・・・・・・・・・9/01 ・・・・・・・・・・・・・・・4,010 ・・・・・・・・・・・14,592・・・・・・・・・・・・・114 ・・・・・・・・・・2
       ~故郷を引き寄せて~(韓国等)
5(30)・・ラヴニール ・・・・・・・・・・・・・・・・・・9/29・・・・・・・・・・・・・・・・3,585 ・・・・・・・・・・・・5,757 ・・・・・・・・・・・・・・44 ・・・・・・・・・27

 今回の新登場は3位と5位の2作品です。
 3位「リップヴァンウィンクルの花嫁」は私ヌルボは未見。気にはなっていたのですが結局見逃してまいました。韓国題は「립반윙클의 신부」です。
 5位「ラヴニール」については上述しました。

ハングルが読めなくてもわかる、北朝鮮の教科書の特色

$
0
0
 10月1~2日、グローバルフェスタというイベントに行ってきました。
 場所はお台場センタープロムナード。・・・って、どこなんだか私ヌルボはわかりませんでしたが。最寄り駅のりんかい線東京テレポート駅(orゆりかもめ青海駅)も初めてだし、このイベントも初めて。
 国内最大級の国際協力のイベントで、毎年NGOやNPOのほか、JICAや大使館など250以上の団体が出展しているとのことなんですが、このイベントの認知度はどれくらいなんすかねー?
 実際行ってみると、1日はどんよりとした空模様でとりおり小雨も降るという、行楽には向かない天気。しかし意外なほどの人出。2日は晴れたといっても蒸し暑い一日。しかしその後の情報では両日で来場者は約10万人に上ったとか。いやー、そんな催しが以前から続いていたんですねー。(一昨年までは日比谷公園で開催)

 さて、私ヌルボのお目当ては北朝鮮難民救援基金のブース。公式サイト(→コチラ)の出展者紹介のページには「北朝鮮人権侵害の実態を示す、体験者によるイラスト画の展示、日本に定住した元脱北者の体験談、教科書の展示」とあります。
 行ってみると、さして広くはない(というより狭い)空間内にいろいろ興味深い展示物がありました。
 で、今回はその中で北朝鮮の学校で用いられている教科書について紹介します。

          
 左から小1の数学、中学の英語、小3の自然。一見してわかることは、紙質の悪さ。印刷のレベルも低く、いくら実際に用いられたものにしても、日本人の基準では半世紀以上も前のものといった感じ。多くは(全部?)21世紀に入ってからのものなんですけどね。

★私ヌルボのただし書き・・・・この記事は決して北朝鮮を見下したり、からかったりするような差別的意図で書くものではありません。要は正確な北朝鮮の現実を認識し、それを多くの皆さんと共有するのが目的です。教科書の紙質や印刷のことをすぐ上で書きましたが「これはひどい!」という感想も「日本人だからそう思う」ので、「北朝鮮のような社会で生まれ育った人はそれが標準」です。このような双方のモノサシの大きな差異は、諸製品や技術等のレベルに限らず、一般的な知識や価値観等についても当然あるわけです。かの国の政府や人々と接する場合もそうしたことを念頭に置く必要がある、ということです。

 さて教科書の表紙をめくると・・・。


 そして表紙をめくると・・・。

     
 左は(上左の)小1数学、右は(上中の)中学英語です。それにしても、このねずみ色の紙、数回消しゴムでこすると穴が空きそうです。

 また、このページを見て気づくのは、文章の最初の方に太字の部分があること。(どの教科書も同様です。)
 何が書いてあるか、具体的に見てみます。



 これは小1数学の冒頭の4行。

 偉大なる領導者金正日元帥様は次のようにおっしゃった。
 《数学を知らなくては科学技術分野で現れる問題を正しく解き明かすことができません。》

 つまり、「金正日」という文字と、彼の「お言葉」の部分が太字になっています。


 こちらは中学英語です。

               まえがき
 偉大なる領導者金正日元帥様は次のようにおっしゃった。
 《外国語は理解することに留まるのではなく、活用できるように学習しなければなりません。そうするとなると練習をたくさんしなければならなりません。たくさんの練習を経て、熟練した外国語の知識だけが活用できるのです。》
 敬愛する父金正日元帥様が外国語学習をするにあたって下さったお言葉を深く承って、2学年英語教科書は聞いて話すことを主としつつ、読みと作文を適切に取り合わせるという原則で構成した。

 これも同様。他の教科書もみな同じ。あ、「金正日元帥様」の前に「敬愛する首領金日成大元帥様」の「お言葉」が入っているものもありましたね。

 また、教科書だけでなく、あらゆる分野の書物や、博物館等の施設の説明文にも必ず同じような形式の「お言葉」が冒頭部分に掲げられています。どれも上のような太字で記されているので、ハングルが読めなくても「例のアレだな」とすぐわかります。

  記述内容については、ここでは深入りしません。ただ、中学英語の最初の章のページと、高等中学美術の数ページだけ紹介します。


 せめて英語くらいは外の世界に開かれた内容を期待したいところですが、それは望むべくもありません。 タイトルからして「偉大な指導者金正日元帥の健康を祈る!」ですから。その下の絵は白頭山で「白頭山秘密キャンプの偉大なる指導者金正日元帥の生地」と記されていますが、「白頭山生まれ」というのは「金正日神話」の1つで、少なくとも外国ではよく知られた「虚構」です。※実は極東地方生まれで、この密営という丸太小屋も1987年に造られたもの。

     
 高等中学校の美術の教科書の第一印象は、印刷が悪いこと。キレイな印刷を求められるはずの美術教科書なのに、他の教科書以下のようにも思えます。人物画のページ(右)の変に赤みがかった色はいくらなんでも原画の色調ではないでしょう。印刷が「悪い」というより「ひどい」レベルです。※ちなみに、描かれている人物は左ページ上が祖国解放戦争の時期の遊撃闘争中に敵に逮捕され死刑に処せられる最後の瞬間まで屈することなく戦った趙玉姫(チョ・オッキ)英雄の闘争を描いた作品。また右ページ上は「将軍様の戦士「柳京洙(リュ・ギョンス)先生様」(部分)。柳京洙は朝鮮戦争開戦時の北朝鮮軍の第105戦車旅団長。他の絵は自画像等です。

 美術の教科書の内容面での特色は、日本ではよく知られているヨーロッパの名画が全然ないこと。レオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロ、ミレーやゴッホ、ピカソ等々。ざっと見たところ、私ヌルボの知っている画家では、朝鮮王朝後期の絵師金弘道(キム・ホンド)の風俗画がページの下の方に小さく載っていたくらいでした。
 そしてもう1つの特色は、宣伝画に4ページものページを割いていることです。

       
 宣伝画といっても商品や催し等の宣伝ではありません。章の初めには、宣伝画が大衆に対する宣伝・扇動事業に重要な位置を占めること等が記されています。(上左) その下の、銃剣を高く掲げた4人の絵には青字で大きく「われわれは勝つ!」、そして絵の上には「偉大なる将軍様がいらっしゃれば」と書かれています。
 その右のページ(上右)も銃を持った兵士の絵。「党中央を決死擁衛(護衛)する銃・爆弾になろう!」というスローガンが入っています。※「党中央」は金正日とほとんど同義。
 その下右の絵だけは作画技術についての説明。これだけ異質な感じです。

       
 さらに宣伝画の中から2つピックアップして紹介します。
 左は「米帝を追い出して祖国を統一しよう!」というスローガンが記された絵(部分)。いかにも、という感じです。米軍兵士がひっくり返っていますが、「こうした敵愾心をあおるような教育があっていいのか!」という国際標準的疑問は、この国には遠くの雑音か、それ以下のものでしかなさそうです。
 右の絵は、書かれた文字とその背景の意味がわからなければ単に「かわいいウサギの絵」と思ってしまうかもしれません。ところが、赤い大きな字は「より多くのウサギを育てよう!」、そして右上の黄色い字は「学校で家庭で」なのです。この宣伝画が書かれたのは「主体69年(西暦1980年)」ですが、それ以前(1960年代初め?)から北朝鮮では金日成大元帥様の指示で始められたのがウサギ飼育の奨励(というか強制というか・・・)でした。「軍や党の運用資金を補う」のがその目的で、とくに小中学校の子供は夏休みの宿題でウサギの皮3~5枚提出というのがあったりして大変だったようですよ。詳しくは→コチラの記事を参照してください。

 以上、6、7冊ほどの教科書をざっと見て、そのうわべと中身について少しだけ書きましたが、それでもこれだけの分量になってしまいました。

 教科書に限らず、北朝鮮の文物を直接見たりすることはめったにないでしょうが、そんなことがあった時の参考にしていただければと思います。

韓国内の映画 NAVER映画の人気順位 と 週末の興行成績 [10月7日(金)~10月9日(日)]

$
0
0
 昨晩はシネマ・ジャック&ベティで深田晃司監督「淵に立つ」を観てきました。先が読めず、緊張の連続で、「エッ!」と驚くシーンがいくつも・・・。第69回カンヌ映画祭「ある視点」部門で審査員賞を受賞というのは理解できます。感動するorしない以外にも、映画の価値を測るモノサシはいろいろあるということです。

