▸今年第72回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドール賞に輝いた韓国映画「寄生虫」(英題:PARASITE)が「パラサイト 半地下の家族」という邦題で2020年1月公開されることになりました。の日本版ポスターと予告編が公開されました。→コチラの記事でおよその内容の他、予告編も見られます(が、30秒ではほとんどわかりません)。
また一部で注目されている(?)のが日本のポスターが韓国のものと違うこと。なんでだろ?
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▸映画の星取表といえば、「キネ旬Review」(→コチラ)と「週刊文春」のシネマチャートは毎号見ています。「週刊文春」の方はウェブサイト(→コチラ)でも見られます。で、その最新号(9月5日号)を見ると、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」に合計24点がつけられているではないですか。5人中1人だけ4点で他の4人は全員5点。(→コチラ。)
私が初めてタランティーノ作品を観たのは「レザボア・ドッグス」(1994)だったか? しかしほとんど記憶なし。続いて「パルプ・フィクション」(1994)は評判よさそうだからと観に行ったら、なんか猥雑な感じでとくにおもしろさとか感動とかもなし。自分とは相性がよくなさそうなので以後25年間はずっとご無沙汰。しかしシネマチャートの見出しに「タランティーノの最高傑作か!?」ともあることだし、どんなものかと観てきました。そして感想はというと、<ぴあ映画生活>の次のようなレビューとほぼ同じ。「あまり期待せず劇場に足を運んだが、やはり、こいつの作風は「パルプ・フィクション」から一歩も変わっていない。」「良くも悪くもタランティーノ」。また「本作では様々な映画への愛情が感じられるとともに、当時の時代背景を象徴する映画が実名で登場する。『ジョアンナ』の大きな看板があったり、シャロン・テートが映画館で自分の出演映画『サイレンサー/破壊舞台』を観たり、『大脱走』…とキリがない。」というのはたしかにその通り。
若い世代(だけじゃないか)のかなり多くが「事前にシャロン・テート事件とか予備知識を仕入れて行った方がいい」と書いていたのはわかるような気がします。そういえば数年前、高校生と話をしていて「フォークソングってなんですか?」と訊かれてあせったことがあり、つい10日ほど前に話した大学生は38度線を知りませんでした。
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」は1969年2月8日の場面から始まります。当時大学生だった私ヌルボ、「夢のカリフォルニア」や「ミセス・ロビンソン」は懐かしさを覚えます。(「サークルゲーム」もだけど、ちょっと年がずれてない?) そんな旧世代にとって、何十年も若い新世代がこの映画をどう受け止めるかよくわかりません。が、なんらかの意識・認識をつなぐことにはなると思います。(明治・大正生まれの世代も、ヌルボのような戦後世代にいかんともしがたい<断絶感>を感じることも多かったんだろうな、と今思います。)
※映画には関係ないけど、話題の中国SF「三体」に「それから半世紀を経て、歴史学者たちの意見が一致しているのは、一九六九年に起きたこの事件が、それ以降の人類の歴史におけるターニングポイントだったということである。」という一節がありました。(いろいろネタに事欠かない時代です。)
▸8月29日に観た「北の果ての小さな村で」では、グリーンランドの今を、そして31日に観た「ガーンジー島の読書会の秘密」では名前も知らなかったイギリス海峡の島の歴史を知ることができました。どちらも作る姿勢がピュアで好感のもてる作品でした。後者の主演女優リリー・ジェームズはちょっとクラシカルな美人で印象的。
▸シネマ・ジャック&ベティで 7日(土)・8日(日)<インチョンから横浜まで ミリム劇場×シネマ・ジャック&ベティ同時上映展>が開かれ、その中で韓国のドキュメンタリー「1991、春」と「妓生(キーセン):花の告白」が上映されます。(日本初公開) 「工作 黒金星と呼ばれた男」の上映もすでに始まっています。詳しくは→コチラ。
★★★ NAVERの人気順位(9月3日現在上映中映画) ★★★
【ネチズンによる順位】
※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。
①(2) 痛いほど愛する(韓国) 9.65(150)
②(1) 愛の贈り物(韓国) 9.60(247)
③(3) 主戦場 9.53(896)
④(4) アラジン 9.39(26,199)
⑤(6) レッドシューズ(韓国) 9.26(3,591)
⑥(7) 教会のお兄さん(韓国) 9.26(1,530)
⑦(-) トイ・ストーリー4 9.09(6,497)
⑧(-) 明かりの下で(韓国) 9.09(11)
⑨(9) 伊丹潤の海(韓国) 9.06(126)
⑩(-) 私の家(韓国) 9.02(322)
⑧と⑩の2作品が新登場です。
⑧「明かりの下で」はインディミュージシャンたちを扱った韓国のドキュメンタリー。舞台の上では限りなくかっこよく見え、ファンタスティックで好きなことをやって生きてるように見えても、彼らは実際にはこの時代の青年たちの姿と大きく変わることはありません。常に現実に悩まされつつハードな毎日を生き、より良い明日に向かって努力する青年たちです。このドキュメンタリーでは、映画の中の主人公であるロックンロールラジオ、ウェイステッドジャニーズ、そしてザ・ルースターズのエネルギーあふれる音楽と公演を楽しむ一方で、誰よりも素朴で親しみやすい生活の話を通じてこの時代を生きる青年なら誰でも大きな共感や感動が得られる作品とのことです。原題は「불빛 아래서」です。
⑩「私の家」は、韓国のドラマ。「私の家は本当になぜこうなの?」 毎日言い争う両親が悩みの12歳のハナ(キム・ナヨン)と、しょっちゅう引越しをするのが嫌だというユミ(キム・シア)、ユジン(チュ・イェリム)姉妹は、夏休み近所でたまたま出会い、心を通じて親しくなります。くつろぎのない家族に対する悩みを打ち明け合って仲良しになった3人は、何よりも大切なそれぞれの<わが家>を守るために冒険を敢行するのですが・・・。原題は「우리집」です。
【記者・評論家による順位】
①(1) 寄生虫[パラサイト](韓国) 9.06(16)
②(2) 幸福なラザロ 8.40(5)
③(-) ハチドリ(韓国) 8.38(13)
④(3) トイ・ストーリー4 8.09(11)
⑤(6) 主戦場 7.33(6)
⑥(7) EXIT(韓国) 7.23(13)
⑦(-) ユヨルの音楽アルバム(韓国) 7.13(8)
⑧(8) 僕はイエス様が嫌い(日本) 7.00(4)
⑨(-) 私の家(韓国) 6.90(10)
⑩(10) ジョン・ウィック:パラベラム 6.88(8)
③⑦⑨の3作品が新登場です。
③「ハチドリ」と⑦「ユ・ヨルの音楽アルバム」については後述します。
⑨「私の家」については上述しました。
★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績8月30日(金)~9月1日(日) ★★★
「ユ・ヨルの音楽アルバム」が1位だが、注目は10位「ハチドリ」!