 そのシネマ・ジャック&ベティでは現在「ダイビング・ベル セウォル号の真実」を上映中。(~14日(金)。) 公式サイト(→コチラ)で今後の上映予定作品をみると、韓国関係では次のようなものがあります。
 「暗殺」(10/22〜)、「将軍様、あなたのために映画を撮ります」(11/12〜)、「華麗なるリベンジ(原題 :検事外伝)」(11/12〜)、「弁護人」(12/3〜)。注目作が次々に上映されます。
 ※まだ全部書き終えていない本ブログのシリーズ記事<多角的に見る韓国映画「暗殺」(ネタバレほとんどナシ)>(直近の第4回は→コチラ。たぶんあと2回続く)を早く仕上げなければ・・・。
 この他に、15日(土)からは「冬の小鳥」のウニー・ルコント監督による「めぐりあう日」、日本の野球を韓国に伝えた在日韓国人選手たちを追ったドキュメンタリー「海峡を越えた野球少年」(2016年内)も上映されます。
 韓国関係映画以外で私ヌルボの期待は、2013年の大感動インド映画「きっと、うまくいく」のラージクマール・ヒラーニ監督による「PK」(10/29〜)と、今夏のシネマカリテの<カリコレ>で見られなかった台湾映画「私の少女時代 Our Times」(年内or来年)。他にもいろいろあります。
 こんなに観たい映画を続々上映してくれる映画館がバイクで10分ばかりの所にあるとは、前にも書いたことがたしかありましたが、ホントにラッキーです。

 最近、今年5月にアップした<北朝鮮の女の子の日常ではなく、北朝鮮当局の「ヤラセ」を暴露してしまったドキュメンタリー「太陽の下」>という記事(→コチラ)の訪問者数が急増したので、その理由を探ると、<YAHOO !ニュース>で→7日と→10日の2回にわたってこの「太陽の下」が「太陽の下で 真実の北朝鮮」との邦題で来年1月21日からシネマート新宿等で順次公開されることが決まったと報じたことと関係があるようです。最近は新聞は購読しないでもっぱら<YAHOO !ニュース>等のネットメディアで情報を得ている人が多いとか。その影響力はたしかに大きいものがあります。

 あっ! 注目の<慰安婦映画>「鬼郷」
の上映情報が出たゾ!(→コチラ。) 11月22日。大阪か、うーむ・・・。批判している人たちも上映の妨害はしないで「ここが違う!」等々、言葉や文字で批判してほしいですね。表現の自由が保障されているというのも<日本の誇るべき美点>なのですから。

 大阪といえば、11月3~5日<第2回 大阪韓国映画祭>が開かれます。詳しくは→コチラ

 「朝鮮日報」の「封切映画 ぴったり10字評」は先週掲載されませんでした。

     【ネチズンによる順位】
             ※評点の後の( )は採点者数

①(1) おばあちゃんの遠い家(韓国)  9.53(92)
②(3) Bringing Tibet Home ~故郷を引き寄せて~(韓国等)  9.39(76)
③(-) ドロップボックス(韓国)  9.33(91)
④(5) KING OF PRISM by PrettyRhythm(日本)  9.32(1,145)
⑤(4) 影たちの島(韓国)  9.27(92)
⑥(9) 私たち(韓国)  9.21(957)
⑦(7) ハドソン川の奇跡  9.19(1,874)
⑧(10) 一死覚悟(韓国)  9.16(241)
⑨(2) 水の息(韓国)  9.16(62)
⑩(8) ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期  9.16(2,400)

 順位の変動はありましたが、初登場の作品はありません。

     【記者・評論家による順位】
             ※評点の後の( )は採点者数
①(1) キャロル  8.96(13)
②(2) ラヴニール  8.0(6)
③(3) ハドソン川の奇跡  7.86(7)
④(4) アガシ(韓国)  7.68(18)
⑤(5) 私たち(韓国)  7.66(14)
⑥(-) ドロップ・ボックス(韓国)  7.66(1)
⑦(6) 密偵(韓国)  7.50(12)
⑧(7) ナショナル・ギャラリー 英国の至宝  7.50(4)
⑨(8) ディーブ  7.35(5)
⑨(7) トンネル(韓国)  7.21(14)
⑩(-) 網(韓国)  7.25(8)

 ⑩「網」だけが今回の新登場です。この作品については後述します。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績10月9日(金)~10月11日(日) ★★★

         3ヵ月ぶりに外国映画「ミス・ペレグリンと奇妙な子どもたち」が首位に
【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・・累積収入・・・・上映館数
1(2)・・ミス・ペレグリンと奇妙な子どもたち・・9/28 ・・・・660,699 ・・・・・・・・・・・1,998,121・・・・・・・・16,216・・・・・・・・・・899
2(8)・・ドント・ブリーズ ・・・・・・・・・・・・・10/05 ・・・・・・・・・・392,348・・・・・・・・・・・・・568,012 ・・・・・・・・・4,896・・・・・・・・・・671
3(1)・・阿修羅(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・・9/28・・・・・・・・・・・207,424 ・・・・・・・・・・・2,471,744 ・・・・・・・・19,663 ・・・・・・・・・721
4(3)・・ブリジット・ジョーンズの日記・・9/28 ・・・・・・・・・・138,793 ・・・・・・・・・・・・・625,206 ・・・・・・・・・5,142・・・・・・・・・・449
       ダメな私の最後のモテ期
5(16)・・ラッキー(韓国)・・・・・・・・・・・・10/13・・・・・・・・・・・125,949 ・・・・・・・・・・・・・142,690・・・・・・・・・1,240 ・・・・・・・・・・345
6(4)・・ハドソン川の奇跡 ・・・・・・・・・・・9/28・・・・・・・・・・・・97,942 ・・・・・・・・・・・・・532,973・・・・・・・・・4,538 ・・・・・・・・・・460
7(5)・・密偵(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・・・9/07・・・・・・・・・・・・56,433 ・・・・・・・・・・・7,458,877・・・・・・・・60,974・・・・・・・・・・386
8(51)・・殺してくれる女(韓国) ・・・・・・10/06 ・・・・・・・・・・・32,470 ・・・・・・・・・・・・・・43,976・・・・・・・・・・・342・・・・・・・・・・313
9(58)・・網(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・・・10/06・・・・・・・・・・・・27,177 ・・・・・・・・・・・・・・35,378・・・・・・・・・・・281・・・・・・・・・・381
10(7)・・ピートと秘密の友達・・・・・・・・・9/28・・・・・・・・・・・・18,184・・・・・・・・・・・・・・88,276・・・・・・・・・・・707・・・・・・・・・・138
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 前週1位の「阿修羅」はもう勢いがなくなって後退し、3ヵ月ぶりに外国映画がトップに立ちました。
 今回の新登場は5・8・9位の3作品です。
 5位「ラッキー」は、日本映画「鍵泥棒のメソッド」を原作にした韓国のコメディ。冷酷な殺し屋りヒョンウク(ユ・ヘジン)は、偶然立ち寄った銭湯で石鹸を踏んで転倒し、過去の記憶を失くしてしまいます。一方、人気も生活の意欲もなく死ぬことを決心した無名俳優のジェソン(イ・ジュン)は身辺整理のために立ち寄った同じ銭湯でヒョンウクを見かけ、自分と彼のカギを取り替えて逃げます。以後ヒョンウクは自分がジェソンだと思ったまま、俳優として成功するために努力しますが・・・。.銭湯のカギのために運命が変わってしまった(!?)2人、結局どうなる? 原題は「럭키(ラッキー)」なのですが、英題は「LUCK-KEY」。なるほどね。
 8位「殺してくれる女」は、韓国のドラマ。鐘路一帯で老人を相手にかろうじて生計を立てている65歳のソヨン(ユン・ヨジョン)は老人たちに人気のバッカスハルモニ(公園等で客を誘う中高年の売春婦)。トランスジェンダーである家主ティナ、障害を持つ貧しい成人フィギュア作家ドフン(ユン・ゲサン)、性感染症治療のために立ち寄った病院で会って連れてきたコピノ(フィリピン人との混血)の少年ミノ等、隣人と共に大変ながらも平和な日々を過ごしている中、ある日脳卒中で倒れたかつての常連客ソン老人から自分を殺してくれという切なる願いを受けて、ソヨンは葛藤の末殺してしまうことに・・・。それ以来、生きるのが辛くて死にたいという客たちからの依頼が続き、ソヨンは混乱に陥ってしまいますが・・・。ということで、韓国の今の社会問題を反映した作品のようですね。おっ、あの全茂松(チョン・ムソン.75歳)も出演してるのか!(→コチラ参照。) 原題は「죽여주는 여자」です。
 9位「網」は、今年のベネチア国際映画祭でワールドプレミアとして初上映されたキム・キドク監督作品。船が網に引っ掛かったため、北朝鮮の漁師チョルウ(リュ・スンボム)は、やむなく1人で南北の境界線を越えてしまいます。韓国側の情報要員は、チョルウを怪しく思い、監視し始めます。韓国での熾烈な1週間を耐えぬいて、チョルウははたして北に残された家族のもとに戻ることができるのか・・・。原題は「그물」です。この作品は、今年のフィルメックスでは開幕作として上映されることが決まっています。

【多様性映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(22)・・殺してくれる女(韓国) ・・・・・・・・10/06 ・・・・・・・・・・・・・・32,470・・・・・・・・・・・・43,976・・・・・・・・・・・・・342 ・・・・・・・・313
2(16)・・デシエルト ・・・・・・・・・・・・・・・・・・10/05 ・・・・・・・・・・・・・・・4,586・・・・・・・・・・・・10,916・・・・・・・・・・・・・・84 ・・・・・・・・113
3(5)・・ラヴニール ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9/29・・・・・・・・・・・・・・・・3,028 ・・・・・・・・・・・・12,376・・・・・・・・・・・・・・98 ・・・・・・・・・28
4(6)・・ロビンソン・クルーソー・・・・・・・・・9/07・・・・・・・・・・・・・・・・2,806 ・・・・・・・・・・・136,382・・・・・・・・・・・1,049 ・・・・・・・・・37
5(2)・・カフェ・ソサエティ・・・・・・・・・・・・・・9/14・・・・・・・・・・・・・・・・2,634 ・・・・・・・・・・・120,297 ・・・・・・・・・・・・997 ・・・・・・・・・31

 今回の新登場は1位と2位の2作品です。
 1位「殺してくれる女」については上述しました。
 2位「デシエルト」(仮)はメキシコ・フランス合作作品。タイトルの「DESIERTO」はスペイン語で「砂漠」の意味。アメリカとメキシコを隔てる国境付近の砂漠が物語の舞台です。その一帯では、違法に国境を越えてアメリカ国内に入るメキシコ人の移民の問題が存在しています。そんな不法移民たちが「」をを描いたサスペンス映画が「Desierto」です。国境を越えて息子に会うために密入国しようとするモーセもその1人。ところが、彼らが殺伐とした国境地帯を越えた時、狩猟で糧を得ながら怒りと被害意識を抱いて生きているアメリカ人の殺し屋サムに仲間たちが無惨に撃ち殺されていきます。最後に生き残ったモーセは、自分をねらう殺し屋の銃口を避けようと隠れ場所を探すのですが・・・。国境警備を名目にターゲットにされ、射殺される人間狩りの恐怖。トランプ氏は高い壁を築くことを主張していますが、それで解決する ?? 韓国題は韓国題は「디시에르토」です。

北朝鮮で禁じられた2つの歌♪♪  ②「われらの願いは統一(ウリエ ソウォヌン トンイル)」

$
0
0
 3つ前の記事→<韓国ではだれでも知っている、北朝鮮で禁じられた2つの歌♪♪ ①「朝露(アチミスル)」>の続きです。

 先の記事の「朝露」と比べて、今回の「われらの願いは統一(우리의 소원은 통일.ウリエ ソウォヌン トンイル)」が日本でどれくらい知られているのか、私ヌルボはよくわかりません。ただ、民族学校に通っていた人たちは学校で教わったはずなので皆知っていると思います。また、韓国では初等学校の音楽の授業で長く教えられてきた歌なので、見出しの通り「誰もが知っている」と言ってよいでしょう。
 つまり、この歌は北朝鮮でも韓国でも歌われてきた歌です。※韓国では「われらの願い(우리의 소원.ウリエソウォン)」と短い曲名になっています。

 とりあえず、どんな歌か聴いてみてください。YouTubeにいろいろありますが、とりあえず音楽教材らしいものを貼っておきます。


 これ以外にも、朴槿恵大統領が合唱団の中に入って歌っている動画(→コチラ)等があります。

 一方、この歌は北朝鮮でも歌われてきました。1990年10月10日(朝鮮労働党創建記念日)に催されたマスゲームの動画を見てみましょう。


 この歌を私ヌルボが知ったのは1991年。先の「朝露」の記事で少し書いたように、初めて北朝鮮に行った時のこと。現地に着く前に旅行団中にけっこういた朝鮮総聯関係の人から教わったのか、着いてから案内員氏に教わったのかは思い出せません。とにかく、その時に朝鮮語で教わって覚えたのがこの「われらの願いは統一」です。

 歌詞とその日本語訳は次の通りです。
    우리의 소원은 통일
 꿈에도 소원은 통일
 이 정성 다해서 통일
 (※北朝鮮では 이 목숨 다 바쳐 통일)
 통일을 이루자

 이 겨레 살리는 통일
 이 나라 살리는 통일
 통일이여 어서 오라
 통일이여 오라  われらの願いは統一
 夢にも願いは統一
 このまごころを込めて統一
 (※北朝鮮では「この命をすべて捧げて統一」)
 統一を成しとげよう

 このはらからを救う統一
 この国を救う統一
 統一よ早く来い
 統一よ来い
 この歌の作詞者は安碩柱(アン・ソクチュ.1901~50)。号は夕影(ソギョン)で、日本の統治期に挿絵画家等として活躍した人物です。(→コチラの過去記事で少し書きました。)
 そして作曲者が彼の息子の安丙元(アン・ビョンウォン.1926~2015)。1947年当時ソウル大の学生だった彼が3月1日の三一節特集ラジオドラマの主題歌として父親の詞に曲をつけ発表したのがこの歌でした。その時の歌詞は「우리의 소원은 독립 /꿈에도 소원이 독립 /이목숨 바쳐도 독립 /독립이여 오라 /이겨레 살리는 독립 /이나라 찾는데 독립 /독립이여 어서오라 /독립이여 오라」というもので、「統一」ではなく「独立(독립)」 を希求する内容になっていて、歌詞も少し違っていました。(当時の南北朝鮮は、それぞれ米ソの軍政下に置かれていた。)
 しかし翌1948年に大韓民国政府が樹立されて南北の分断が既成事実化され、韓国の教科書にこの歌が掲載される時、歌詞が現在のように変わって「私たちの願いは統一」と歌われるようになりました。

 以後もっぱら韓国で歌われてきたこの歌が北朝鮮で歌われることになったのは、1989年。全大協(全国大学生代表者協議会)の代表として世界青年学生祝典に参加するため国禁を侵して平壌入りした20歳の女子学生林秀卿(イム・スギョン)(→右画像)が現地で歌ったのが契機になりました。
 ※林秀卿は現在共に民主党の国会議員。彼女についての過去記事は→コチラ

 その後2000年の南北首脳会談の際、金大中と金正日が6.15南北共同宣言に署名した後に手をつないでこの歌を歌い、その前月の平壌オリニ(子供)芸術団のソウル公演でも最後に歌われたのはこの歌でした。
 ※2009年8月23日金大中元大統領の国葬でも弔歌の1つとして演奏された。
 ※利川市の青江(チョンガン)文化産業大学大学校に安丙元が直接書いた楽譜と歌詞を刻んだ歌碑が建立されている。

 今年8月初め、このような歴史をもつ歌が北朝鮮で禁止されたというニュースが韓国で大きく報じられました。発信源はアメリカ政府系のRFA(自由アジア放送)。北朝鮮咸鏡北道のある消息通が「人々の疑問が増幅している」という反応とともに伝えた情報(→コチラ参照.韓国語)です。
 
 TVニュースでも、たとえばYTNは上述のようなこの歌の来歴も含めて詳しく報じています。(下の動画)


 放送の中で、禁止の理由として「金正恩の願いは(統一よりも)軍事強国になること」としていますが、これは上のRFA(自由アジア放送)の記事中の「禁止曲選定とともに伝達された金正恩の指示内容にそのように規定されている」とあるのをふまえたものです。そして7月から禁止曲の統制が強化され、これに反した者には厳罰を科すよう指示が下されたということです。
 上の動画の最後、アナウンサーの背後の大きな字「멀어진 소원 ‘통일’」は「遠くなった願い‘統一’」で、アナウンサーも「われらの願いは遠くなったようです」という言葉で締めくくっています。

 ところで、この「われらの願いは統一」は「統一」の部分を別の言葉に変えて歌われることがあります。→コチラの動画は北朝鮮の公式アカウントuriminzokkiriによってアップされたものですが、1番の「統一」に続けて2番は「自主」、3番は「民主」と歌われています。
 →コチラは、この歌についてとても手際よくまとめられた記事ですが、そこでは「統一」を「自由」に置き換えた歌詞が載っています。(うーむ、これはどこかで歌った記憶があるゾ。) もしかして80年代民主化闘争の中で歌われたのかな? その記事に7つ動画が貼ってありますが、その一番下に2012年3月の中国による脱北者強制送還に対する(韓国内の脱北者による)抗議行動の動画があります。そこで彼らが歌っているのは「われらの願いは自由」。(YouTubeは→コチラ。)
 はたして、今北朝鮮内で「われらの願いは自由」と歌われたりしているかどうかはわかりません。しかし、10月12日の毎日新聞の記事「韓国 脱北者、国内在住は3万人突破へ」(→コチラ)によると、脱北者に脱北の理由を訊くと「2001年以前は7割弱が「空腹や経済難」と答えていたが、14〜16年では同じ回答が1割強へと減少。01年以前は1割に満たなかった「自由への憧れ」は3割強に増加した」とのこと。もしかしたら「朝露」を禁止したのと同様に、金正恩や住民の統制担当部署はこの歌自体に<何か危険な要素>を感じたのかもしれません。

 先日、ある脱北者の方に「「ウリエ ソウォヌン トンイル」が北韓で禁止されましたよ」と言ったら、即座に「金正恩は統一を望んでないんですよ。独裁者でいられなくなるから」という声が返ってきました。正鵠を射ている・・・って、もしかして周知の事実かも。昨年あたりからの朴槿恵をはじめとする連中の統一論議は金正恩にとってはやっかいなところでしょうね。

【作曲者の故・安丙元(アン・ビョンウォン)さんの所蔵品】

韓国内の映画 NAVER映画の人気順位 と 週末の興行成績 [10月14日(金)~10月16日(日)]

$
0
0
 10月14日の毎日新聞夕刊の「シネマの週末」で、「いまの若い子たちはこんなに窮屈な世界で生きているんだ!とかわいそうになった」というのは「何者」(三浦大輔監督)に対する(山)氏の寸評ですが、これはそのまま「映画「聲の形」」にもあてはまるなーと思いました。ふつうの10代の少年少女たちの間の意思疎通の問題が(無意識下に)まずあって、その集団の中に聴覚障碍者の女の子が入ってきたことによって顕在化するといった感じか? 昨夜午後7時20分からの回で100人をはるかに超える観客の平均年齢をほとんど1人で引き上げていた私ヌルボでしたが(笑)、感動というよりも(山)氏同様ずっとキュークツな思いで観ていました。山田尚子監督作品はこれまでも「映画 けいおん!」も「たまこラブストーリー」も観ていてけっこう好きなんですが、それでも世代間の感覚の違いはいかんともしがたいかな?