【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(15)・・ユ・ヨルの音楽アルバム(韓国)・・8/28・・・・・・・・412,110・・・・・・・・684,519・・・・・・・・・5,510 ・・・・・・1,078
2(1)・・変身(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・8/21 ・・・・・・・・・364,143 ・・・・・・1,500,003 ・・・・・・・12,852・・・・・・・・934
3(3)・・EXIT(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・・・7/31 ・・・・・・・・・297,559 ・・・・・・8,917,869・・・・・・・・74,988 ・・・・・・・800
4(2)・・ワイルド・スピード・・・・・・・・・・・8/14 ・・・・・・・・・224,269 ・・・・・・3,418,608・・・・・・・・30,236 ・・・・・・・671
/スーパーコンボ
5(新)・・47メーターズ・ダウン・・・・・・・・8/28 ・・・・・・・・・192,416・・・・・・・・311,242・・・・・・・・・2,515 ・・・・・・・644
アンケイジド
6(5)・・鳳梧洞[ポンオドン]戦闘(韓国)・・8/07・・・・・・・・・・79,555 ・・・・・・4,712,713・・・・・・・・40,030・・・・・・・513
7(4)・・役者たち:風聞操作団(韓国)・・・8/21 ・・・・・・・・・・52,705・・・・・・・・597,756・・・・・・・・・4,931・・・・・・・505
8(新)・・アンナ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8/28 ・・・・・・・・・・45,731 ・・・・・・・・73,250 ・・・・・・・・・・600 ・・・・・・・425
9(6)・・カレント・ウォー ・・・・・・・・・・・・・8/22 ・・・・・・・・・・22,134 ・・・・・・・194,261・・・・・・・・・1,694 ・・・・・・・193
10(新)・・ハチドリ(韓国)・・・・・・・・・・・・・8/29 ・・・・・・・・・・14,219 ・・・・・・・・20,942 ・・・・・・・・・・178 ・・・・・・・140
※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。
「変身」はやっぱり1週で2位に後退。しかし新1位の「ユ・ヨルの音楽アルバム」も数字的にも内容的にも今ひとつパンチに欠けるような・・・。
今回の新登場は1・5・8・10位の4作品です。
1位「ユ・ヨルの音楽アルバム」は、韓国のドラマ&ラブロマンス。タイトルの「ユ・ヨルの音楽アルバム」とはKBS Cool FMで1994~2007年の13年間、午前9~11時放送されて多くのリスナーの記憶に残っている番組です。物語は、1994年10月1日、歌手ユ・ヨルがこの番組でラジオDJを初めて担当した日に始まります。母親の残したパン屋で働いていたミス(キム・ゴウン)は、たまたま客として訪れたヒョヌ(チョン・ヘイン)に心がときめきますが、思わぬアクシデントでヒョヌと連絡が取れなくなります。あなたは戻ってこないだろうと思いながらもヒョヌを待ち続けたミスは、ある日奇跡のようにヒョヌと再会しますが、2人の状況はどんどんずれていくばかり。一緒に聴いていた番組「ユヨルの音楽アルバム」のように、2人ははたして互いの周波数を合わせられるでしょうか・・・。原題は「유열의 음악앨범」です。
5位「47メーターズ・ダウン アンケイジド」(仮)は、米英合作のホラー。2017年公開の「海底47m」の続編で、シルベスター・スタローンの娘システィーン・スタローンの女優デビュー作です。物語のキモは前作同様<サメの恐怖>です。舞台はブラジル。ティーン・エイジャーの女性4人がスキューバダイビング・・・といっても、水没した都市の廃墟を探る探検で海底洞窟に潜るのですが、そこで突然急流が発生し、そのまま洞窟の奥へと押し流されてしまいます。迷宮のように入り組んだ洞窟から脱出するのは容易ではありません。そればかりか、そこはなんと、凶暴なサメの棲息地だったのです・・・。韓国題は「47미터 2」。日本公開は年内のようです。
8位「アンナ」は、アメリカのアクション&スリラー。フランスのリュック・ベッソン監督作品です。主人公アンナはパリのトップモデル。演じる女優サーシャ・ルスも、ロシアのトップモデルでもあります。ところが、アンナのモデルというのは実は偽装で、正体は凄腕の<殺し屋>。フォークやナイフを使って10人のマフィアを撃退し、ソ連軍の地下防空壕に侵入し、次のミッションの待つパリに乗り込んだという・・・。韓国題は「안나」。日本での劇場公開は未定、かな?