 キネマ旬報の<オールタイムベスト・ベスト100外国映画編(1999年版)>(→コチラ参照)でヌルボが観てない作品が2割弱。その1つだった「アルジェの戦い」をやっと観てきました。ドキュメンタリーではないものの、史実に即したリアリティが実感される作品で、こういうのを観ると独立運動・抵抗運動を描いた凡百の娯楽作品が色褪せて見えてしまうようです。(別に「暗殺」のことを思い浮かべているわけではありません、とは言えません。(笑)) <NAVER映画>の「알제리 전투(アルジェリ戦闘)」(→コチラ)を見ると、「植民地の痛みを経験した韓国人にとっては格別の映画。韓国の抗日闘争を扱った記録映画も早く出てくればと思うが・・・」というコメントもありました。(どんな映画をイメージしているか、知りたいところです。)

 今月末~11月にかけて<コリアン・シネマ・ウィーク>、<新大久保映画祭>と続き、ヌルボも一段と忙しくなります。他にもやることがいろいろあるんだけどな。また無料の映画が多いのはいいとしても、横浜からだと電車賃がかさむのがアタマの痛いところ。しかし、10月31日の「キム・ソンダル 大河を売った詐欺師たち」は前売の2千円でも高いのに、その後だと3千円とは!(こりゃあパスだな。) 11月19~27日は<東京フィルメックス>。→公式サイトによるとチケット販売は11月3日から。上映作品は→コチラの記事だと一目でわかります。韓国映画はコンペティション部門ではイ・ヒョンジュ監督「恋物語(연애담)」とユン・ガウン監督「私たち(우리들)」の2作品。特別招待作品ではキム・ギドク監督「THE NET 網に囚われた男(그물)」だけで、計3作品です。

  「朝鮮日報」の「封切映画 ぴったり10字評」は先週も掲載されませんでしたが、どうも2週間ばかり前から「映画200字評」というのが始まったような・・・。(→コチラ。) そこで挙げられている9作品について小見出しと★の数だけ紹介します。
◇ユ・ヘジンのファンならば・・・・「ラッキー」 ★★
◇平凡なアクション・・・・「バスティーユ・デイ」 ★★
◇キム・ギドクの視線が向かう所・・・・「THE NET 網に囚われた男」 ★★★
◇カギ1つの緊張感・・・・「ドント・ブリーズ」 ★★★☆
◇ナルシシズムに陥って暴力だけ残ったが・・・・「阿修羅」 ★★
◇また笑ってしまった・・・・「ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期」 ★★☆
◇ティム・バートンだからとて残念な・・・・「ミス・ペレグリンと奇妙な子どもたち」 ★★★
◇クラスは永遠だ・・・・「カフェ・ソサエティ」 ★★★☆
◇時代が揺り動かす心たち・・・・「密偵」 ★★★

         ★★★ NAVERの人気順位(10月18日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
             ※評点の後の( )は採点者数

①(1) おばあちゃんの遠い家(韓国)  9.52(107)
②(-) フィドルスティックス  9.50(6)
③(-) 自白(韓国)  9.44(980)
④(-) クロウズ・エッグ  9.39(57)
⑤(2) Bringing Tibet Home ~故郷を引き寄せて~(韓国等)  9.39(76)
⑥(3) ドロップボックス(韓国)  9.34(92)
⑦(4) KING OF PRISM by PrettyRhythm(日本)  9.33(1,176)
⑧(6) 私たち(韓国)  9.21(957)
⑨(7) ハドソン川の奇跡  9.19(2,148)
⑩(5) 影たちの島(韓国)  9.19(94)

 今回の新登場は、②③④の3作品です。
 ②「フィドルスティックス」(仮)は、ドイツのファイト・ヘルマー監督によるキッズ・ムービー。ドイツのボラーズドルフにはかつていろんな分野で活躍したお年寄りがたくさん住んでいます。ところがある日、消費者調査会社のGKFによってボールラス村がヨーロッパの中心に位置しているという理由だけで<平均の村>に選定され、革新的な新製品のテスト場となります。村の大人たちは政策的に平均を守ろうとして、平均年齢以上の年齢になった高齢者を厄介払いして老人ホームに送り込んでしまいます。そこで幼い孫たち6人はおじいちゃん、おばあちゃんたちを救出しようと作戦を開始します・・・。世界各地の子供映画祭で受賞した作品。韓国題は「우리친구 피들스틱스」。日本公開は未定のようです。
 ③「自白」は、2013年韓国のニュースでかなり大きく取り上げられた<脱北者偽装スパイ事件>をめぐるドキュメンタリー。2012年に脱北した華僑出身のソウル市公務員ユ・ウソン氏は国家情報院によりスパイとして捕まります。国家情報院が出した明確な証拠は妹の自白でした。ところが、もしかして国家情報院が嘘をついているのでは、と疑いを抱いたチェ・スンホディレクターが動き、2015年10月大法院(最高裁)は、ユ・ウソンさんの国家保安法違反の疑いについて無罪を宣告しました。しかし、ただこの事件だけだったのか?と、韓国、中国、日本、タイを40ヵ月間行き来し追跡した末、スパイ操作事件の実体が明らかになります・・・。この事件については→コチラ参照。(かなり<北朝鮮寄り>のブログですが・・・。) 原題は「자백」です。
 ④「クロウズ・エッグ」(仮)はインド(タミル語)のドラマ&コメディ。英題の「Crow's Egg」は「カラスの卵」。貧しいながらもお母さん、おばあちゃんと一緒に楽しく暮らすスラム街の兄弟。ニワトリの卵を買うお金がなくてカラスの卵を拾って食べているので「デカ卵&チビ卵」とよばれています。しかしいつも明るくたくましく日々を送っています。そんなある日、カラスの巣があった木が切られ、そこに夢の食べ物ピザを売る店ができます。ピザを食べるという目標ができますが、兄弟の稼ぎは1日10ルピーだけ。ピザ1枚の300ルピーはあまりにも大きなお金です。30日間の幸せ探しのプロジェクトの結末はいかに? 韓国題は「행복까지 30일(幸福まで30日)」。日本公開は未定のようですが、ヌルボとしてはぜひ公開してほしいところ。

     【記者・評論家による順位】
             ※評点の後の( )は採点者数
①(1) キャロル  8.96(13)
②(2) ラヴニール  8.0(6)
③(3) ハドソン川の奇跡  7.86(7)
④(4) アガシ(韓国)  7.68(18)
⑤(-) 自白(韓国)  7.67(10)
⑥(5) 私たち(韓国)  7.66(14)
⑦(6) ドロップ・ボックス(韓国)  7.66(1)
⑧(7) 密偵(韓国)  7.50(12)
⑨(8) ナショナル・ギャラリー 英国の至宝  7.50(4)
⑩(9) THE NET 網に囚われた男(韓国)  7.25(8)

 ⑥「自白」だけが今回の新登場です。この作品については上後述しました。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績10月16日(金)~10月18日(日) ★★★

         <脇役俳優>ユ・ヘジン主演の「ラッキー」が堂々1位に
【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・・累積収入・・・・上映館数
1(5)・・ラッキー(韓国) ・・・・・・・・・・・・・10/13・・・・・・・・・1,642,608・・・・・・・・・・・2,002,710 ・・・・・・・・16,728・・・・・・・・1,158
2(1)・・ミス・ペレグリンと奇妙な子どもたち・・9/28・・・・272,252 ・・・・・・・・・・・2,491,687・・・・・・・・20,067・・・・・・・・・・649
3(2)・・ドント・ブリーズ ・・・・・・・・・・・・・10/05・・・・・・・・・・156,813・・・・・・・・・・・・・894,284 ・・・・・・・・・7,571・・・・・・・・・・487
4(3)・・ブリジット・ジョーンズの日記・・9/28 ・・・・・・・・・・・57,034・・・・・・・・・・・・・760,822 ・・・・・・・・・6,220・・・・・・・・・・335
       ダメな私の最後のモテ期
5(新)・・バスティーユ・デイ・・・・・・・・・10/13 ・・・・・・・・・・・54,345 ・・・・・・・・・・・・・・70,034・・・・・・・・・・・568・・・・・・・・・・422
6(新)・・ザ・コンサルタント ・・・・・・・・・10/13 ・・・・・・・・・・・39,218 ・・・・・・・・・・・・・・48,715・・・・・・・・・・・394・・・・・・・・・・375
7(27)・・自白(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・10/13 ・・・・・・・・・・・39,218 ・・・・・・・・・・・・・・48,715・・・・・・・・・・・394・・・・・・・・・・375
8(3)・・阿修羅(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・・9/28・・・・・・・・・・・・27,235 ・・・・・・・・・・・2,557,328 ・・・・・・・・20,458 ・・・・・・・・・376
9(6)・・ハドソン川の奇跡 ・・・・・・・・・・・9/28・・・・・・・・・・・・23,161 ・・・・・・・・・・・・・607,850 ・・・・・・・・・5,096・・・・・・・・・・234
10(14)・・劇場版プリバラ ・・・・・・・・・・10/13 ・・・・・・・・・・・13,917 ・・・・・・・・・・・・・・20,934 ・・・・・・・・・・・176・・・・・・・・・・157
       み~んなあつまれ!プリズム☆ツアーズ(日本・韓国)
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 今回の新登場は5・6・7・10位の4作品です。
 5位「バスティーユ・デイ」はアメリカ・フランス合作のアクション。パリで爆破事件が発生し、スリの青年が容疑者としてCIAに逮捕されます。無実が証明されますが、さらなる大規模テロの可能性が発覚。スリの腕を買われた青年は、こわもてのCIA捜査官とを組んで捜査協力することになりますが・・・。韓国題は「바스티유 데이」。日本公開は来年3月です。
 6位「ザ・コンサルタント」は、アメリカのサスペンス・アクション。自閉症児と誤解受けたアインシュタイン等と比肩されるほどの数学の天才クリスチャン(ベン・アフレック)は、自分の才能を生かして麻薬組織の黒い金を扱う会計士として暮らしています。そんな中、彼は密かに行ったことによって組織と国双方の標的にされてしまいます。そして今、彼は昼間は会計士、夜には殺し屋だった自分の本性を現わし、同時に彼らと相対することになります・・・。韓国題は「어카운턴트」日本公開は来年1月です。
 7位「自白」については上述しました。
 10位「劇場版プリパラ み~んなあつまれ!プリズム☆ツアーズ」については私ヌルボ書く資格ナシ。このところ新海誠監督とか山田尚子監督作品のことを書いたりしてますが、「プリパラ」はかなーり遠い遠い所にある感じで・・・。この作品、<NAVER映画>では韓国作品になってるのですが、合作? 韓国題は「극장판 프리파라 모두 모여라! 프리즘☆투어즈」です。