10位「ハチドリ」は、韓国のドラマ。キム・ボラ監督(女性)初の長編というこの作品は、昨年の第23回釜山国際映画祭で最優秀アジア映画賞・観客賞を受賞。今年の第36回エルサレム国際映画祭でも最優秀長編デビュー作品賞を受賞する等、これまで世界の映画祭で「25冠王」という偉業を遂げたとのことです。(→コチラ参照。) 各映画評、観た人のレビューにも目を通したところ、最近の公開作中で1番の注目作と言ってよさそうです。時代は1994年。主人公は14歳の女子中学生ウニ(パク・ジフ)。彼女は周囲から愛されるために、世界と自分だけの関係を構築していきます。タイトルの「ハチドリ」は、愛されるのは下手だが不断の努力をするウニを1秒に90回羽ばたきをするハチドリに喩えているようです。そんな彼女に進むべき道を示してくれた<航海士>が漢文学院のキム・ヨンジ先生(キム・セビョク)先生でした・・・。なぜ1994年かというと、(監督によれば)聖水大橋が崩落した年を背景に作ろうと考えた、とのこと。また、その事件がウニが結んでいた関係の崩壊につながり、また韓国社会でいくつもの崩壊が起こる時、彼女がどのように生を乗り越えていくのかを示すことが重要だったとも・・・。とくにドラマチックなストーリーが進行するという作品でもない?(詳しくは→コチラ)ようですが、多くの観客はウニの物語が当時の自分の話のように共感したとのこと。映画評論家ソン・ヒョジョンは「エドワード・ヤンの初期作品が思い浮かぶ」と評していますが、キム・ボラ監督自身も「ヤンヤン 夏の想い出」を参考にした」そうで、また「一個人が主人公ではなく、互いに影響を及ぼしあう形が似ていたらと思った」と語ったそうです。評論家や映画記者の評を見ると、「一番平凡な少女が書いた大叙事詩」(イ・ジヘ)、「個人の経験談が普遍の感性として拡張される魔法」(チョン・ジウ)、「時代のしわを広げてアイロンがけした回想の映画。その頃願ったことを今聞かせる、幻想の映画」(ソン・ギョンウォン)、「デビュー作で驚くべき世界観、加えてしっかりした女性の視線を見せてくれたキム・ボラ監督の出現は、それ自体で韓国映画の事件として、より良い未来に記録されるに値する」(イ・ファジョン)等々。これはゼッタイ観なくちゃ・・・。原題は「벌새」です。
【独立・芸術映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・・・上映館数
1(1)・・カレント・ウォー・・・・・・・・・・・・・・・8/22 ・・・・・・・・22,134 ・・・・・・・194,261・・・・・・・・1,694 ・・・・・・・・・193
2(11)・・ガール・イン・ザ・ミラー・・・・・・・・8/21 ・・・・・・・・・2,817 ・・・・・・・・・7,135 ・・・・・・・・・・19 ・・・・・・・・・・・3
3(2)・・シェルブールの雨傘 ・・・・・・・1992/9/26 ・・・・・・・・・1,805 ・・・・・・・・10,417 ・・・・・・・・・・76 ・・・・・・・・・・20
4(3)・・伊丹潤の海(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・8/15 ・・・・・・・・・1,508 ・・・・・・・・18,246 ・・・・・・・・・150 ・・・・・・・・・・21
5(5)・・解き放たれて/Unleashed ・・・・・・・3/27 ・・・・・・・・・1,364 ・・・・・・・・14,157 ・・・・・・・・・・74 ・・・・・・・・・・・4
2位「ガール・イン・ザ・ミラー」が今回の新登場です。アメリカのスリラーで、主演はオリヴィア・ハッセーの娘インディア・アイズリー(父はオリヴィアの3人目の夫デヴィッド・アイズリー。※布施明は2人目。)。マリアは誰もが羨むような美少女なのに、両親には「出来損ない」と言われ、学校でもいじめられて孤独な日々を過ごしていました。不安定な心からバスルームで自慰行為にふけっていると、突然彼女に話しかけてくる女性の声が・・・。「私たちはきれいよ」と優しく告げるその声はマリアの声。そして鏡の中でほほ笑みを浮かべているのもマリアの顔。「あなたの望みを叶えたいの」と鏡の中のマリアにそう言われた瞬間からマリアの中の何かが変わり始めます。それは凄惨な復讐劇の始まりでした・・・。韓国題は原題そのままの「룩 어웨이(ルック・アウェイ)」。日本では、7~8月に新宿シネマカリテで開催された<カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2019>(カリコレ2019)で上映されました。
また一部で注目されている(?)のが日本のポスターが韓国のものと違うこと。なんでだろ?


▸映画の星取表といえば、「キネ旬Review」(→コチラ)と「週刊文春」のシネマチャートは毎号見ています。「週刊文春」の方はウェブサイト(→コチラ)でも見られます。で、その最新号(9月5日号)を見ると、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」に合計24点がつけられているではないですか。5人中1人だけ4点で他の4人は全員5点。(→コチラ。)
私が初めてタランティーノ作品を観たのは「レザボア・ドッグス」(1994)だったか? しかしほとんど記憶なし。続いて「パルプ・フィクション」(1994)は評判よさそうだからと観に行ったら、なんか猥雑な感じでとくにおもしろさとか感動とかもなし。自分とは相性がよくなさそうなので以後25年間はずっとご無沙汰。しかしシネマチャートの見出しに「タランティーノの最高傑作か!?」ともあることだし、どんなものかと観てきました。そして感想はというと、<ぴあ映画生活>の次のようなレビューとほぼ同じ。「あまり期待せず劇場に足を運んだが、やはり、こいつの作風は「パルプ・フィクション」から一歩も変わっていない。」「良くも悪くもタランティーノ」。また「本作では様々な映画への愛情が感じられるとともに、当時の時代背景を象徴する映画が実名で登場する。『ジョアンナ』の大きな看板があったり、シャロン・テートが映画館で自分の出演映画『サイレンサー/破壊舞台』を観たり、『大脱走』…とキリがない。」というのはたしかにその通り。
若い世代(だけじゃないか)のかなり多くが「事前にシャロン・テート事件とか予備知識を仕入れて行った方がいい」と書いていたのはわかるような気がします。そういえば数年前、高校生と話をしていて「フォークソングってなんですか?」と訊かれてあせったことがあり、つい10日ほど前に話した大学生は38度線を知りませんでした。
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」は1969年2月8日の場面から始まります。当時大学生だった私ヌルボ、「夢のカリフォルニア」や「ミセス・ロビンソン」は懐かしさを覚えます。(「サークルゲーム」もだけど、ちょっと年がずれてない?) そんな旧世代にとって、何十年も若い新世代がこの映画をどう受け止めるかよくわかりません。が、なんらかの意識・認識をつなぐことにはなると思います。(明治・大正生まれの世代も、ヌルボのような戦後世代にいかんともしがたい<断絶感>を感じることも多かったんだろうな、と今思います。)
※映画には関係ないけど、話題の中国SF「三体」に「それから半世紀を経て、歴史学者たちの意見が一致しているのは、一九六九年に起きたこの事件が、それ以降の人類の歴史におけるターニングポイントだったということである。」という一節がありました。(いろいろネタに事欠かない時代です。)
▸8月29日に観た「北の果ての小さな村で」では、グリーンランドの今を、そして31日に観た「ガーンジー島の読書会の秘密」では名前も知らなかったイギリス海峡の島の歴史を知ることができました。どちらも作る姿勢がピュアで好感のもてる作品でした。後者の主演女優リリー・ジェームズはちょっとクラシカルな美人で印象的。