【多様性映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(8)・・自白(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・10/13 ・・・・・・・・・・・・・・30,770 ・・・・・・・・・・・・58,244 ・・・・・・・・・・・・460 ・・・・・・・・152
2(1)・・殺してくれる女(韓国)・・・・・・・・・10/06・・・・・・・・・・・・・・・12,705 ・・・・・・・・・・・・83,937 ・・・・・・・・・・・・623 ・・・・・・・・121
3(3)・・ラヴニール ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9/29・・・・・・・・・・・・・・・・1,920 ・・・・・・・・・・・・16,751 ・・・・・・・・・・・・132 ・・・・・・・・・19
4(4)・・ロビンソン・クルーソー・・・・・・・・・9/07・・・・・・・・・・・・・・・・1,202 ・・・・・・・・・・・137,698・・・・・・・・・・・1,059 ・・・・・・・・・17
5(5)・・カフェ・ソサエティ・・・・・・・・・・・・・・9/14・・・・・・・・・・・・・・・・1,108 ・・・・・・・・・・・123,025・・・・・・・・・・・1,019 ・・・・・・・・・11

 今回の新登場は1位「自白」だけですが、これについては上述しました。

多角的に見る韓国映画「暗殺」(ネタバレほとんどナシ) ⑤韓国でようやく知られ始めた金元鳳(キム・ウォンボン)と義烈団

$
0
0
 このシリーズの前記事(→コチラ)から1ヵ月近く立ってしまいました。初回(→コチラ)からは4ヵ月。やれやれ。

 さて、前回の記事ではこの映画「暗殺」に登場する歴史上の人物2人のうち、まず韓国では100%に近い人が知っている金九(キム・グ)のことを書きました。
 今回はもう1人の金元鳳(キム・ウォンボン.김원봉)について、です。金九に比べると、知名度ははるかに低い、いや桁違いに低いと言っても過言ではないほどです。(その理由は後述。)

        上左は映画「暗殺」中の金元鳳(チョ・スンウ)。右は実際の金元鳳の写真。なかなか魅力的な風貌ではないですか。

 今回はいつもとは違って、金元鳳がどんな人物なのか、最初から要点をかいつまんで書くことにします。
 とりあえず一言で言うと、彼は抗日テロ組織義烈団の首領」です。

 以下、彼の生涯を4つの時期に分けてたどっていきます。

[1]10代から武器(爆弾と銃器)による抗日闘争に傾注。

〇1898年密陽で生まれる。
 ※「暗殺」の中でも「密陽の人、金元鳳です」と名乗っている。(字幕では略されているけど・・・。)
〇1910年韓国併合の時、在学していた中学の校長の感化を受けて抗日の気概を抱き、その中学が日帝により閉鎖された後は市街地から離れた表忠寺で1年間生活して「孫子」「呉子」等の兵書を読む。
〇1916年軍事学を学ぶため天津にあるドイツ人経営の徳華学校に入学。

[2]義烈団を創設し、1920年代半ばまで数々の爆弾テロ事件を起こす。

〇1919年パリ講和会議に際し日本の全権西園寺公望の暗殺を謀り旧知の金鉄城を送り込むが穏健派の朝鮮人に武器弾薬を盗まれ未遂に終わる。三一独立運動が勃発したことを中国・済南で知るが、独立宣言書に失望。(武力抗争を伴わなかったため。)

〇同年6~9月西間島の新興武官学校で爆弾製造法等を学ぶ。(※<速射砲>ことチュ・サンオク(チョ・ジヌン)はこの学校出身。
〇同年11月吉林城巴虎門外で13人により義烈団を創設し、団長となる。
〇1920~26年義烈団の団員により次のような事件を起こす。
 ・釜山警察署爆弾事件(1920年9月)・密陽警察署爆弾事件(1920年11月)・朝鮮総督府爆弾事件(1921年9月)・上海黄浦灘事件[陸軍大将田中義一暗殺未遂](1922年3月)・鍾路警察署爆弾事件及び都心(1923年1月)・東京二重橋爆弾事件(1924年1月)・北京スパイ暗殺事件[1](1925年3月)・東洋拓殖会社・殖産銀行襲撃事件(1926年12月)

 ☆ここまでの金元鳳の前半生については、越北作家の朴泰遠(パク・テウォン)著「金若山と義烈団」(皓星社.1980.→右画像)に詳述されています。この本によると、義烈団が企図した事件は上掲の事件だけでなく、創設以来1925年までの7年間に数百の事件を計画したとのことです。

[3]本格的な軍事組織確立をめざす。左翼勢力との提携を進める。

〇1926年黄浦軍官学校に入学。上記のような暗殺や破壊活動を続けても独立を勝ち取ることはできず、また民衆を覚醒させることもできなかった、と悟った彼は、本格的な軍事組織結成のための第一歩として選んだ道がこの軍官学校への入学だった。

 ★映画「暗殺」の誤り(その1)
  つまり金元鳳は1920年代半ばにはすでに爆弾テロの限界を悟っていた。事実1926年に東洋拓殖会社爆破事件以来義烈団は実質的に活動をしていない。映画に描かれた暗殺作戦は1933年なので年代がずれている。

〇1920年代後半からは中国国民党政府(蒋介石)と中国共産党の両方とも手を結んだ。1929年にはソ連のコミンテルンからも支援を受けた。
〇1932年朝鮮革命幹部学校を開設。1935年には独立運動団体5つを合わせて民族革命党を作った。
〇1938年軍事組織の朝鮮義勇隊を結成し中国国民党と連携して活動。
〇1939年民族革命党の臨時政府合流を決め、朝鮮義勇隊の主力軍は光復軍に編入された。〇1940年代金元鳳は光復軍副司令官を経て、臨時政府軍務部長に就任した。
       
【1944年当時の大韓民国臨時政府組織図。軍務部長に金元鳳(朝鮮民族革命党)の名がある。(白凡記念館) 】
 ★映画「暗殺」の誤り(その2)
  映画の最初の方で金九と金元鳳が親しく言葉を交わして連帯意識を示す場面があるが、実際の20〜30年代は強固な反共主義者金九と、左翼勢力のシンパともいえる金元鳳との間は相当に深刻な状態だった。金元鳳が臨時政府の軍務部長に就任した等々も、積極的な協力というよりは日本という巨大な敵の前の呉越同舟体制に過ぎなかった。

[4]戦後は南北統一を目指すも結局は越北し要職に就くが、粛清の嵐の中で自殺?

〇光復(終戦)後臨時政府の要人たちと共に帰国。1945年9月朝鮮人民共和国の軍事副将に選任される。(朝鮮人民共和国は日の目を見ることはなかったが。)
1946年2月民族主義民族戦線の共同議長に推戴された。
〇1947年3月南朝鮮労働党が主導したゼネストに関連して「親日」警察として有名だった盧徳述(ノ・トクスル.映画「暗殺」のヨム・ソクチン(イ・ジョンジェ)のモデルの1人?)に逮捕され、拷問された。
〇1948年、南北分断を避けたい彼は金九等と共に北朝鮮に赴いて全朝鮮諸政党社会団体代表者連席会議に参加したが、会議が成果もなく終わるとそのまま北朝鮮に残り、朝鮮民主主義人民共和国政府樹立に参加した。
〇1948年9月北朝鮮政権が樹立されると、国家検閲相に任命された。以後労働相、朝鮮労働党中央委員会中央委員、最高人民会議常任委員会副委員長等の高い地位を歴任した。
〇1958年誕生60周年を記念して北朝鮮政権から労働勲章を授与された。しかし南労党派・延安派が粛清された時に失脚し、その直後に死亡した。青酸カリを飲んで自殺したとの説も流れる中、死亡した時期や経緯も知られていない。
〇密陽に残された金元鳳の家族たちも「パルゲンイ(=アカ)」の家族として迫害され、兄弟4人は朝鮮戦争の時の保導連盟虐殺事件(→ウィキペディア)で処刑された。

 義烈団以来、部下や仲間たちが数多く死んでいった中、日帝からは最高額の懸賞金が懸けられたという彼が光復の時まで生き延びたのは非常に幸運だったといえるでしょう。しかしそんな彼がその後同じ朝鮮人に逮捕され拷問を受けたり、さらには自ら選んで行った北朝鮮で排斥され死に追いやられたとはなんと皮肉なことか・・・。