▸シネマ・ジャック&ベティで 7日(土)・8日(日)<インチョンから横浜まで ミリム劇場×シネマ・ジャック&ベティ同時上映展>が開かれ、その中で韓国のドキュメンタリー「1991、春」と「妓生(キーセン):花の告白」が上映されます。(日本初公開) 「工作 黒金星と呼ばれた男」の上映もすでに始まっています。詳しくは→コチラ。
★★★ NAVERの人気順位(9月3日現在上映中映画) ★★★
【ネチズンによる順位】
※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。
①(2) 痛いほど愛する(韓国) 9.65(150)
②(1) 愛の贈り物(韓国) 9.60(247)
③(3) 主戦場 9.53(896)
④(4) アラジン 9.39(26,199)
⑤(6) レッドシューズ(韓国) 9.26(3,591)
⑥(7) 教会のお兄さん(韓国) 9.26(1,530)
⑦(-) トイ・ストーリー4 9.09(6,497)
⑧(-) 明かりの下で(韓国) 9.09(11)
⑨(9) 伊丹潤の海(韓国) 9.06(126)
⑩(-) 私の家(韓国) 9.02(322)
⑧と⑩の2作品が新登場です。
⑧「明かりの下で」はインディミュージシャンたちを扱った韓国のドキュメンタリー。舞台の上では限りなくかっこよく見え、ファンタスティックで好きなことをやって生きてるように見えても、彼らは実際にはこの時代の青年たちの姿と大きく変わることはありません。常に現実に悩まされつつハードな毎日を生き、より良い明日に向かって努力する青年たちです。このドキュメンタリーでは、映画の中の主人公であるロックンロールラジオ、ウェイステッドジャニーズ、そしてザ・ルースターズのエネルギーあふれる音楽と公演を楽しむ一方で、誰よりも素朴で親しみやすい生活の話を通じてこの時代を生きる青年なら誰でも大きな共感や感動が得られる作品とのことです。原題は「불빛 아래서」です。
⑩「私の家」は、韓国のドラマ。「私の家は本当になぜこうなの?」 毎日言い争う両親が悩みの12歳のハナ(キム・ナヨン)と、しょっちゅう引越しをするのが嫌だというユミ(キム・シア)、ユジン(チュ・イェリム)姉妹は、夏休み近所でたまたま出会い、心を通じて親しくなります。くつろぎのない家族に対する悩みを打ち明け合って仲良しになった3人は、何よりも大切なそれぞれの<わが家>を守るために冒険を敢行するのですが・・・。原題は「우리집」です。
【記者・評論家による順位】
①(1) 寄生虫[パラサイト](韓国) 9.06(16)
②(2) 幸福なラザロ 8.40(5)
③(-) ハチドリ(韓国) 8.38(13)
④(3) トイ・ストーリー4 8.09(11)
⑤(6) 主戦場 7.33(6)
⑥(7) EXIT(韓国) 7.23(13)
⑦(-) ユヨルの音楽アルバム(韓国) 7.13(8)
⑧(8) 僕はイエス様が嫌い(日本) 7.00(4)
⑨(-) 私の家(韓国) 6.90(10)
⑩(10) ジョン・ウィック:パラベラム 6.88(8)
③⑦⑨の3作品が新登場です。
③「ハチドリ」と⑦「ユ・ヨルの音楽アルバム」については後述します。
⑨「私の家」については上述しました。
★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績8月30日(金)~9月1日(日) ★★★
「ユ・ヨルの音楽アルバム」が1位だが、注目は10位「ハチドリ」!