《付記》 「越北人士」の金元鳳は韓国で長く無視されてきたが、映画「暗殺」を機に地元密陽でも注目
 
 冒頭で、「韓国では金元鳳の知名度は低い」と書きました。上述のように、独立運動家であっても左翼系の人物であれば無視され、歴史教科書にも載らなかったからです。
 私ヌルボも、この金元鳳のことを知ったのは、昨夏の歴史教科書国定化をめぐる問題が大きく取沙汰される中でのニュース記事に出てきてからです。
 たとえば→コチラの東亜日報(日本語版)の「柳寛順と金元鳳」という見出しの社説。主旨は「近年歴史教科書は左派寄りのイデオロギーにより偏向している」というもので、その例として日本でもわりと知られている三一独立運動の際捕らわれて獄死した<朝鮮のジャンヌ・ダルク>柳寛順が教科書8種のうち4種に止まっているのに対し、金元鳳はすべての教科書で扱われていることがあげられています。記事によると、歴史学界では「柳寛順は梨花学堂出身の親日人物が発掘して英雄に仕立てたため教科書に記していない」のだそうです。一方金元鳳はというと「1948年北朝鮮に渡って、北朝鮮で労働相や最高人民会議代議員などの要職を歴任した人物」。つまり<親日>を厳しく糾弾し、北朝鮮に寛容な左派寄りの内容というわけです。同様のニュースは新聞だけでなく、TVでも取り上げられました。

         上左は東亜日報の記事より。右はTV朝鮮のニュース映像。画面下のテロップは「‘柳寛順より金元鳳’・・・教科書偏向論議」です。
 ※シリーズ最初の記事で書いたように、東亜日報もTV朝鮮(朝鮮日報の系列)も保守系の代表メディアで、とてもわかりやすい図式です。
 ・・・というわけで、金元鳳はこれまで韓国人の間でも柳寛順に比べると知名度ははるかに低い人物でした。いや、この映画「暗殺」によってはじめて知ったという人が大半のようです。韓国のQ&Aサイトを見ると「金元鳳ってどんな人ですか?」という質問もあるほど。また→コチラの京郷新聞の記事(韓国語)は、彼について年譜付きの詳しい内容で参考になりましたが、その見出しは「映画「暗殺」で再び注目されている若山金元鳳」です。※「若山(ヤクサン)は金元鳳の号。
 「反共」が国是とされ、パルゲンイが絶対悪とされた1980年代頃までと違って、90年代以降は主に左派系勢力によって「親日派の清算」を求める声が強まりましたが、そんな風潮が金元鳳に対する評価の逆転に相応しているというわけです。
 彼の生地密陽でも、少し前まではほとんど知る人もいなかった彼の生家跡一帯は、他の抗日義士の遺跡とともに「ヘチョン抗日運動テーマ街(해천항일운동테마거리)と名付けられて整備が進められているようです。
 ※下の画像参照。あるいは→コチラの記事(韓国語)にたくさん写真が載っています。

            【金元鳳の生家跡(左)と、ヘチョン抗日運動テーマ街の案内図(右)】
【ヘチョン抗日運動テーマ街には、このような壁画がいくつもある。】
 このシリーズはあと1回続きます。

韓国内の映画 NAVER映画の人気順位 と 週末の興行成績 [10月21日(金)~10月23日(日)]

$
0
0
 川崎市市民ミュージアムは、上映日は土日だけですが、他では観られないような作品をしばしば上映してくれています。(「学生府君神位」を観たのはいつだったかな?) で、22日(土)には「チョンリマ 千里馬」を観てきました。この1960年代の北朝鮮の「発展のようすを描いた」ドキュメンタリーを私ヌルボが最初に観たのはなんと半世紀前! 北朝鮮も韓国も日本も、以後大きく変わり、そしてヌルボ自身のこの映画の受けとめ方もずいぶん変わることだろうなと思いつつ、武蔵小杉まで足を運びました。その感想等は近日中に記事にする予定です。

 23日(日)の夜は、シネマ・ベティで「暗殺」。5月に続いて2度目の鑑賞。どうしても確認したいことがいくつかあったので・・・。まず懸案の<多角的に見る韓国映画「暗殺」>シリーズを完成させなくては・・・。

 以前から、なぜ日本は大方の洋画の公開が韓国より何ヵ月も遅いのか疑問に思ってきました。最近たまたま→コチラの記事を読んでわかりました。その主に理由は次の3つです。
 ①十分な宣伝をするため。 
 ②「全米1位」や「興行収入○○円」等、アピールポイントを作るため。
 ③配給会社の事情。配給契約の金額を決めるためにも、海外での人気(集客状況等)を見る。海賊版の出やすいアジア圏と違って日本は海賊版の流出が少ないため、焦って公開する必要がない。また長期休暇に合わせての公開にしたり、話題作同士がぶつからないように調整する。
・・・というわけです。韓国が早いのではなくて日本が遅いのですね。なるほどですが、では韓国等はこれらの配慮はそんなにしないのでしょうかね?
   「朝鮮日報」10月21日掲載の「封切映画 ぴったり10字評」 (ハングル文も訳文も10字です。)。)  「歩き王」
   1等でなくても大丈夫 ★★★☆


 「メン・イン・キャット」
   K.スペイシーがネコに ★★★


 「ザ・ビートルズ~EIGHT DAYS A WEEK‐The Touring Years」
   愛するしかないあなた ★★★

 「インフェルノ」
    多い言葉につききれず ★★★


 「暴力の法則:悪い血、2番目の話」
    校内暴力? 復讐は君の事 ★★★

 「鬼談百景 劇場版」
   「こんなことが・・・」の恐怖編 ★★


 「ネオン・デーモン」
   様式を追って道に迷う ★★


 「鬼談百景 劇場版」(2015)は小野不由美原作のホラーで10話からなるオムニバスですが、日本でもDVDのみで一般公開されてないようなので認知度はどれほど? 「ネオン・デーモン」(仮)は米・仏・デンマーク合作のスリラー。危険なモデル業界に足を踏み入れることで、自分もまた危険な存在へとなっていく主人公を「マレフィセント」のエル・ファニングが演じています。他の作品はすべて以下の記事の中で紹介しています。
         ★★★ NAVERの人気順位(10月25日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
             ※評点の後の( )は採点者数
①(-) パラノイド・ガールズ  9.67(6)
②(2) フィドルスティックス  9.50(10)
③(1) おばあちゃんの遠い家(韓国)  9.48(112)
④(3) 自白(韓国)  9.40(1,675)
⑤(5) Bringing Tibet Home ~故郷を引き寄せて~(韓国等)  9.39(76)
⑥(-) 暴力の法則:悪い血、2番目の話(韓国)  9.33(30)
⑦(7) KING OF PRISM by PrettyRhythm(日本)  9.29(1,218)
⑧(8) 私たち(韓国)  9.20(1,000)
⑩(10) 影たちの島(韓国)  9.20(95)

 今回の新登場は、①と⑥の2作品です。
 ①「パラノイド・ガールズ」(仮)は、スペインのコメディ。
主人公のアンナは大都市に上京した女子大生で、ファッションブロガー。彼女が暮らすことになった家の家主ポーラはモデルエージェンシーで働いているということでファッション熱は一段と高まり、結局そこで一緒に働くことに。その後同じ職場で親しくなったベロニカも含めて3人は親友になりますが、ある日アンナはポーラの元カレに会ったらまさに「私のタイプ」。そして他の2人には言えない秘密ができてしまいます・・・。韓国題は「아이엠 어 모델」。日本公開は未定のようです。
 ⑥「暴力の法則:悪い血、2番目の話」は韓国のドラマ。男子高校生ソンジン(キム・ヨンヨン)が学校暴力が原因で自殺してしまいます。その3年後、加害者の1人(?)の女子コ・ヨンジ(ハン・ヨウル)が芸能人としてデビューします。ソンジンの苦痛を悟ってあげられなかった罪の意識に苦しんできたソンジンの兄のソンヒョン(キム・ヨンム)は、コ・ヨンジのことが取り上げられた記事に、ソンジンは自殺ではなく彼女によって殺されたというカキコミがあるのを見つけます。事件の真相を知ったソンヒョンは復讐を始めるのですが・・・。原題は「폭력의 법칙: 나쁜 피 두 번째 이야기」です。

     【記者・評論家による順位】
             ※評点の後の( )は採点者数
①(1) キャロル  8.96(13)
②(2) ラヴニール  8.00(6)
③(3) ハドソン川の奇跡  7.75(8)
④(4) アガシ(韓国)  7.68(18)
⑤(5) 自白(韓国)  7.67(10)
⑥(6) 私たち(韓国)  7.66(14)
⑦(8) 密偵(韓国)  7.50(12)
⑧(-) 「BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント  7.45(5)
⑨(10) THE NET 網に囚われた男(韓国)  7.25(8)
⑩(-) トンネル(韓国)  7.21(14)

 入れ替わりはありましたが、本ブログ新登場はありません。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績10月16日(金)~10月18日(日) ★★★