【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(15)・・ユ・ヨルの音楽アルバム(韓国)・・8/28・・・・・・・・412,110・・・・・・・・684,519・・・・・・・・・5,510 ・・・・・・1,078
2(1)・・変身(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・8/21 ・・・・・・・・・364,143 ・・・・・・1,500,003 ・・・・・・・12,852・・・・・・・・934
3(3)・・EXIT(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・・・7/31 ・・・・・・・・・297,559 ・・・・・・8,917,869・・・・・・・・74,988 ・・・・・・・800
4(2)・・ワイルド・スピード・・・・・・・・・・・8/14 ・・・・・・・・・224,269 ・・・・・・3,418,608・・・・・・・・30,236 ・・・・・・・671
/スーパーコンボ
5(新)・・47メーターズ・ダウン・・・・・・・・8/28 ・・・・・・・・・192,416・・・・・・・・311,242・・・・・・・・・2,515 ・・・・・・・644
アンケイジド
6(5)・・鳳梧洞[ポンオドン]戦闘(韓国)・・8/07・・・・・・・・・・79,555 ・・・・・・4,712,713・・・・・・・・40,030・・・・・・・513
7(4)・・役者たち:風聞操作団(韓国)・・・8/21 ・・・・・・・・・・52,705・・・・・・・・597,756・・・・・・・・・4,931・・・・・・・505
8(新)・・アンナ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8/28 ・・・・・・・・・・45,731 ・・・・・・・・73,250 ・・・・・・・・・・600 ・・・・・・・425
9(6)・・カレント・ウォー ・・・・・・・・・・・・・8/22 ・・・・・・・・・・22,134 ・・・・・・・194,261・・・・・・・・・1,694 ・・・・・・・193
10(新)・・ハチドリ(韓国)・・・・・・・・・・・・・8/29 ・・・・・・・・・・14,219 ・・・・・・・・20,942 ・・・・・・・・・・178 ・・・・・・・140
※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。
「変身」はやっぱり1週で2位に後退。しかし新1位の「ユ・ヨルの音楽アルバム」も数字的にも内容的にも今ひとつパンチに欠けるような・・・。
今回の新登場は1・5・8・10位の4作品です。
1位「ユ・ヨルの音楽アルバム」は、韓国のドラマ&ラブロマンス。タイトルの「ユ・ヨルの音楽アルバム」とはKBS Cool FMで1994~2007年の13年間、午前9~11時放送されて多くのリスナーの記憶に残っている番組です。物語は、1994年10月1日、歌手ユ・ヨルがこの番組でラジオDJを初めて担当した日に始まります。母親の残したパン屋で働いていたミス(キム・ゴウン)は、たまたま客として訪れたヒョヌ(チョン・ヘイン)に心がときめきますが、思わぬアクシデントでヒョヌと連絡が取れなくなります。あなたは戻ってこないだろうと思いながらもヒョヌを待ち続けたミスは、ある日奇跡のようにヒョヌと再会しますが、2人の状況はどんどんずれていくばかり。一緒に聴いていた番組「ユヨルの音楽アルバム」のように、2人ははたして互いの周波数を合わせられるでしょうか・・・。原題は「유열의 음악앨범」です。
5位「47メーターズ・ダウン アンケイジド」(仮)は、米英合作のホラー。2017年公開の「海底47m」の続編で、シルベスター・スタローンの娘システィーン・スタローンの女優デビュー作です。物語のキモは前作同様<サメの恐怖>です。舞台はブラジル。ティーン・エイジャーの女性4人がスキューバダイビング・・・といっても、水没した都市の廃墟を探る探検で海底洞窟に潜るのですが、そこで突然急流が発生し、そのまま洞窟の奥へと押し流されてしまいます。迷宮のように入り組んだ洞窟から脱出するのは容易ではありません。そればかりか、そこはなんと、凶暴なサメの棲息地だったのです・・・。韓国題は「47미터 2」。日本公開は年内のようです。
8位「アンナ」は、アメリカのアクション&スリラー。フランスのリュック・ベッソン監督作品です。主人公アンナはパリのトップモデル。演じる女優サーシャ・ルスも、ロシアのトップモデルでもあります。ところが、アンナのモデルというのは実は偽装で、正体は凄腕の<殺し屋>。フォークやナイフを使って10人のマフィアを撃退し、ソ連軍の地下防空壕に侵入し、次のミッションの待つパリに乗り込んだという・・・。韓国題は「안나」。日本での劇場公開は未定、かな?