         「ラッキー」が快調に400万人を突破
【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・・累積収入・・・・上映館数
1(1)・・ラッキー(韓国) ・・・・・・・・・・・・・10/13・・・・・・・・・1,461,931・・・・・・・・・・・4,341,378 ・・・・・・・・35,675・・・・・・・・1,234
2(18)・・インフェルノ・・・・・・・・・・・・・・・10/19 ・・・・・・・・・・349,314・・・・・・・・・・・・・472,658 ・・・・・・・・・3,989・・・・・・・・・・753
3(2)・・ミス・ペレグリンと奇妙な子どもたち・・9/28・・・・109,941 ・・・・・・・・・・・2,666,614・・・・・・・・21,446・・・・・・・・・・468
4(3)・・ドント・ブリーズ・・・・・・・・・・・・・10/05・・・・・・・・・・・・45,141 ・・・・・・・・・・・・・986,337・・・・・・・・・8,342・・・・・・・・・・333
5(29)・・歩き王(韓国)・・・・・・・・・・・・・・10/20 ・・・・・・・・・・・42,163 ・・・・・・・・・・・・・・62,256・・・・・・・・・・・487・・・・・・・・・・462
6(55)・・きみに読む物語・・・・・・2004/11/26 ・・・・・・・・・・・32,172 ・・・・・・・・・・・・・470,017・・・・・・・・・3,128・・・・・・・・・・142
7(4)・・ブリジット・ジョーンズの日記・・9/28 ・・・・・・・・・・・18,996・・・・・・・・・・・・・・803,939・・・・・・・・・6,547・・・・・・・・・・137
       ダメな私の最後のモテ期
8(7)・・自白(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・・10/13 ・・・・・・・・・・・15,181 ・・・・・・・・・・・・・・90,473・・・・・・・・・・・715・・・・・・・・・・・87
9(新)・・メン・イン・キャット・・・・・・・・・・10/19 ・・・・・・・・・・・14,307 ・・・・・・・・・・・・・・19,217・・・・・・・・・・・152・・・・・・・・・・241
10(新)・・ハリー・ポッターと死の秘宝PART2・・2011/07/13・・12,754・・・・・・・4,416,035・・・・・・・・34,628 ・・・・・・・・・・24
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 今回の新登場は2・5・6・9・10位の5作品です。
 2位「インフェルノ」は、日本でも10月28日(金)公開。諸情報が出ているので説明は省略します。韓国題は「인페르노」です。
 5位「歩き王」は、「怪しい彼女」等のシム・ウンギョン主演の青春ドラマ。活発な女子高生のマンボク(シム・ウンギョン)は、4歳の時に発見された先天的乗り物酔い症候群のためすべての乗り物に乗ることができないず、徒歩で往復4時間かけて通学しています。
何かにつけ「早く!」とか「がんばって!」とか急かされる中で、テキトーに暮らしたいという彼女でしたが、ある日意外な「警報(キョンボ)」が鳴り始めます。彼女の驚くべき通学時間に感心した担任の先生の推薦で「競歩(キョンボ)」を始めることになったのです。勉強は嫌いでも、なぜか運動はやれそう、と思ったらそうは問屋が・・・。はたしてマンボクは競歩を通して新しい自分に出会えるのでしょうか? 原題は「걷기왕」です。
 6位「きみに読む物語」は、2004年公開のアメリカ映画の再上映です。韓国題は「노트북(ノートブック)」です。
 7位「メン・イン・キャット」は、アメリカのコメディ。大企業の社長トム(ケヴィン・スペイシー)は、仕事一筋で家庭をかえりみない傲慢な男。ある日娘の11歳の誕生日プレゼントに嫌々ながら猫を買ったのですが、帰る途中にビルから転落してしまいます。するとその拍子に、なんと彼の意識は猫の体へ・・・。やがて家族にペットとして迎えられる・・・ってどういうふうにケリをつけるのかな? 韓国題は「미스터 캣」。日本公開は11月25日です。
 10位「ハリー・ポッターと死の秘宝PART2」は2011年の旧作の再上映。このシニーズ、私ヌルボは全然観てないのです。韓国題は「해리포터와 죽음의 성물2」です。

【多様性映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(1)・・自白(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・10/13 ・・・・・・・・・・・・・・15,181 ・・・・・・・・・・・・90,473 ・・・・・・・・・・・・715 ・・・・・・・・・87
2(新)・・メン・イン・ザ・キャット・・・・・・・・10/19・・・・・・・・・・・・・・・14,307 ・・・・・・・・・・・・19,217 ・・・・・・・・・・・・152 ・・・・・・・・241
3(3)・・殺してくれる女(韓国)・・・・・・・・・10/06・・・・・・・・・・・・・・・・6,591 ・・・・・・・・・・・101,610 ・・・・・・・・・・・・753 ・・・・・・・・・84
4(17)・・ザ・ビートルズ ・・・・・・・・・・・・・・・9/29・・・・・・・・・・・・・・・・6,247・・・・・・・・・・・・・10,758 ・・・・・・・・・・・・・88 ・・・・・・・・150
       ~EIGHT DAYS A WEEK‐The Touring Years
5(2)・・映画 きかんしゃトーマス・・・・・・・9/29・・・・・・・・・・・・・・・・4,711・・・・・・・・・・・・・23,056 ・・・・・・・・・・・・167 ・・・・・・・・119
       勇者とソドー島の怪物(モンスター)

 今回の新登場は2・4・5位の3作品です。
 2位の「メン・イン・ザ・キャット」については上述しました。
 4位の「ザ・ビートルズ~EIGHT DAYS A WEEK‐The Touring Years」は、日本では9月に公開されてます。韓国題は「비틀스: 에잇 데이즈 어 위크 – 투어링 이어즈」です。
 5位の「映画 きかんしゃトーマス 勇者とソドー島の怪物(モンスター)」は、日本では2015年4月に公開されています。韓国題は「토마스와 친구들: 용감한 기관차와 괴물소동」です。

多角的に見る韓国映画「暗殺」(ネタバレほとんどナシ) ⑥「日本軍により3469人が殺された事件」というのは何だ?

$
0
0
<多角的に見る韓国映画「暗殺」(ネタバレほとんどナシ)>
 → ①<進歩系>映画と<保守系>映画
 → ②昨年来日本統治期を背景とした作品が増えている
 → ③韓国では、日本統治期の見方が変わりつつある(?)
 → ④判別がむずかしい<史実>と<虚構>の間
 → ⑤韓国でようやく知られ始めた金元鳳(キム・ウォンボン)と義烈団

 映画の中の<史実>と<虚構>を判別することはむずかしいですが、今回の記事のメインは「<史実>として描かれていることがはたして本当に<史実>なのか?」という問題です。

 金元鳳(キム・ウォンボン)が上海にやってきたアン・オギュンと会った時、「<狡兎三窟>というように云々」といった話に続けてで・・・」等々というかつて(1920年)間島(カンド.旧満州の朝鮮との国境に近い一帯)方面で繰り広げられた抗日独立軍の戦いと、それに敗北した日本軍が報復として多数の無辜の民間人(朝鮮人)を虐殺したことを語ります。そして「オギュンは、そこにいたのか?」と問うと、彼女は次のように答えます。
 「はい。火で焼かれ釜で茹でられ・・・。27日間で3469人が虐殺されました。・・・私の母も殺されましたが私は生き残りました。」
 ・・・このあたり、セリフがそのまま字幕になっているわけではなく、かろうじて聴き取ったことをメモするにも展開(&言葉)が速いので、かなり大雑把です。
 ※上記の虐殺を行ったのが第19師団で、1920年当時の師団長は高島友武中将でしたが、映画では川口守中将という架空の人物になっています。その息子が川口俊輔(?)大尉で、物語中の悪玉中の1人。オギュンにとってはこの暗殺計画が自身の敵討ちにもなっているというわけです。川口守中将のモデルは、1929~30年の師団長で32~34年には朝鮮軍司令官だった川島義之中将と思われます。名前の最初も「川」だし・・・。このあたりはフィクションと史実が巧妙に接ぎ木されている部分。

 さて本題。
 オギュンの話に出てくる「27日間で3469人が虐殺」という数字は字幕にもそのまま表示されています。しかし、ほとんどの日本人にとっては金元鳳の言うように(?)「誰でも知っていること」ではないですよね。それにしても、「大」虐殺というべきこの事件はそもそも何という事件なのか? (韓国語聴き取り能力がもっとあれば言ってたのかも・・・)
 この数字を手がかりにネット検索に取りかかったところで私ヌルボがぼんやり思い出した本が鄭銀淑「中国東北部の「昭和」を歩く」。鄭銀淑(チョン・ウンスク)さん、アチコチのマッコリ酒場を飲み歩いているだけでなく、「昭和」の残影を追って中国東北部まで足を延ばしているんですね。
 この本の中の<琿春の旅>と題された部分に、たしかにこの事件についての記述がありました。琿春(フンチュン.こんしゅん)は、当時は北間島(プッカンド)とよばれた中国・延辺朝鮮族自治州東端、つまり中朝国境の最北東部にあり、ロシアとの国境も至近という都市です。(下の地図参照。)
 【白頭山(長白山)の東の豆満江沿いの地は間島とよばれていたが、後に西の鴨緑江沿いの地が西間島(ソガンド)とよばれるようになるとともに北間島というようになった。】

 で、鄭銀淑さんが琿春を訪れるにあたって、予備知識のような形でこの事件のあらましを次のように記しています。
 ・1920年10月2日未明、400余人の馬賊団が琿春を襲撃、日本領事館や商店等に火を放ち、100人余を拉致し、多くの財物を奪った。これを琿春事件という。
 ・これ以前から間島の地は独立勢力の拠点となり、抗日闘争が展開されていた。琿春事件の3か月前の1920年6月には(洪範図(ホン・ボムド)将軍の指揮する)朝鮮独立軍との鳳梧洞(ポンオドン)戦闘で日本軍は惨敗し大打撃を受けた。
 ・日本は朝鮮人抗日勢力の討伐を図ったが、間島は中国領土なので、軍事作戦を実行するには適当な理由が必要だった。
 ・そんな中で起こった琿春事件は日本にとって絶好の理由となった。「日本人の人命と財産を保護する」という名目で中国との事前交渉や連絡もないまま大規模な兵力を投入した。
 ・この「絶妙のタイミング」ゆえ、韓国ではこの「事件」が日本によって周到に準備されたものであるという説が唱えられている。
 ・こうして出兵した日本軍は、琿春の他、延吉、和龍、汪清等4県69の村で3600人余りの朝鮮人を殺害し、3500軒余りの家屋、59の学校、19の教会、5万9900余石の穀物を燃やした。この大惨事を韓国では<庚申年大討伐>(あるいは間島惨変・庚申惨変)という。

 日本のウィキペディアでは、<琿春事件>のことは<間島事件>という見出し語の中で説明されています。(→コチラ。) また、韓国のウィキペディア(→コチラ)では間島惨変とされている日本軍の出兵とそれに続く「作戦行動」については単に<間島出兵>という主観を排した(?)見出し語になっています。(→コチラ。)
 また、日韓双方のウィキペディアを読み比べると、まさに対照的な説明に驚くばかりです。日本側の<間島事件>の説明文中には「謀略説」として紹介されている上述の「日本によって周到に準備されたもの」という説が韓国ウィキペディアではそのまま説明の基軸となっています。また、韓国側の<間島事件>の説明文には「罪のない韓国人を大量に虐殺した」こと、そして「10月9日から11月5日までの27日間、間島一帯で虐殺された朝鮮人たちは現在確認されている数だけでも3469人にのぼる」と、「暗殺」のセリフに出てきた数字があげられ、さらに「その他確認されていない数と3~4ヵ月にわたって虐殺された数を合わせると少なくとも数万人に達する」等と記されています。日本側の<間島出兵>の記事には、最後に次のようにサラッと書かれている程度です。
 大韓民国臨時政府の機関紙である『独立新聞』は、1920年12月19日付で、その調査資料によるとして26,265人が虐殺、71人が強姦され、民家3,208軒、学校39校、教会15ヶ所、穀物53,265石が焼却されたと報道した。韓国側では、戦いに敗れた日本軍は独立軍の根拠地を掃討するために朝鮮人を無差別に虐殺し、集落ごと焼き払った「間島惨変(庚申惨変)」を引き起こし、その犠牲者は少なくとも3469人としている。日本側の史料によれば日本軍に反抗した、独立軍の幹部だった等の理由で射殺された朝鮮・中国人の数は500人余りである。
 日韓間の歴史的出来事についての認識の落差は、出兵した日本軍と金佐鎮(キム・チャジン)等が指揮した武装組織が戦った青山里戦闘についても呆れるほど如実に表れています。これについては、<日韓のWikipediaを比較する>という記事(→コチラ)に具体的に書かれています。日本軍の戦死者数が2ケタ違うばかりか、日本軍と独立軍のどちらが勝ったか?からして違うのです。

 琿春事件がはたして日本側が仕組んだものだったか否か? 青山里戦闘は戦死者がどれほどでどちらが勝ったのか? 間島出兵でどれほどの無辜の朝鮮人住民が虐殺されたのか?
 これら対立する説のどちらが本当の<史実>なのか、民族感情や政治的立場等々を排して見極めることは大変むずかしいことだと図書館で関係書籍をいくつか読んで通関しました。
 たとえば次のような分厚い本2冊。
     
 左は姜徳相(編)「現代史資料 28朝鮮」(みすず書房)、右は佐々木春隆「韓国独立運動の研究」(国書刊行会)。在日の歴史家・姜徳相氏と、陸士卒の元軍人で戦後は自衛隊に入隊し、退官後は防衛大教授となった佐々木春隆氏という2人の経歴だけ見ても、資料の読み方からして違ってくるだろうことはわかります。ただ、どちらも非常に内容の濃い本です。前者は基本的に琿春事件と間島作戦についての日本の公的文書や独立新聞」等の朝鮮側の資料や中国その他の新聞記事等を集成した資料集です。件(くだん)の3469人という犠牲者数も、<臨時政府間島通信員確報>として1920年12月18日付「独立新聞」に掲載された「西北間島同胞の惨状血報」という記事の表にある数字であることがわかります。(下画像)
      上の2つは表の最初と最後の部分だけです。その間に、たとえばあの詩人・尹東柱(1907~1945)の出生地・明東の明東学校が焼かれたことも記録されています。(彼の詳細な伝記・宋友恵「尹東柱評伝」にもそのことが記されている。)
 これらの資料、とくに「日本軍による蛮行」についての具体的な事例の記事を見ると、たしかにリアリティが感じられます。(・・・ということと数字の信頼性は直結するものではありませんが・・・。)
 もう一方の「韓国独立運動の研究」について。著者の経歴だけで「右翼の妄言」と決めつけるなかれ、です。864ページに及ぶ大著で、19世紀半ばから終戦までの朝鮮の民族運動・独立運動について詳細に記しています。「「併合」は不可であった」とか、「日本と韓国は、未来永劫の隣人である。互いの歴史を踏まえたうえで、未来に思いを寄せねばならないと考える」等々のくだりは、左翼の目からは意外と思われるかもしれません。内容も、独立運動の側や民族主義の立場から書かれた本にはほとんど載っていないような独立運動組織内での内訌や、金日成の本物ニセ者をめぐる件、普天堡(ポチョンボ)戦闘(保田襲撃事件)の事実等々、興味深い記事がいくつもありました。そして肝心の琿春事件についてはいくつかの根拠をあげて謀略説を否定し、青山里戦闘については詳述していますが、間島作戦での「日本軍の蛮行」については何も(!)書いていません。
 
 私ヌルボ、図書館で上記の、ああるいはそれ以外にも何冊かの関係書籍をざっと拾い読みした程度ですが、痛感したことは資料を読み解くことのむずかしさです。どういう立場の誰がどんな状況で書いたものかを常に念頭に置く必要があります。またそれらについて書かれた本、たとえば上記の2冊についても同様で、姜徳相氏による<資料解説>も資料を読み解く手引きであると同時に、もしかしたらミスリードとなっている可能性もなきにしもあらず、です。
 新聞記事も、いつも事実を伝えているとはかぎりません。下の画像は、琿春の日本領事館焼打ち事件を報じた1920年10月4日付の「東京朝日新聞」の紙面です。
 もちろん日本側の謀略の疑い云々が書かれているわけはなく、読者は記事をそのまま事実として受けとめるでしょう。しかし、現在のわれわれは張作霖爆殺事件も柳条湖事件も謀略だったことを知っています。そしてもしかすると上海日本人僧侶襲撃事件(→ウィキペディア)も・・・。そうしたことも考えると私ヌルボ、今のところ琿春事件の謀略説は否定しきれません。
 一方、上の新聞紙面の上に釜山警察署爆弾テロ事件の記事があります。このシリーズの1つ前の記事(→コチラ)で少し書いた義烈団の団員による事件です。この事件について、朴泰遠(パク・テウォンが金元鳳から話を聞いて書いたという「金若山と義烈団」には警察署長はまもなく絶命したとありますが、この新聞記事によると「右膝に擦過傷」と全然違っています。どうもこれは新聞の方が正しいように思われます。
 現代でもメディアリテラシーの重要性は高まるばかりです。新聞の場合でも、取材の不備が誤報を招いたり、記者の願望や読者への迎合が真実を歪めたりということは今もしばしばあり、あるいは政治権力等が政治的意図によって虚偽のニュースを流したり、あるいはメディア自体が特定の方向に国民を扇動したりといったことも過去にあったし・・・。もちろん、昔の新聞を読む時にも細心の注意が必要ということです。

 間島方面での抗日独立運動関係では、文字資料の他に写真資料もいろいろありました。たとえば下の写真。

 これは黒羽清隆・梶村秀樹「日本の侵略・中国/朝鮮 写真記録」(ほるぷ出版)に載っているもので、「処刑される間島の朝鮮人」と下に書かれています。こういう写真も、いつどこで、どういう状況の中で撮られたものか不明確なものは要注意ですが、少なくともどこかこういう所で、このようにして殺された人たちがいたということは確かと思われます。

 いろいろ書き連ねましたが、最初に戻ってアン・オギュン(チョン・ジヒョン)の「火で焼かれ釜で茹でられ・・・。27日間で3469人が虐殺されました。・・・私の母も殺されましたが私は生き残りました。」というセリフについて。私自身の今の所の判断は、「釜で茹でられ」とか「3469人が虐殺」とかについての信憑性については疑問があるものの、多くの家や学校等が日本軍によって焼かれたり、多数の朝鮮人が殺され、その中には単に家の中から抗日のビラが見つかった程度のことでその場で殺された人も相当数いたのは事実なのでは、と思います。そして、そういった程度でも、個人的には高校の歴史でも同時期のシベリア出兵とともに(関連づけて)教えるべきレベルの出来事ではないでしょうか?

 また、韓国の側に対しても、専門家の間でも見解の分かれるこのような問題についてまぎれもない<史実>として映画で描き、それを観客が観てそのまま享けとめることでますます<史実>として固定化されていってしまうことに懸念を覚えます。この件にかぎらず、日韓の歴史教育のあり方や、ドラマや映画での歴史の描き方がますます双方の歴史認識の差を広げてしまっているようです。

 ※右は延辺人民出版社で刊行された「朝鮮族簡史」の翻訳本の「抗日朝鮮義勇軍の真相」(新人物往来社)。中国東北部で展開された抗日運動を清朝の頃の前史から第2次大戦の終わり頃までのスパンで叙述した本で、韓国の抗日運動史では少ししか(or全然)扱われない左翼系による闘争についてもいろいろ書かれています。
Viewing all 664 articles
Browse latest View live