10位「ハチドリ」は、韓国のドラマ。キム・ボラ監督(女性)初の長編というこの作品は、昨年の第23回釜山国際映画祭で最優秀アジア映画賞・観客賞を受賞。今年の第36回エルサレム国際映画祭でも最優秀長編デビュー作品賞を受賞する等、これまで世界の映画祭で「25冠王」という偉業を遂げたとのことです。(→コチラ参照。) 各映画評、観た人のレビューにも目を通したところ、最近の公開作中で1番の注目作と言ってよさそうです。時代は1994年。主人公は14歳の女子中学生ウニ(パク・ジフ)。彼女は周囲から愛されるために、世界と自分だけの関係を構築していきます。タイトルの「ハチドリ」は、愛されるのは下手だが不断の努力をするウニを1秒に90回羽ばたきをするハチドリに喩えているようです。そんな彼女に進むべき道を示してくれた<航海士>が漢文学院のキム・ヨンジ先生(キム・セビョク)先生でした・・・。なぜ1994年かというと、(監督によれば)聖水大橋が崩落した年を背景に作ろうと考えた、とのこと。また、その事件がウニが結んでいた関係の崩壊につながり、また韓国社会でいくつもの崩壊が起こる時、彼女がどのように生を乗り越えていくのかを示すことが重要だったとも・・・。とくにドラマチックなストーリーが進行するという作品でもない?(詳しくは→コチラ)ようですが、多くの観客はウニの物語が当時の自分の話のように共感したとのこと。映画評論家ソン・ヒョジョンは「エドワード・ヤンの初期作品が思い浮かぶ」と評していますが、キム・ボラ監督自身も「ヤンヤン 夏の想い出」を参考にした」そうで、また「一個人が主人公ではなく、互いに影響を及ぼしあう形が似ていたらと思った」と語ったそうです。評論家や映画記者の評を見ると、「一番平凡な少女が書いた大叙事詩」(イ・ジヘ)、「個人の経験談が普遍の感性として拡張される魔法」(チョン・ジウ)、「時代のしわを広げてアイロンがけした回想の映画。その頃願ったことを今聞かせる、幻想の映画」(ソン・ギョンウォン)、「デビュー作で驚くべき世界観、加えてしっかりした女性の視線を見せてくれたキム・ボラ監督の出現は、それ自体で韓国映画の事件として、より良い未来に記録されるに値する」(イ・ファジョン)等々。これはゼッタイ観なくちゃ・・・。原題は「벌새」です。
【独立・芸術映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・・・上映館数
1(1)・・カレント・ウォー・・・・・・・・・・・・・・・8/22 ・・・・・・・・22,134 ・・・・・・・194,261・・・・・・・・1,694 ・・・・・・・・・193
2(11)・・ガール・イン・ザ・ミラー・・・・・・・・8/21 ・・・・・・・・・2,817 ・・・・・・・・・7,135 ・・・・・・・・・・19 ・・・・・・・・・・・3
3(2)・・シェルブールの雨傘 ・・・・・・・1992/9/26 ・・・・・・・・・1,805 ・・・・・・・・10,417 ・・・・・・・・・・76 ・・・・・・・・・・20
4(3)・・伊丹潤の海(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・8/15 ・・・・・・・・・1,508 ・・・・・・・・18,246 ・・・・・・・・・150 ・・・・・・・・・・21
5(5)・・解き放たれて/Unleashed ・・・・・・・3/27 ・・・・・・・・・1,364 ・・・・・・・・14,157 ・・・・・・・・・・74 ・・・・・・・・・・・4
2位「ガール・イン・ザ・ミラー」が今回の新登場です。アメリカのスリラーで、主演はオリヴィア・ハッセーの娘インディア・アイズリー(父はオリヴィアの3人目の夫デヴィッド・アイズリー。※布施明は2人目。)。マリアは誰もが羨むような美少女なのに、両親には「出来損ない」と言われ、学校でもいじめられて孤独な日々を過ごしていました。不安定な心からバスルームで自慰行為にふけっていると、突然彼女に話しかけてくる女性の声が・・・。「私たちはきれいよ」と優しく告げるその声はマリアの声。そして鏡の中でほほ笑みを浮かべているのもマリアの顔。「あなたの望みを叶えたいの」と鏡の中のマリアにそう言われた瞬間からマリアの中の何かが変わり始めます。それは凄惨な復讐劇の始まりでした・・・。韓国題は原題そのままの「룩 어웨이(ルック・アウェイ)」。日本では、7~8月に新宿シネマカリテで開催された<カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2019>(カリコレ2019)で上映されました。